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 三菱地所グループでは、丸の内エリアで「廃棄物再利用率100%」という挑戦的な目標を掲げています。その達成に向けて、地域内の資源循環を促進する「サーキュラーシティ丸の内」やオフィスでの廃棄物削減などの施策を次々に展開しています。同社丸の内運営事業部・管理企画ユニットの依田絃希氏に、具体的な内容についてお話をうかがいました。前編は、「サーキュラーシティ丸の内」の取り組みについてご紹介します。

※前後編の前編 

「挑戦的な目標」を掲げた理由

―三菱地所グループでは、廃棄物対策に積極的に取り組み、チャレンジングな目標を掲げていますね。

2030年までに廃棄物再利用率90%、排出量20%削減(2019年度比)という目標を設定しています。また、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)では、廃棄物再利用率100%と、さらに高い目標を掲げています。

私たち自身も非常に挑戦的な数値だと認識していますが、社会的にもSDGsの浸透や環境意識が高まるなか、資源循環の取り組みは不可欠であるとも考えています。そして、せっかく取り組むのなら中途半端なものではなく、思い切った、意義のある目標にしたいという思いがありました。

ですから、削減可能な数値を積み上げたものではない「バックキャスティング目標」を設定したのです。

―丸の内エリアの「廃棄物再利用率100%」という数値は刺激的です。目標年の2030年までおおよそ半分ほど経過しましたが、現在の達成状況はどうですか。

2024年度の数値では、廃棄物の排出量は2019年度比30%減で、既に目標を達成することができました。これ自体は非常に喜ばしいことですが、新型コロナによるテナント企業の出社率の変化などが大きかったのではないかと考えています。現段階の目標達成に油断することなく、今後も実行可能な対策を粛々と継続していくことが重要だという認識です。

目標の達成状況

一方で、丸の内エリアの2024年度の再利用率は67.2%でした。2019年度の64.4%から2.8%上昇しているものの、目標達成にはまだ乖離がある状況です。

今後再利用率の向上を図るために、まずは可燃ごみに混じりやすいプラスチックや紙類などの分別の徹底を図ることが大切だと考えています。廃棄物の排出量の内訳を見ると、可燃ごみが全体の約30%を占めていますので、可燃ごみの総量を減らすことが最優先です。

現在、可燃ごみがすべてリサイクルされたと仮定した場合、再利用率は約97%に達します。一方で、可燃ごみについては、現時点では確立されたリサイクル手法が少なく、仮に手法が存在する場合でも、コスト面での課題が大きいのが実情です。

そのため、可燃ごみ以外の分別・リサイクルについては引き続き推進しつつ、可燃ごみについては「本来、可燃ごみにしか投入できないもの」に限定する運用面での対策(ソフト対策)にも注力していきたいと考えています。

街全体で資源循環 「サーキュラーシティ丸の内」とは

―丸の内エリアでの目標達成の具体的な施策として、「サーキュラーシティ丸の内」を展開されています。具体的にはどのような取り組みをしているのですか?

2020年からスタートした「サーキュラーシティ丸の内」では、丸の内エリアで排出された廃棄物が循環し、再度資源として戻ってくることをイメージして、具体的な取り組みを推進しています。

「サーキュラーシティ丸の内」取り組みイメージ

 

現在第6弾まで取り組みが進んでいます。各プロジェクトの概要を以下に整理しました。

  • (1)MARUNOUCHI TO GO プロジェクト

食べきれなかった料理の持ち帰りを希望される方に、持ち帰り容器(TO GO BOX)と紙 袋を無償配布。66店舗が参加中(2024年3月現在)で、紙袋は丸の内エリアのオフィス内で使用したダンボールをアップサイクルし、紙容器はサトウキビ由来の材料を使用している。       

実際に使用している紙袋と紙容器
  • (2)ペットボトルのB to Bリサイクル

エリア内のオフィスビル( 24 棟)で排出された使用済みペットボトルをリサイクルし、新たなペットボトルに再利用している。

他社と協業して「Bottle to Bottle リサイクルサーキュレーション」を構築
  • (3)食用廃油リサイクル(SAF)

エリア内の飲食店舗が廃棄する食用廃油を、SAF(Sustainable Aviation Fuel/持続可能な航空燃料)等の製造に活用する。2023年からはバイオディーゼル燃料への再利用も開始し、廃食用油の収集用トラックの燃料として使用している。

SAFが循環する街のイメージ図
  • (4)液肥を活用したクラフトビール製造

常盤橋タワーから排出された生ごみをコンポストに投入し、液肥を製造。その液肥で栽培したお米でクラフトビールを醸造する。

生ゴミ循環のイメージ図
  • 5)食品廃棄物・コルクをオーナメントにアップサイクル

廃棄予定のコルク栓からコースター、コーヒー粕・米糠からオリジナルオーナメントを作成。丸の内二丁目ビルで販売。オーナメントは敷地内通路に飾ることができる。売り上げは丸の内エリアの保育園に寄付した。
※期間限定で実施(2024年12月9日〜25日)

アップサイクルされたオーナメントが街を循環するイメージ図

(6)食品廃棄物からクラフトジンを製造

東京駅日本橋口前「TOKYO TORCH街区」で生じた食品廃棄物を、みみずを用いたコンポストで堆肥・液肥化し、果物を栽培。その果物と街区内のカフェのコーヒー抽出後の「コーヒー粉」を活用して、クラフトジンを製造する。

街区に設置されたコンポスト

他社との協業で実効性と認知向上の両面からアプローチ

―精力的にプロジェクトを展開されていますね。丸の内エリア全体の取り組みですから、廃棄物の分別・収集などには他社の協力が必須となります。反応はどうですか。

基本的にみなさん前向きに協力してくださっています。最近では、意識の変化や高まりを感じることも増えていますね。(2)の「ペットボトル B to Bリサイクル」は、テナントの方から参加したいとリクエストをいただくことも増えました。

(3)の「食用廃油リサイクル(SAF)」についても、新しいビルのテナントの方々には当社から必ずお声がけして参加店舗の拡大に努めていますが、自ら参画したいと立候補されるケースも多いです。

また、プロジェクトを組み立てる際には、他社との協業も意識しています。ペットボトルリサイクルは飲料会社、SAFは燃料製造会社、クラフトビール、ジンは酒類製造会社など、多くの企業や団体とともに取り組んでいます。これにより、当社だけではできない資源循環の仕組みを構築することができます。

プロジェクトに関わる各主体が広報やPRを行うことで、社会的な認知向上にもつながります。実際に、各プロジェクトの知名度も以前より高まっていて、それがテナントやビル所有者の廃棄物対策への積極的な取り組みを後押ししていると感じます。

今後も現在のプロジェクトを継続しつつ、新規の取り組みを増やすことで、資源循環への関心や参加率アップに貢献したいです。

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後編では、主に本社ビルで実践しているオフィスでの廃棄物対策についてうかがいます。