「地球にコミットする循環商社」として、不要品の回収・選別・再流通を一貫して行う、株式会社ECOMMIT。「捨てない社会をかなえる。」というビジョンの下、創業から16年間で蓄積されたデータと現場の経験を掛け合わせ、一度は不要になったものが捨てられることなく、再び価値提供できる仕組みを実現させています。
経済性と環境性を両立させながら、さまざまな企業や自治体と協働し、バリューチェーン全体をより持続可能な形にする「サーキュラーバリューチェーン」の構築に挑む株式会社ECOMMITのこれまでと、今後の展望について詳しく伺いました。
仕組みづくりに特化した「循環商社」
― 初めに、会社の概要について教えてください。
我々は「循環商社」と名乗っているんですが、循環の仕組みづくりに特化した会社です。
循環というと回収やリサイクルが注目されがちですが、私たちがやっているのは「ものづくりの新しいインフラになる」ことです。
― 循環商社とはどういうものなのでしょうか。
たとえば、海外で作られた服が日本で消費された後、ほとんどがそのまま廃棄されてしまっているのが現状です。
社会では「それを循環させましょう」という流れになっているのに、なぜ変わらないのかと考えると、そもそも回収するための仕組みが足りないか、それを再び原料に戻すためのインフラが足りないんです。
技術革新はどんどん進んで、古着をリサイクルする技術はできている。でも、消費者が物を手放してから、もう一度リユースあるいはリサイクルに回るまでの間をつなぐ仕組みが足りていないんですよね。
なので、そこを作ろうということで、自分たちのことを「循環商社」と言って、最終的にはものづくりに欠かせない一つのインフラになっていきたいと思っています。
― 実際にどんな事業をされているのでしょうか。
具体的には、小売店での売れ残りや、商業施設等で回収したものを当社の物流センターに集め、独自のルールに基づいて選別し、それを必要とする人たちに繋げてリユース、リサイクルを通して再流通をしています。
この事業を16年間やってきましたが、その中で培ったデータに基づいた選別方法やルールを設けて、無駄なく効率的に資源を循環させることができています。
― 現在17年目ということですが、どのように事業が始まったのでしょうか。
私は前職で中古の建築機械や農機の部品を海外輸出する仕事に携わり、そこで4年間勉強させていただき、独立しました。
勤めていた時に3か月ほど海外に駐在する機会があって、日本のリユース品に対するニーズが高いことを学び、日本で使われなくなったモノにはさまざまな可能性があることを感じたんです。
それで創業当時は、鹿児島で同じように建築機械や農機を買い取って、売却するというリユースの仕事を始めました。
前職の経験から、何となくどこの国で何がどのくらい売れるかというイメージはありましたし、実際に現地に行って多くのバイヤーと話し、どんなものが欲しいのかというニーズの調査もしていくうちにアイテムの幅が広がり、衣類や服飾雑貨なども扱うようになりました。
独自のトレーサビリティシステムを開発
― 回収したものの選別の方法について教えてください。
それがまさに我々のコアの部分なのですが、全部で123種類に選別しています。
これは「どんなものがどこでどれくらいの経済価値を見出せるのか?」「リサイクルの原料として、どこに納品できるのか?」「どんなメーカーさんがそれを必要としているのか?」というニーズの調査を、16年間の経験の中でデータ化してきたことで確立されました。
これが一番の強みであり、逆に言えばこれを作るのに16年かかってしまいました。
― そのデータベースはどのように作るのでしょうか。
独自のトレーサビリティシステム「エコバリューパック(EVP)」を開発しました。
この基幹システムに、回収の段階でどこから何がどれくらい出てきて、それをいつ誰が回収したのかをデータ登録します。次にそれを選別する段階で、内訳がどうだったか、さらに販売の段階ではいくらでどこに売れたのか、などを記録してプラットフォームを構築しました。
そうして、回収物が入ってきた時点でそれをどんな優先順位でどのような種類に分けていくべきかという最適解が標準化できるんです。
「見える化」で、リサイクル業界に光を当てたい
― 産業廃棄物ではトレースが義務付けられていますが、リユースやリサイクルでそこまでのプラットフォームを構築している例は少ないと思います。そのデータ化を、16年前から将来を見据えて先行投資的に導入されていたんですか。
そう言いたいところなんですが、実はそこまでは私も想像していませんでした。
ただ、我々が回収し、販売したものがその先でどうなっているのかを可視化しないと、どこまで行ってもこの商売がぼやけてしまうという懸念はありました。
― そう思ったきっかけはなんだったんですか。
政府の有識者会議に呼んでいただいた際に、どの省庁でもリユースというビジネスに対するイメージが悪かったんです。当時まだサーキュラーエコノミーという言葉がない時代でしたしね。
海外でどれだけニーズがあって喜んでもらえるかを僕は見ていますので、せっかくいい仕事をしているのにその過程がブラックボックスになっているが故に表舞台に立てないような印象がありました。それを払拭したいと思ったことで、見える化をしようと決意したんです。
― それが会社の理念にも反映されているんですね。
はい。我々の理念として「本当に世の中に役立つ環境ビジネスを追求する*」ということを言い続けているのですが、この「本当に」というのが重要なんです。
自分たちのやっていることが、最終的にどこでどうなっているかがわからない状況では、それが本当に環境にいいことなのかわかりませんよね。
だから、それを明確にするためにデータを取ることを続けてきました。
実際にやってみると、そこから重要な情報がたくさん見えてきて。これが今の自分たちの武器になっています。
*2023年10月よりMVV刷新
選別担当スタッフ「ピッカー」が主役
― 現場でのオペレーションにデータベースへの入力作業を組み込むのはすごく難しいと思いますが、どのように定着させたのでしょうか。
まずは、上述の通り「我々がなぜこれをするのか」という想いを伝え続けています。現場にも少しずつ浸透してきていると思います。
あとはテクノロジーでのカバーかなと思っていて。重量の計算でもなるべく手入力を少なくする。
たとえば現在新しいセンターを千葉の舞浜に建設中ですが、そこではデータ登録をもうほとんど人の手を介さなくても自動的にできる仕組みを作っています。そうやってなるべく手間を減らしていくことは重要かなと思っています。
― 舞浜のセンターはいつ頃、完成予定ですか?
11月から着手して、2024年秋頃にはフル稼働している予定です。公開可能なタイミングで、メディアを含めて発表したいと考えております。
実際にオランダに視察に行って、最新のテクノロジーを取り入れたプラントになる予定です。
― 楽しみです! 今日こちらのセンターにお邪魔して、現場の方々への信頼というか、皆さんと交流されている雰囲気がとても素敵だなと感じています。
ありがとうございます。もうなんか自慢の仲間なんですね、本当に。
僕がトラックに乗ってるときから一緒にやってるメンバーなので、背中を預けられる仲間ですね。幹部はみんな10年以上務めてくれている人ばかりですね。
それから、特に選別に携わっている方々には「皆さんが主役なんだよ」ってことを言い続けています。僕たちは「ピッカー」と呼んでいるんですが、彼らが1枚のお洋服を救い出すことは、新しくお洋服を生み出すのとまったく同じことだと思っていて。
むしろ今の時代からするとそれ以上に尊いことだと思っていて、そこにプライドを持ってもらいたいんですよね。
17年間やってきてようやく事業も評価されて、資金調達もできるようになってきたので、まずは労働環境を改善していきたいという思いもあり、新しいセンターの建設を進めています。
もっともっと光が当たる場所にしていきたいんです。
後編はこちら
2023.9.06
取材協力:株式会社ECOMMIT