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ベルギーで世界初の試みが行われています。2015年に施行された規則により「新しく建築される建物は、パッシブハウス基準(超省エネ建築)」を満たすこと」とされています。

今回、その建築基準に沿ったプロジェクトをベルギー各地にて行っているMundo Group(ムンドグループ)の一施設「Mundo Louvain-la-Neuve」を訪問し、彼らの活動についてお聞きしました。

ベルギーの厳しいエコ規制に準拠した建築

Mundo Louvain-la-Neuve建物内

Mundoの活動概要と活動を始めた背景を教えていただけますか?

私たちは、建築資材を再利用することで建築にかかるエネルギー消費量を90%以上削減した「パッシブハウス」を中心とした不動産開発を行っています。拠点は、ブリュッセルの他に、リスボン、ルクセンブルクそしてニューヨークにも各1拠点ずつ事務所を持っています。

パッシブハウスのコンセプトは、約9年前の2015年に世界で初めてベルギーが国の規則として採用しました。国自体がコンパクトであるため、試験導入しやすいことも背景にあります。

現在、ベルギーのすべての建築事務所や関係企業が規則に準拠しており、建築資材のライフサイクルを調査・分析できる無料ソフトウェアの導入もされました。ちなみに、欧州連合としての規則導入は時間をかけて行われています。

このコンセプトはとりわけ、2022年に勃発したウクライナ戦争に影響した欧州エネルギーショックが発生した際、より一層一般に受け入れられました。

Mundo Louvain-la-Neuve建物内のオフィス

マーケットでも持続可能性への意識が高まり、それを満たした建築物のニーズが生まれてきたとお聞きしました。

非営利団体・組織、例えばOxfamやGreen Peaceは環境配慮や持続可能性に対して意識が高い組織で、持続可能性をコンセプトとしたオフィス賃貸を求めていました。
そこで2008年、Mundoとして最初のコーワーキングスペースのプロジェクトがブリュッセルで始まり、現在、ベルギー各地に6か所あります。

このコワーキングスペース「Mundo Louvain-la-Neuve」は大規模な大学がある都市に立地しており、大学からの依頼で建設されました。要望・ニーズが先にあって建設されたので、一般的な不動産とは逆の流れになっています。

これまで取り組んできたパッシブハウスのプロジェクトについて教えてください。

現在までの24年間に約100ものパッシブハウスのプロジェクトを実施し、可能な限り再利用された建築資材を利用するよう挑戦しています。建築物の広さは、500㎡〜3,000㎡とさまざまです。

プロジェクトを通し、私たちは第1ステップとして90%のエネルギー削減を達成しました。通常のオフィスビルを建築する際には、全体のたった約25%しか再利用された建築資材が使われていません。

そこで、Mundoはよりエネルギー削減率を高めるために、利用される建築資材の大部分を持続可能な建築資材へ切り替える決断をしました。
まずは建築工程におけるエネルギー消費量の削減に取り組んできたので、次のステップとしては、施設内で利用される水の対処と緑地化などに取り組む予定です。

モジュールを組み合わせたコワーキングスペースの全貌

コワーキングスペース「Mundo Louvain-la-Neuve」のエントランス

Mundo Louvain-la-Neuveの建物構造について詳細をお聞きしたいです。

Mundo Louvain-la-Neuveは約2,000㎡あり、通常のパッシブハウスよりエネルギー効率がさらに高い建物です。この土地自体は大学が保有し、オーナーとMundoへ長期リースされています。

ここは元々、ほぼ放棄された企業のオフィスだったのですが、環境に配慮した建物をMundoがディベロッパーとして建設し、近代的な建物にしました。建物中はコワーキングスペースになっており、オープンスペースもあります。木材を中心にモジュールを組み合わせて建設されています。

一般的に新しい建物を建設する場合、古い建物は解体されていますし、私たちもこのMundo Louvian-la-Neuveは古い建物を解体して建設しました。しかし、今後10〜15年後には、既存の建物の解体や廃棄物を排出せずに、補強不要な建物のリノベーションの実現を目指しています。

木材の質感を感じられる階段

建物自体、モジュールの組み合わせでできているんですね。

我々はプログラミングを構築し、パッシブハウスの規制に適合できるようにしています。モジュールは欧州域内の一般的なオフィスのサイズに合わせ設計されており、将来的に居住空間となるようにも考慮されているサイズでもあります。モジュール同士の結合は最小限の部品が用いられます。利用されている建築資材は再利用できます。今はコンクリートを建物の基礎に用いていますが、将来的にはコンクリート不要なものにしていきたいと考えています。

コロナ禍とウクライナ戦争の逆境から生まれたコスト削減の工夫

モジュールの組み合わせでできた建物

プロジェクトを実施するにあたって、課題や困難に直面しましたか?

元々、資材のすべては木でした。ただし、欧州では新型コロナの影響で木材量が大幅に減少し、価格も300%に高騰、保管場所にも課題がありました。木材以外を使うことも検討しましたが、経済面の課題がありました。そこで、木材とそれ以外を組み合わせることにしました。

新型コロナは落ち着いたものの、今度は2022年に勃発したウクライナ戦争の影響で、アルミニウムや原油価格、ガス価格などが約200〜250%高騰してしまいました。プロジェクトを続けることが難しくなり、多くのプロジェクトが中断されました。

その間に思いついたのが、スチールを資材として組み合わせる方法です。フランスやルクセンブルクなどに問い合わせて、オランダで橋などに利用されていた700tを超えるスチールの在庫があることがわかりました。結果的に当初より50%のコスト削減ができましたが、スチールを採用することで、当初の計画を大きく変えることになりました。100%再利用されたスチールに合わせ、元々在庫していた資材リストを再度検討することになりました。

加えて、スチールを資材として用いる場合、同意書や品質調査が必要になり、非常に煩雑なプロセスが発生しました。ある2社に問い合わせたところ、確保した使用済みスチールの品質が建築資材の基準に満たないことが発覚したのです。ただし、3社目の欧州で有名なある企業がサポートしてくれたおかげで、在庫されていた資材の廃棄を5%以下に留めることに成功。加えて、コストも当初予算より低く抑えられました。

再利用された照明と木をふんだんに用いた内装

インテリアも再利用品を利用していますか?

建物内のインテリアは、部品交換や修理は必要ですが、廃棄されたものを再利用しています。例えば、建物内の照明やトイレにある資材も再利用品です。

試算しましたが、50〜60年の長期間でCO2排出量を考慮すれば65%削減され、環境インパクトも減らせます。

今後も、市場の要望にも耳を傾けながら、超省エネ建物の実現に取り組んで行こうと思います。