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2025年は、国内外でサーキュラーエコノミーの取り組みがたくさん行われた年でした。特に4月から半年間行われた大阪・関西万博では、「サーキュラーエコノミー」がひとつの大きなテーマになっていました。一年を振り返り、編集部が選んだ「サーキュラーエコノミーのいま」を伝える記事7選をご紹介します。

大阪・関西万博が描く未来-日本館に集結するサーキュラーイノベーション

2025年の大注目イベント、大阪・関西万博。その中でも「日本館」が提示するサーキュラーエコノミーのビジョンは圧巻でした。「いのちを取り巻く、多彩な循環」をテーマに、日本の伝統的知恵と最新技術を融合させた展示を展開しています。建物には、終了後の再利用を前提に間伐材から造られたCLT(直交集成板)を使用。館内にはバイオガスプラントを併設し、万博会場の食品廃棄物をエネルギー化する「実働する循環」を公開しているのが大きな特徴です。

また、32種類の「藻」のハローキティやバイオプラスチック製の3Dプリント椅子、ドラえもんによる伝統文化の紹介など、人気キャラクターを通じて循環社会を分かりやすく表現。ユニフォームや什器もリサイクル可能な設計となっており、万博後まで見据えたホスト国ならではの独創的な取り組みを紹介しています。

石膏ボードの水平リサイクルに挑むGYXUS-地産地消で「埋め立てゼロ」へ

石膏ボードは壁や天井に広く使われる建材ですが、年間350万トンの廃棄が予測され、リサイクルが難しく大半が埋め立てられていることが大きな課題です。石膏ボードの水平リサイクルを目指す注目のスタートアップ、株式会社GYXUS(ジクサス)は、独自の技術「GYXUS CORETECH」により高コストな工程を省いた効率的なリサイクルを実現しました。

最大の特徴は、50km圏内で完結する「小規模プラントによる地産地消モデル」です。これにより輸送コストを抑え、既存製品と同等の価格競争力を維持しています。「石膏ボードを地球に埋めない社会」を目指し、各地の企業と連携してプラント建設を全国・世界へ広める取り組みを取材しました。

「食べ残し」を持ち帰る新習慣-フードロス削減の鍵を握る「mottECO」の輪

フードロス削減の取り組み「mottECO(モッテコ)」 外食時の食べ残しをお客様の自己責任で持ち帰るこの仕組みは、環境省や消費者庁、農林水産省も推奨するフードロス削減アクションです。株式会社デニーズジャパン(取材時セブン&アイフードシステムズより社名変更)から始まった活動は、産官学民アライアンス「mottECO普及コンソーシアム」として大手外食チェーンの競合他社や業界の垣根を超えて広がっています。

消費者の行動変容こそがサーキュラーエコノミーの最大のエンジン。衛生面などの課題をクリアし、誰もが気軽に「もったいない」を実践できる文化をどう育てるか。単なる持ち帰り推奨ではなく、食べ切りを前提とした意識改革を目指しており、外食での経験が家庭での無駄を減らすきっかけにつながることを目指しています。mottECO普及コンソーシアムの設立者で代表を務める中上冨之氏に、詳しくお聞きしました。

香港の食品リサイクル最前線-都市の制約を克服するスマートな資源循環モデル

香港のAEL社による最新の食品リサイクル現場を取材しました。視察した都市型リサイクル機器は、都市部の深刻な土地不足に対応するため、わずか駐車場1台分のスペースに収まるコンパクトなモデルを導入しています。廃棄物をスラリー(汚泥)状に加工処理して大型プラントへ運ぶことで、回収頻度の削減とコスト抑制を実現しています。

市民の分別意識やコスト面での課題はあるものの、分別文化に頼りすぎず、技術によって処理プロセスを効率化するアプローチが特徴です。エネルギー化や飼料化など、都市の制約を逆手に取った実用的な循環モデルは、今後の都市型リサイクルにおける重要な示唆を与えています。

廃車を「価値ある資源」に変える-リサイクル率99%を誇る鈴木商会の挑戦

続いて、北海道札幌市の「株式会社鈴木商会」による自動車リサイクル(ELV)の取り組みを紹介します。

日本の廃車リサイクル率は世界トップクラスですが、同社は自社一貫体制により、国内平均を上回る98〜99%という驚異的なリサイクル率を実現しています。フロンガス回収や液抜きといった前処理から、中古パーツの洗浄・美化、素材ごとの緻密な分別までを徹底し、廃車を「ゴミ」ではなく「価値ある資源」として循環させています。

さらに、シートベルトを用いたバッグ制作などのアップサイクルやSNSでの発信にも注力。EV普及などの市場変化を見据え、単なる解体業を超えた「資源循環型製造業」として、付加価値の高い廃車リサイクルを追求しています。

分別から「資源の交流」へ-巡るステーションが拓く地域コミュニティの未来

アミタ株式会社が展開する地域資源回収ステーション「MEGURU STATION®めぐるステーション」。福岡県豊前市の公民館に設置されたこの施設は、透明な回収ボックスを用いることで、捨てるものを「ごみ」ではなく「資源」として意識させる工夫がなされています。集まった資源の売却益は公民館の運営資金となり、地域の財政基盤を支える仕組みです。

単なる回収拠点に留まらず、子ども向けの駄菓子屋や不用品の譲り合いコーナーを併設し、多世代が交流するコミュニティ再生の場としても機能しています。人口減少や高齢化といった地域課題に対し、資源循環を入り口として住民同士のつながりや見守りを創出する、持続可能な地域づくりのモデルケースとなっています。アミタ社の髙田大輔氏と、導入先のひとつである豊前市横武公民館の林川英昭館長にお話を伺いました。

海の厄介者を日常の彩りへ-廃漁網から生まれる「Amu」のライフスタイル提案

漁業者が処理に苦慮していた廃漁網を独自素材「amuca®」へと再生し、ファッションコレクション「Buddy Collection」を展開する宮城県気仙沼市のスタートアップ「amu株式会社」の取材レポート。気仙沼の伝統文化である「出船おくり」や「室根下ろし」をモチーフにデザインしたテキスタイルを開発し、Tシャツやサコッシュ、サングラスなどのアイテムを展開しています。漁師の「海の相棒」だった漁具に新たなストーリーという付加価値を与え、次の使い手の「相棒」へと繋ぐことを目指しています。

「いらないものはない世界をつくる」というビジョンのもと、廃漁網をリサイクルしてプロダクトを作だけに留まらず、地域の誇りや漁業の持続可能性を創出する、価値転換の取り組みとして注目されています。クラウドファンディングでも目標額を超えて支援の輪が広がりました。

今後もCE.Tの記事にご期待ください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。