
近年注目されている地球環境に配慮したサスティナブルなファッション。日本最大のファッション展示会であるFaW TOKYO(ファッションワールド 東京)内で「サステナブルファッションEXPO秋」が10月の1日から3日まで開催されました。話題のサスティナブルファッションの最前線をレポします。
2万着!大阪・関西万博で採用された土に還るユニフォーム

閉幕間近で話題の大阪・関西万博で二万着が採用されたユニフォームが出展していました!一見、一般のポリエステル素材でできたパーカー。なんと、約一年で土に還ります。
こちらは、「V&A Japan」による特殊な「特定堆肥中生分解ポリエステル Craftevo® ReTE」で、特定条件の堆肥に埋めると、約1年で、水と二酸化炭素、バイオマスに分解します。

使い終わった製品は回収し堆肥化する事で、ゴミを削減できます。焼却しない分、二酸化炭素の削減に繋がり、焼却時のCO₂排出量を従来のリサイクル・ポリエステルより32.8%削減することができるそうです。
「CRAFTEVO ReTE」は通常使用では一般のポリエステルと同様の耐久性を持っており、筆者も実際に触ってみましたが、違いは全く分かりませんでした。
残り2週間切ったの大阪・関西万博ですが、訪れる機会があれば、ボランティアの方のユニフォームも注目してみてくださいね。
>>>「Craftevo® ReTE」はこちらから
紙から服ができる?!生分解する環境に優しい天然繊維

会場で一際目を引く、マネキンが来ているドレス。実は、こちらのドレスは紙からできています。「国際紙パルプ商事株式会社」と「王子ファイバー株式会社」が、「東京モード学園」と協力し、紙で作った天然繊維「かみのいとOJO⁺」を使った産学連携の年間プロジェクトです。

「かみのいとOJO⁺」は、王子ファイバーが企画・製造する紙糸製品で、オーガニック認証を取得したマニラ麻を原料に使い、製品自体も高い生分解性を持つ天然繊維です。
特徴は、多孔質の構造から湿気を吸いやすく、乾きやすい性質に優れ、さらりとした肌触りが継続します。織り方や編み方、組み合わせる素材によって、さまざまな風合いを生み出すことが可能とのことです。

実際に商品の展示もありました。どれも自然な風合いで、日常で使いたくなるものばかりでした。
実際に触れてみましたが、紙というイメージとは異なり、柔らかく、サラサラとした肌触りで、消臭・抗菌機能もあるということで、お子さんの肌着にも安心して使えそうだと感じました。
廃漁網を100%使用してリサイクルされた糸の製造が可能に!

次に注目したのが、パーツの総合商社の「モリト株式会社」のサスティナブルプロジェクトである「Rideeco®」により、日本国内で回収された廃漁網を100%使用してリサイクルされた糸「MURON (ミューロン)」で作られたプロダクトです。
2016年度の環境省の調査では、日本に漂着するプラスチックごみの総重量の内、約40%が廃漁網・ロープによるものとのこと。この深刻な問題に取り組むため、モリトグループは廃漁網のリサイクルに力を入れています。
廃漁網のリサイクル課題を克服

廃漁網のリサイクルを継続するためには、大きく2つの課題があるとのこと。1つ目は、回収、2つ目は、回収した廃漁網に絡みつくゴミを除去する作業です。
モリトグループは再生素材を扱うリファインバースグループが構築した漁業従事者との密接なネットワークに参画。社員・協力企業・学生たちと共に廃漁網の不純物除去作業のボランティアに参加するなど、課題解決に向けて活動しているとのことです。
ケミカルリサイクルで安定した繊維に

「MURON」は、日本国内で回収された廃漁網を100%使用してリサイクルされた糸で、ケミカルリサイクルの工程を加えることで、高品質で安定した繊維の開発を実現。
廃漁網は通常色が付いており、そのままリサイクルすると糸に色が残ることが多いのですが、ケミカルリサイクルをすることで、これまでにない白色を表現することが可能となりました。

また、モリトグループは、「Rideeco®」プロジェクトを通じ、持続可能な資源循環社会への実現に貢献する取り組みをおこなっています。海岸清掃活動の定期実施、スポーツ団体と連携したSDGs教育プログラムの展開など、積極的な活動を進めているとのことです。
>>>「モリトグループ」についてはこちらから
>>>「Rideeco®」の活動に関してはこちらから
環境に優しいYKKのファスナー

ファスナー国内シェア90%を占める、YKKは循環型社会に向けた商品開発を積極的に行なっており、様々な種類の地球環境に配慮したファスターの展示がありました。

特に、1994年にリサイクル素材を使用した「NATULON® ファスナー」は、一般的なプラスチック素材のファスナーに比べてCO2排出量が少なく、環境への影響を抑えながらYKKが誇る品質と性能を提供。商品のラインアップを拡大しているそうで、以下のような様々なリサイクル商品が展開されています。
- NATULON® :テープに使用されている糸は100%ペットボトルなどから再生したリサイクル材。
- NATULON Plus®ファスナー:再生材をテープとエレメントに使用し、最も高い比率で再生材を使用。
- NATULON® Ocean Sourced®ファスナー:海洋流出のリスクがあるオーシャンバウンドプラスチックをテープ部分に100%使用したファスナー。
- NATULON® Fiber Sourced® :テープ部分が繊維廃棄物や廃棄衣料を原料としたリサイクルポリエステル製。ケミカルリサイクルされた材料を使用し、新たな石油由来材料の利用を減らし、繊維業界の循環型社会にも貢献する製品。
全部取り替えなくても、直せるファスナーが登場!

また、サスティナブル素材の他に、特に興味深かったのが、ビスロン(VISLON)シリーズ用のリペアエレメント。お気に入りの洋服や鞄などのファスナーだけが壊れてしまって、ファスナーを交換するのが面倒で、ファスナー以外はまだ使えるのに、捨ててしまったという経験がある方も多いと思います。

ビストロンシリーズでは、ファスナーのエレメントが取れてしまった際、専用の工具で、破損した部分だけの修正が可能に。これまでは、製品からほどいて新しいファスナーに交換し、縫製する必要がありましたが、部分的な修理だけで済むので、時間の短縮や廃棄部品の削減を見込めるとのことです。
会場には、実際にリペアメントも体験できるブースもありました。ビストロンシリーズのファスナーであれば、リペアショップや小売店で、破損したエレメントを簡単に交換することができるとのことで、お気に入りの製品を長く使えるようになるのは、消費者としても嬉しい試みだと感じました。
>>>YKKのサスティナブルなファスナーについてはこちらから
身近なファッションから社会を変える!

環境に配慮したサスティナブルなファッションが注目される中、今回の展示では、様々な生地や素材が世界中から集結し、業界の最新トレンドや技術を体験することができました。
今回、記事内で紹介した紙から作られた布の以外にもバナナやパイナップル、インドネシアのカポックの実、さらには、サボテンやマッシュルーム、海藻など、興味深い素材がたくさんありました。
また、リサイクル製品もペットボトルだけではなく、廃漁網、海洋プラごみ、廃棄衣料など様々な素材があることを知ることができました。また、ファストファッションが主流の中、YKKのような直して長く使っていくという試みも広まっていけばよいと感じました。
サスティナブルというと、少々ハードルが高く、何からはじめて良いか分からない方も多いと思います。でも、ファッションという身近なアイテムから始めることで、地球環境に優しい製品を日常に取り入れるきっかけとなり、社会全体の意識を変えていくことができるのではないかと感じた展示会でした。
>>>「サステナブルファッションEXPO秋」についてはこちらから
取材 Rina Ota