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近年、都内を中心に老朽化した大規模オフィスビルの取り壊しが進み、新しいコンセプトのもとオフィスビルへや商業施設と生まれ変わりつつあります。コンセプトのひとつとして環境配慮、建築・空間のサーキュラーエコノミーへの取り組みが注目されています。

産業廃棄物の2割を占める建築資材

最新の海外論文によると、建設業界は廃棄物における問題とエネルギー排出における問題でその影響力が大きく、建築廃材はEU発生する廃棄物全体の40%と指摘されています。また建設分野は世界的に総骨材の65%と金属材料の20%を消費していること、原材料の60%の消費に関与していることも示されています。

日本国内においても、建設業界での廃棄物量の現状は同じです。国土交通省「建設リサイクル推進計画2020 ―「質」を重視するリサイクル―」によると、産業廃棄物全体のうち、建設産業は排出量、最終処分量ともに産業廃棄物全体の約2割を占めます。

またその一方で、建設廃棄物のリサイクル率は2018年度には約97%とトップランナーともいえる状況にあります。

品目別でリサイクル率を見ると、アスファルト・コンクリートや木材など多くの品目は9割以上の再資源化をしていますが、クロスや塩ビタイルなど建築混合廃棄物は6割にとどまり、これの改善のみが遅れています。接着剤の付着した資材は、再資源化をするために分解にコストがかかる傾向があります。

建築分野でサーキュラーエコノミーを進めるために、リサイクル以外の手法はどうでしょうか。

既存建物や建材のリユース、解体や再構築に向けた容易設計、建築資材の効率化やリデュース、木材・バイオマス材など多くの手法があります。今回は国内での一事例をご紹介します。

家のサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」

SANU 2nd Home」は「Live with nature./自然と共に生きる。」を理念とし、月額 5.5 万円で「自然の中にもう一つの家」を持つセカンドホーム・ サブスクリプションサービスです。

都心から好アクセスな自然立地にあるキャビンを自由に選んで滞在するサービス体験を通じて「都市から日本各地の美しい自然に行き来し、生活を営む。」新しいライフスタイルを提供しています。現在、21拠点116室に宿泊可能。2025年には30拠点200室に拡大予定だそうです。

サービス利用により自然との共生に意識が向くという体験・教育的価値に加え、建築自体もサーキュラーエコノミーの原則に則しています。「SANU 2nd Home」ではカーボンネガティブを実現しています。

建設資材の再活用を可能にする「釘を使わない」⼯法、土壌への負荷を軽減する高床式建築、国産材利用、プロセスの可視化、解体に向けたプレハブ建築・分解可能設計など、可能な限り建築のライフサイクル全体の循環を実現しています。

建築におけるサーキュラーエコノミーへの取り組みもさることながら、サブスクリプションサービスを通じた日本の自然風土を感じることのできる休暇の在り方への提案には新たな可能性を感じます。

建築関連記事まとめ

CETでもサーキュラーエコノミー建築に注目し、これまで取材を行ってきました。最後に、海外取材の記事を中心に、サーキュラーエコノミー建築関連の記事をご紹介します。

オランダ、アムステルダムにあるHotel Jakarta Amsterdamは、サステナブルなホテルとして多くの取り組みを行っています。アムステルダム市の北部に位置するジャワ島(Java-eiland)は、かつてオランダの植民地であったインドネシアとの貿易船が行き来する貿易港で、地域の歴史を残す役割も果たしています。ホテルの建物は自然光を多く取り入れ、持続可能な素材で建築。ホテル運営における情報開示は施設内にある5つのQRコードをスマートフォンで読み込むことができます。

ベルギーの厳しいエコ規制に準じた建築プロジェクトを行っているMundo Group(ムンドグループ)の一施設「Mundo Louvain-la-Neuve」は、建築資材を再利用することで建築にかかるエネルギー消費量を90%以上削減した「パッシブハウス」です。

使用されていないオフィスビルを活用。中にはコワーキングスペースとオープンスペースが併設されています。建築は木材を中心にモジュールを組み合わせて建設されています。通常のパッシブハウスよりエネルギー効率がさらに高く、試算によると、50〜60年の長期間でCO2排出量を考慮すれば65%削減できます。

サステナビリティをコンセプトに建築デザインを手がける日本在住の建築家、ファラ・タライエ(Fara Taraie)さん。自身が内装設計とデザインを監修した東京・日本橋のビルxBridge-Global(クロスブリッジグローバル)を取材し、サステナブルな建築とはどういうものか。日本における課題も含め伺いました。

オフィスビルの空間デザインやその運用の仕方について、日本人がマインドセットを変え辛いと指摘。一方で、xBridge-Global(クロスブリッジグローバル)でもサステナビリティがテーマの建築は高く関心が向けられ、変わりつつある日本人のマインドについて期待しています。

当メディアを運営する 株式会社サーキュラーエコノミードット東京のグループ会社である新井紙材株式会社は、1951年創業の古紙リサイクルの会社です。埼玉工場の一部を改装し、サーキュラーエコノミーの拠点「サーキュラーBASE美女木」を創るプロジェクトは長い歴史があります。

元々機能していた埼玉工場のリサイクルの現場を見せる役割に加え、セミナーやワークショップの開催、ウェブメディアの発信拠点、コミュニティの活動拠点としての役割も担い、リアルな現場と最新の情報を組み合わせた体験を提供することで、循環型社会への理解を深めることができるようになりました。

8月30日(金)「サーキュラーBASE美女木」にて工場視察とスペースの内覧ツアー、サーキュラーエコノミー事例の展示を行うほか、欧州視察の報告会を行います。終了後はドリンクと軽食をご用意、交流会の時間も設けました。ぜひお気軽にご参加ください。イベント詳細とお申込みはこちら