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ペットボトルの再生繊維を素材に、サステナブルなシューズを届ける関西発のブランド「Öffen(オッフェン)」。シンプルでかわいらしいデザインが人気を集めています。今年開催された大阪・関西万博では大阪ヘルスケアパビリオンのアテンダントユニフォームシューズとして選ばれ、脚光を浴びました。

そんなÖffen(オッフェン)が2021年のスタート以来追求してきたのは、新たに資源を使わない循環するものづくりです。ÖffenのPRを務める吉村みゆきさんにお話を伺いました。

一足から出るごみは約50g。Öffenのものづくりとは?

— Öffenはどんなブランドですか?

「Öffen」はドイツ語で「開放的な」「オープン」「解き放つ」という意味です。履いたときに足元を優しく軽やかにできるような、まるで素肌のように解放的なシューズを作りたいという想いがブランド名に込られています。

使用済みペットボトルから作られた再生ポリエステルの糸を用いて、製造から流通、販売に至るまでゼロ・ウェイストを基軸に、地球環境に負担をかけないことを追求した事業を行っています。

Öffen PR担当 吉村みゆきさん

— 製造工程について教えてください。

パーツを減らし、製造工程は無駄な工数を省いた設計をしています。そもそも靴は構成するパーツが複雑です。通常の靴ではおおよそ30パーツ使用されているのに対し、Öffenの靴はその半分程度に抑えたことで、廃棄物の大幅な減少を実現しました。

また、ゼロ・ウエイストに大きく近づけた要因の一つに、ニット成型が挙げられます。一般的に用いられる布を裁断する手法だと余白部分のゴミが多く出てしまう一方、このニット成型では端材の発生量をかなり抑えられるのです。

例えば、靴上部のアッパー部分は、使用済みペットボトルを再生したポリエステルの糸をニット生地に編み立てています。端だけをレザーカットすることで、端材をはじめ、余分な糸や布の発生を最小限に抑えることができたのです。

Öffenの靴のパーツ。最上列・左から二番目と三番目がアッパー部分(画像提供:Öffen

一足から発生する廃棄物は約50g、ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量は4.179kg CO2 eq.(2022年9月~2023年8月実績)と、一般的な革靴の半分以下に抑えることができました。こうしたゼロ・ウエイストの取り組みは約3年かけて、プロデューサーやデザイナーが製造現場に足を運び、靴の企画・設計の段階から徹底的に考え抜いた結果です。

靴の再流通の取り組みがスタート

— 再流通のための新たなプログラムがあるそうですね。

2024年11月にスタートした「Pre-Loved」のプログラムは、お客様がこれまで大切に履いてくださったÖffenの中古シューズ、いわゆる「Pre-Lovedシューズ」を回収し、洗浄・クリーニングを施したうえで、オンラインの「Öffen Pre-Loved Store」にて再び販売する取り組みです。

回収対象は、サイズが合わなかったり、新しい靴に買い替えるために手放された靴など、さまざまな理由で本来なら廃棄されてしまうものです。お客様が過去に愛用してくださったÖffenのシューズを「Pre-Lovedシューズ」として次の方に受け継いでいただくための、新しい取り組みとして運用を続けています。

この取り組みは、靴の回収・洗浄・再販システムを構築するKISH株式会社と共同で運営することで実現しました。

「Pre-Loved」プログラムでは、店頭または郵送で回収にご参加いただくと、次回のお買い物で使える2,000円分のチケットをお渡しします。

お預かりした靴は丁寧にクリーニング・検品を行い、状態に応じて販売。オンラインストアでは現状の写真に加え、新品時の写真や商品情報も掲載し、別サイズや価格帯も同じ画面で比較できる構成にすることで、安心して選んでいただける環境を整えています。

「Öffen Pre-Loved Store」(画像提供:Öffen

通常、Öffenの靴は1万6千円〜2万円ほどで販売されていますが、「Pre-Loved」プログラムでは価格を抑えて提供できるため、価格面で手が出せなかった方々や、環境意識の高いZ世代の若い方々にもアプローチしやすくなっています。

お客様がこれまで愛用してくださったÖffenのシューズを、次の方へしっかりと受け継いでいく。そんな想いを込めて取り組んでいます。

「何を売るか」より「どう作るか」

— 資源を循環させる仕組みが着実に広がっていると感じますが、取り組みで大切にしていることは何でしょうか。

私たちの根底にあるのは「何を売るか」ではなく「余分なものを減らしてどう作るか」です。その実践の一つに、商品を梱包する「Wrappy Towel(シューズ風呂敷)」があります。お買い上げいただいたシューズを渡すときには、段ボールの靴箱ではなく環境に配慮したタオルづくりにこだわるツバメタオルさんと共同開発した「Wrappy Towel」を採用してきました。

実際、段ボールの靴箱はいらないというお客様が多く、再利用できる「Wrappy Towel」であればお客様の暮らしの中で活用できますよね。正直、通常の靴箱を作るよりもコストはかかりますが、資源がリユースされることに価値があると考え、「Wrappy Towel」を採用しました。コストよりもサステナブルな観点を優先して取り組めることがÖffenの特徴だと思っています。

ー「Öffen Reborn project」にも力を入れていますね。どんな取り組みですか。

「Öffen Reborn project」は、ほかのアパレルブランドのサンプルやB品、製造工程の廃棄物として捨てられる端材を、リボン状にデザインし直して、Öffenの靴に付加価値として加えるという取り組みです。ブランド立ち上げ初期から意義ある取り組みと位置付けて継続してきました。

本来であれば廃棄されるはずだった素材に新たな命を吹き込み、特別な1足として、価値を高めて販売するという好循環が生まれていると感じます。ほかのアパレルブランドとコラボレーション組むことで、廃棄せず、新たな価値を生み出す取り組みを広げていきたいです。


— 大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで、アテンダントユニフォームシューズに選ばれました。採用に至った経緯を教えてください。

大阪ヘルスケアパビリオン アテンダントユニフォームシューズ(画像提供:Öffen)

大阪ヘルスケアパビリオンのテーマ「REBORN」の理念に共鳴し、環境に配慮した素材と優れた機能性 を兼ね備えたシューズとして、オッフェンの製品が採用されました。

パビリオンのテーマ「REBORN(リボーン)」と、Öffenが以前から取り組んできた「Öffen Reborn Project(オッフェン・リボーン・プロジェクト)」の名称が偶然にも一致していたこともあり、強い親和性を感じていただけたのではないかと思います。

また、Öffenが関西を拠点とするブランドであることも、採用の後押しになったと考えています。サステナブルな取り組みに対して評価をいただけたことを、大変うれしく思っています。

アテンダントシューズは、Öffenの定番デザインをベースに、大阪・関西万博のテーマカラーを取り入れて特別に制作されました。大阪・関西万博で実際に働くアテンダントの方々からは、「歩きやすい」「履きやすい」といったうれしいお声もいただいています。

足元から持続可能なファッションを目指して

— 最後に、Öffenの今後の展開を教えてください。

Öffen the House 代官山店。関西や福岡にも店舗を展開(画像提供:Öffen

立ち上げた当初は「エシカルな靴を買うこと」がお客様の購入動機の多くを占めていましたが、近年はエシカルな消費が当たり前の選択肢として受け入れられるようになってきたと感じています。

私たちの思いが伝わりやすくなり少し肩の荷がおりたフラットな状態ですが、今後はサステナブルなものづくりを通して、ウエルネスや生き方に踏み込んだライフスタイル全体の心地よさを提案していきたいと考えています。

私たちは、まだ旅の途中ですが、地球と未来のよきパートナーとして、私たちのプロダクト、リサイクルおよびアップサイクルを通しながら、持続可能性なビジネスを継続し、「1歩ずつ心地よいほうへ。」というミッションのもと、地球、人、動物にとってよりよい環境へと貢献していきたいです。

※トップ画像の写真提供:(公社)大阪パビリオン

※Pre-Loved Store公式サイトはこちら