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自動車産業の枠を超え、東京ビックサイトをほぼ貸し切りで10月30日から11月9日まで開催中の「モビショー」。新世代のEV車(電気自動車)やAI機能による自動運転化、水素やメタンガスなどの次世代エネルギーなどサステナブルな社会を実現する技術が注目です。日本初公開の新型の水素自動車や自動型EVバス、牛の糞で世界を救う?!スズキのメタンガス事業など、CN社会を目指す驚きの技術が満載です。

世界初公開!ヒョンデの水素電気自動車の新型「The all-new NEXO」

ヒョンデの水素電気自動車(FCEV)の「The all-new NEXO」。

今回、「モビショー」で出展された次世代車で最も注目なのが韓国の「ヒョンデ」の水素電気自動車(FCEV)専用モデル「NEXO(ネッソ)」が発表した新型「The all-new NEXO」でしょう。

日本市場に初めて公開し、2026年上半期に販売を開始する予定であることを正式に発表。水素社会の実現に向けた技術的リーダーシップを示すとともに、持続可能なモビリティの未来に向けたビジョンを日本の顧客に届けるとアピールしました。

ゼロエミッション&走る空気清浄機

「NEXO」は、水素と大気中の酸素で電気を生成し、モーターで走行することによる汚染物質を排出しないZEV( ゼロエミッション)です。1回約5分の充填で、820kmの航続距離を実現しています。

さらに、一台あたり約34kgもの環境にやさしいバイオ素材を使用。また、製造工程でネッソ1台あたりの二酸化炭素の排出量を12kg削減に成功しています。

しかも、3段階の空気浄化システムを搭載しており、微小粒子状物質(PM2.5)を取り除くができるとのことです。

水素開発に長い歴史を持つ「ヒョンデ」

1998年から27年間に渡り、水素技術開発に取り組んできたヒョンデは、2013年には世界初となる水素電気自動車の量産化を実現、2018年には専用モデルとして「NEXO」を発表。「NEXO」は、2024年までに全世界で約4万台が販売され、世界で最も売れている量産型の水素自動車の一つといえるでしょう。

また、自動車だけではなく、水素の製造から輸送、貯蔵まで含む、水素燃料電池システムブランド「HTWO(エイチツー)」も事業展開。

今回の発表が日本での水素社会の実現に向けた次なる一歩になるよう期待したいです。

スズキはまさかの「うんこ先生」とコラボ?!

廃棄物から生まれたエネルギーで走ることができるバイクの「ACCESS」と「うんこ先生」のぬいぐるみ。

会場に入った途端に、子ども達が大喜びだったスズキのブース。なんと、子ども達が大好きな「うんこ先生」が鎮座しているではありませんか!

スズキは、カーボンニュートラルへの理解を深めるため、「うんこドリル」の公式キャラクター「うんこ先生」とコラボレーションを実施。インドでの牛の糞を利用したカーボンニュートラル(CN)燃料事業を紹介など、楽しみながら学べ、環境意識を高めるブースとなっています。

牛の糞で車を動かす?!カーボンニュートラル燃料

スズキがインドの酪農組合と共同で立ち上げたバイオガスプラントのミニチュア模型。

牛の糞尿にはCO2の28倍の温室効果を持つメタンが含まれ、大気中に放出されています。インドには牛が3億頭もいて、牛10頭の1日分の糞でクルマ1台分の燃料が製造できるそう。

そこで、スズキは、糞尿を回収することで、メタンの大気放出を抑制し、牛の糞尿に含まれるメタンから自動車用燃料を精製する事業をインドで展開。バイオガス発生後の残渣は有機肥料として利用でき、インド政府の有機肥料促進政策に貢献しているとのことです。

廃棄物から生まれたエネルギーで走ることができるSUVの「ビクトリス」。

この取り組みをインド全土に展開することで、メタンの大気放出抑制やCN燃料の普及だけでなく、農村地域の活性化や新たな雇用の創出、廃棄物の資源化、エネルギー自給率の向上など、循環型社会の形成も可能になります。

展示されている実車も、日本では中々見ることができない、今年の9月にインドで発売された海外仕様のSUVの「ビクトリス」。CNG(圧縮天然ガス)およびCBG(圧縮バイオメタンガス)対応で廃棄物から生まれたエネルギーで走ることができます。

牛の糞が世界を救うかもしれない、突拍子もないアイディアを実現しつつあるスズキの情熱に感銘を受けた展示でした。

「いすゞ」が未来の「運ぶ」を実現する「VCCC」を世界初公開!

乗用車に注目が集まりがちなモーターショーですが、いすゞグループのトラックのブースがともかくユニークで面白い!ただ、実車を並べるだけではなく、「運ぶ」で描く、自由で多彩な未来を表現しています。

特にコンセプトカー「VCCC・バーチカル・コア・サイクル・コンセプト」がとても興味深い展示でした。スタイリッシュなデザインの縦型の車両フレームにより、はさむ形で輸送というの発想が斬新です。

「VCCC」では、サイズやシーンに捉われず、荷物の積み替えが不要になります。配送の難しい地域へ荷物を届けることが可能になる新しい持続可能な流通の形に、配送業会への期待が高まります。

ゴミ収集車が電気自動車に!

エルフEV塵芥車。

CN社会の実現のため、「いすゞ」が初めて開発した量産BEVトラックの「エルフEV塵芥車」も展示されていました。従来のディーゼル車と同様のスペックでありながら、EVならではの静粛性とCO2排出量削減によりクリーンな街づくりに貢献できるとのこと。

街でよく見かけるゴミ収集車が電気自動車になっていくと、街の雰囲気も変わり、CN社会への意識も高まってくるのではないかと感じました。

大阪・関西万博でも活躍したバスが自動運転車に進化

「エルガEV 自動運転バス」。災害時に活躍が期待できるV2L機能を備え、非常時の電源としても活用可能。

大阪・関西万博でも使用されたEV路線バス「エルガEV」をベースに開発された「エルガEV 自動運転バス」も世界初公開されました。

カメラ、LiDAR、ミリ波レーダーなど複数のセンサーによる周囲認識と車両統合制御技術により、安全かつ安定した自動走行が可能になりました。また、車内もバッテリーを屋根上と車体後部の床下に配置し、完全なバリアフリーフロアを実現。

公共交通における運転手不足の解消ととともに、CN化の実現に貢献する役割を果たす、大きな進歩だと感じました。

未来バス」で没入型映像体験ができる!

その他、「未来バス」では、「うごく美術館」「うごくオフィス」「うごく旅館」の3つのシーンの未来を没入感のあるバス車内で体験することができます。また、「運ぶ」をテーマにしたオリジナルステッカー作りなど、大人から子どもまで、幅広い世代で、物流を通してCN社会を実現させる方法を学べるブースでした。

世界初公開の水素トラック!乗車体験も!

世界初公開の「三菱ふそう」の水素駆動の大型トラック。

「三菱ふそう」のブースでは、水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」と液体水素搭載燃料電池大型トラック「H2FC」が世界初公開。

水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」

水素を燃焼させるエンジン(内燃機関)で駆動し、ディーゼルトラックと共通のコンポーネントや技術を活用することでスムーズな移行を実現。 圧縮水素ガスを燃料として使用し、建設用車両など高出力が必要な用途に最適とのことです。 

液体水素搭載燃料電池大型トラック「H2FC」

燃料電池システムで水素を電力に変換し、電気モーターで走行。 液体水素を搭載することで航続距離の拡大と短時間充填を実現。サブクール液体水素(sLH2)充填技術を採用することで、ボイルオフガスを再液化し排出不要な充填を実現。水素ステーション設備の簡素化とインフラコスト削減に貢献します。

持続可能な物流について学べるスタンプラリーやお絵描きエリアも!

お絵描きエリアで描いたトラックが巨大LEDスクリーンを走ります。

大人も子どもも幅広世代で楽しめるアクティビティブースも充実しています。スタンプラリーでは、物流の効率化やEVトラックへのスムーズな移行方法など、持続可能な物流のソリューションを楽しみながら学ぶことができます。

お絵描きエリアでは、絵はスキャンされ、ブースに設置された巨大LEDスクリーンを走ります。その他、リサイクル素材を活用したキーホルダー作りなども開催予定です。

循環型社会を作る未来のエンジニアが誕生するかも?!職業体験テーマパークキッザニア

「次世代モビリティのデザイナーの仕事」の体験(予約制)。

大人気職業体験テーマパークの出張版の「Out of KidZania in Japan Mobility Show 2025」が「モビショー」で開催中です。「モビショー」の入場チケットのみで体験は無料です。

循環型社会に貢献できる最先端の技術を学べる「次世代モビリティのデザイナーの仕事」を体験しました。プログラムでは、「次世代モビリティのデザイナー」として、使う方の困りごとを想像し、段差を歩いて移動できる次世代四脚モビリティ「MOQBA(モクバ)2」をベースにタブレットを使用してデザインを考えます。

「MOQBA2」は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミド(PA)などのエンジニアリングプラスチックを含む、様々なサステナブルかつ高性能な素材ソリューションを使用しています。

見るだけではなく、どう活用できるか考えることで、未来のモビリティや循環型社会、バリアフリー社会の実現に関して、関心を高めることができるアクティビティだと感じました。

その他、車関連の10種類の予約制のプログラムと未就学児向けの予約不要のプログラムがありますので専用サイトをチェックしてみてくださいね。

>>>「Out of KidZania in Japan Mobility Show 2025」についてはこちらから

循環型社会の実現の技術が学べる「モビショー」

CN化の実現に向けた電動化に取り組む「アイシン」の「A’s GARAGE」の展示。

今回の「モビショー」では、CN社会の実現のため、電気だけではなく、水素やメタンガスなど次世代車の開発に力を入れる企業の取り組みを学ぶことができました。

また、子どもや若い世代が楽しめる企画やイベントも多く、幅広い年代で楽しめる工夫も感じられました。エネルギー転換の過渡期で、今しか見られない展示がたくさんあります。特に、これからの世代を担う若い世代にはぜひ、来て欲しいイベントです。11月9日まで開催しているので、ぜひ、足を運んでみてくださいね。

>>>「モビショー」についてはこちらから

取材・Rina Ota