サーキュラーエコノミーとは

中長期的な視点で持続可能な社会を実現していくための考え方「サステナビリティ」は、2015年に国連で採択された「SDGs」と合わせて世間一般に浸透しています。近年では2030年を期限とするSDGsの世界目標達成に向け、世界中でサステナビリティやSDGsのための取り組みが加速しています。

その中で重要なキーワードとなるのが「サーキュラーエコノミー」です。従来の「廃棄」を前提とした経済システムを脱却し、持続可能な社会の実現につなげていくためのこの新たな経済システムは、今世界中で注目を集めています。サーキュラーエコノミーの実現に向けた国・政府の動きに合わせ、あらゆる業態の企業においてもこれまで以上の対応が求められています。

このページではそんな「サーキュラーエコノミー」の概要や意義、企業が取り組む際のポイントなどについて解説していきます。

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーの概略

「サーキュラーエコノミー」は「循環型経済」と訳される、持続可能な社会に向けた新たな経済システムです。まずは「サーキュラーエコノミー」という言葉の概略と、この概念が生まれた背景を説明していきます。

01 「サーキュラーエコノミー」の意味

サーキュラーエコノミー(Circular Economy:循環型経済)とは、製品や素材、資源を効率的・循環的に利用しつつ付加価値の最大化を目指す経済システムを意味します。持続可能な社会への関心が高まる今、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした従来の経済システムに代わる新たなシステムとして注目を集めています。

02 サーキュラーエコノミーの起源

サーキュラーエコノミーの重要性が認識されるようになった背景は、18世紀半ばの産業革命までさかのぼります。産業革命がもたらした大量生産・大量消費を前提とした経済モデルは、戦後の経済発展の中でさらに加速化していきました。

それに伴い引き起こされた環境汚染や資源の枯渇、気候変動や生物多様性の損失は、現在まで続く地球規模での喫緊の社会問題となっています。そのような状況下で、20世紀後半あたりから環境に配慮した生産や消費活動が徐々に広まっていきました。

そして2015年12月にEUが公表した政策パッケージの中で「サーキュラーエコノミー」が提唱されたことで、その概念は世界的に広まることになります。それ以降EU加盟国を中心にヨーロッパでの取り組みが加速しており、リサイクル先進国である日本でもさまざまな取り組みが進められています。

「SDGs」とは

サーキュラーエコノミーがもたらす意義

ではなぜ今、サーキュラーエコノミーは世界的に注目を集めているのでしょうか。従来の経済システムとの違いから、その意義に迫っていきます。

01 「リニアエコノミー」から「サーキュラーエコノミー」へ

従来の経済システムは、「原材料→生産→消費→廃棄」と直線的に進んでいくことから「リニアエコノミー(直線型経済)」と呼ばれています。製品やサービスの利用後に廃棄物が発生してしまうリニアエコノミーは、資源の有限性や処理能力の限界などの点から、持続可能なモデルとはいえません。

一方でサーキュラーエコノミーは「原材料→生産→消費→リサイクル原料」という循環型の経済システムです。サーキュラーエコノミーの最大の特徴は、「廃棄物」の概念自体が存在しないこと。サーキュラーエコノミーにおいては、製品やサービスの設計段階や原料調達段階から「循環」が前提とされています。

「リニアエコノミー」から「サーキュラーエコノミー」へ

02 「3R」と「サーキュラーエコノミー」の違い

廃棄物の削減に関する活動としては「3R」があります。日本でも2000年に循環型社会形成推進基本法の制定に伴い3Rの考え方が導入されました。
3Rはリデュース(Reduce:ごみを減らす)、リユース(Reuse:ごみにせず繰り返し使用する)、リサイクル(Recycle:ごみを資源として再利用する)の3つの頭文字Rを取った造語。製品の一部をリサイクルすることで廃棄物を減らすための取り組みです。

しかし「3R」は、廃棄を前提としている点で「サーキュラーエコノミー」とは大きく異なります。3Rは廃棄物が出ることを前提に、それをどう抑制していくかの取り組みです。リサイクルすることで廃棄されるまでの期間は長くなりますが、最終的には廃棄物になるという点で、「リニアエコノミー」の枠組みに基づく活動であると言えるでしょう。

それに対してサーキュラーエコノミーは、従来廃棄されていたものも含めて、すべての製品を循環させていくシステムです。廃棄物の抑制ではなく、廃棄物自体が発生しないことを前提とした製品やサービスの開発を行っている点で、3Rとは明確に異なるものとなっています。

リニア・リユース・サーキュラーの概念の違い

03 サーキュラーエコノミーの意義

国連によると、世界の人口は増え続け2050年には98億人に到達すると言われています。人口増加に伴い当然必要な資源も増大していきますが、大量生産・大量消費のリニアエコノミーでは人類全体の生活を支え続けることはできません。

また、リニアエコノミーに基づく経済活動は、地球環境にさまざまな負荷を与えています。その中でも近年顕在化している気候変動は、持続可能な社会の実現に向けて優先的に取り組むべき社会課題となっています。

サーキュラーエコノミーは、資源の不足や環境問題など、これらの状況を解決していくために必要な仕組みとして注目を集めているのです。

サーキュラーエコノミーの意義

サーキュラーエコノミーの3原則と概念図

ここからは、国際的なサーキュラーエコノミー推進機関であるエレン・マッカーサー財団の提示する内容に基づき、サーキュラーエコノミーの具体的な考え方、概念について説明します。

「サステナビリティ」とは?

01 サーキュラーエコノミー3原則

エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3大原則として以下を掲げています。

サーキュラー・エコノミー3原則
1:Eliminate waste and pollution(廃棄物・汚染をなくす)
2:Circulate products and materials (at their highest value)[製品・素材を(高い価値の状態のまま)使い続ける]
3:Regenerate nature(自然を再生させる)
※エレン・マッカーサー財団HP(What is a circular economy?|The Ellen MacArthur Foundation)
「サステナビリティ」とは?
1:Eliminate waste and pollution(廃棄物・汚染をなくす)
サーキュラーエコノミーは「廃棄物が出てから、その対処をどうするか考える」という従来のシステムを抜本的に見直し、製品の設計段階から廃棄物や汚染を出さないものであることを表しています。
2:Circulate products and materials (at their highest value)[製品・素材を(高い価値の状態のまま)使い続ける]
修理・メンテナンスしやすい製品とすることで長期間使い続けられるようにし、新たな資源の消費を抑えるという考え方です。ここでポイントなのは、製品だけでなく素材も含まれていること。サーキュラーエコノミーにおいては、製品の長期間の利用を前提としつつ、製品が使えなくなってしまった後も素材として再利用できるような設計が求められています。
3:Regenerate nature(自然を再生させる)
本来自然というのは再生力を有しているため、時間の経過とともに再生していきます。しかしリニアエコノミーにおいては再生が間に合わず、資源が減少してしまうことにつながります。

サーキュラーエコノミーに基づき資源を循環させることで、自然の再生能力をサポートし、環境を保持・改善していく、という考えを示しています。

02 バタフライ・ダイアグラム

エレン・マッカーサー財団は、上記3大原則に基づくサーキュラーエコノミーの概念図として「バタフライ・ダイアグラム」を公表しています。
この概念図における重要なポイントは、「生物資源」と「技術資源」に分けられているということ。この2つの資源が左右で循環のサイクルを描いていることから「バタフライ・ダイアグラム」と呼ばれています。

循環サイクルから漏れないように汚染や廃棄を最小限に

「技術資源」は自然界に戻すと負の影響が出ることから、それぞれの資源は別々のサイクルで扱われるべきだというのがサーキュラーエコノミーの考えです。「生物資源」と「技術資源」は、それぞれの循環サイクルで処理できるよう製品の設計段階から配慮が必要です。

またそれぞれのサイクルは内側にいく程優先度が高いとされており、生物資源はカスケード利用(※)、技術資源は維持・長寿命化が推奨されています。

一方で「リサイクル」は一番外側の円となっていることからも、サーキュラーエコノミーにとって最終手段であることがわかります。リサイクルの前段階で、以下に価値を保持し活用できるかを踏まえた製品設計をすることがポイントです。※カスケード利用:製品使用後に、製品や原材料を別の用途で使うこと

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むメリット

従来の経済システムから脱却し、サーキュラーエコノミーに移行していくためには、経済活動を担う企業の取り組みが不可欠です。また、企業にとってもサーキュラーエコノミーの取り組みを導入することは大きなメリットをもたらします。

コストの削減

01 コストの削減

サーキュラーエコノミーは原料の廃棄を前提としない経済システムです。それは環境負荷の軽減だけでなく、原料にかかるコストを抑えるという企業の経済的メリットにもつながります。

また資源にかかるコストだけでなく、サプライチェーンの最適化や製造工程の見直しによる全体的なコストダウンも期待されます。

新たなビジネスチャンスの創出

02 新たなビジネスチャンスの創出

リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの転換は、企業にとっては新たなビジネスチャンスでもあります。例えば売り切り型のビジネスモデルから、シェアやレンタルなどのビジネスに拡張していくことも考えられます。

自社のみでの対応が難しい場合でも、リサイクルのノウハウがある企業などと協働することで、新たなサービスの創出や市場開拓にもつながるかもしれません。

企業価値の向上

03 企業価値の向上

サステナビリティやSDGsの取り組みは世界的な注目を集めており、多くの企業が積極的に取り組んでいます。サーキュラーエコノミーはSDGsの世界目標「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「12.つくる責任、つかう責任」「15.陸の豊かさも守ろう」と関連性があり、SDGsの実現に寄与するものです。

サーキュラーエコノミーに取り組むことは、社会的に意義の高い取り組みを進めているという対外的なアピールとなります。消費者やステークホルダーからの企業価値を高めることにつながっていくでしょう。

企業がサーキュラーエコノミーに取り組む際のポイント

ここからは、実際に企業がサーキュラーエコノミーに取り組み際のポイントを説明します。

「循環視点」で製品開発・オペレーションの見直しを行う

01 「循環視点」で製品開発・オペレーションの見直しを行う

サーキュラーエコノミーは、廃棄を前提としていないことが特徴です。企業活動においても、製品の企画・開発から原料調達、製造工程、製品使用後の再利用方法など、あらゆる段階で「循環」視点を持つ必要があります。

新たな製品・サービスを企画・開発する際には当然サーキュラーエコノミーの概念を念頭に置いた設計が必要です。また既存のビジネスの中にも循環視点で見て改善できる点を探す必要があります。

売り切り型のビジネスモデルの場合は、消費者からどう製品を回収して原料に戻すのかという点も含めて検討する必要があります。

他社とのパートナーシップでサーキュラーエコノミーに取り組む

02 他社とのパートナーシップでサーキュラーエコノミーに取り組む

サーキュラーエコノミーは地球全体を含む経済システムであり、企業単独で完結させることはできません。原料供給、流通、消費、回収・リサイクルなどあらゆるフェーズにおけるステークホルダーとの密接な協業が必要です。

パートナーシップの考えは、サーキュラーエコノミーを前進させる上でも大切です。自社のサーキュラーエコノミーの取り組みを社内外に向けて発信することで、新たな企業との協業可能性も生まれます。さまざまな企業、機関の協力を得ることで、自社のビジネスチャンスも広げながら、サーキュラーエコノミーの取り組みを波及させていくことが重要です。

サーキュラーエコノミーに取り組む企業の事例

LOOP

01 LOOP

LOOPプロジェクトはアメリカのテラサイクル社が立ち上げたソーシャルスタートアップ。「捨てるという概念を捨てよう」をミッションに掲げ、循環型ショッピングプラットフォームを構築しています。世界中から多くの企業が参画しており、日本でも味の素・大塚製薬・サントリーなど複数の大手企業が参画しています。

LOOPは従来使い捨てされていた消費財、パッケージを耐久性の高いものに変え、使用後に改修し、再利用する循環サイクルを導入しました。それによりプラスチックごみを大幅に削減することに貢献しています。

株式会社ブリヂストン

02 株式会社ブリヂストン

大手タイヤメーカーである株式会社ブリヂストンでは、サーキュラーエコノミーへの貢献として、「2030年までに使用する原材料に占める再生資源・再生可能資源比率を40%に向上」「2050年に100%サステナブルマテリアル化」という具体的な数値目標を掲げています。

使用してすり減った表面(トレッド)部分を張り替えた「リトレッドタイヤ」は、新品タイヤと比較して原材料の使用料が3分の1未満と、廃棄物削減に貢献しています。また「スタッドレスタイヤのレンタル」や「タイヤメンテナンス」など、さまざまな視点から取り組みを進めているのが特徴です。

NIKE

03 NIKE

世界的なアパレル・スポーツメーカーのNIKEは、「Move to Zero」というサーキュラーエコノミーの活動を展開しています。「Move to Zero」はNIKEの製品を生産する過程で排出される二酸化炭素と廃棄物をゼロにすることを目的とした取り組み。NIKEは具体的な5つの目標をあげて取り組んでいます。

・2050年までに所有・運営する施設の100%再生エネルギーでの稼働を目指す
・すべてのフットウェア生産過程から生まれた廃棄物の99%を再利用
・1年に10億本以上のプラスチックボトルを廃棄する代わりに再利用し、新しいジャージやフライニットシューズのアッパーのための糸を作る
・Reuse-A-Shoeとナイキグラインドの各プログラムは、廃棄物を新しいプロダクト、遊び場の路面や陸上のトラックやコートに変える

最後に

サーキュラーエコノミーは世界的に注目を集め、その実現に向けた企業の取り組みも活発化しています。企業がサーキュラーエコノミーに取り組むことは、自社の持続可能性(サステナビリティ)を高める上でも重要です。

一方で新しい経済システムへの転換は一朝一夕に果たせるものではありません。まず何から手をつけてよいのかわからないという企業も多いのではないでしょうか。

「株式会社サーキュラーエコノミードット東京」は、サーキュラーエコノミーやサステナビリティに関する新たな知識、学びをさまざまな形で提供するラーニングプラットフォームです。サーキュラーエコノミーへの貢献に向けて一歩踏み出したいとお考えの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

最後に