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地域の資源循環を実現する再生可能エネルギーとして、バイオガス発電への関心が高まっています。Waste to Energy(廃棄物をエネルギーに)というわかりやすさと、地域資源の活用、そして微生物の力(メタン発酵)を使ってガスを生産するというネイチャーフレンドリーな点にも注目が集まっています。(トップ写真はフィンランドGASUM社の工場外観)

有機物なら何でも燃料に

バイオガス発電をわかりやすく説明している1分動画をご紹介しましょう。
欧州バイオガス協会(EBA-European Biogas Assosiation)が配信する「A Journey into Biogases(バイオガスへの旅)」です。日本語訳を動画の下に入れていますのでぜひご覧ください。

バイオガスは化石燃料に代わる持続可能なエネルギー源です。
循環型社会への移行を支える、有機物から生産される再生可能なガスなのです。
バイオガスはどのようにして作られるのでしょうか。
バイオガスは、家庭廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥、都市廃水、家畜糞尿など、有機物なら何でも燃料になります。
残渣は処理され、胃のような働きをする密閉された消化槽に入れられ、バクテリアの助けを借りて分解されます。
これにより、バイオガスという再生可能な混合ガスが生成されるのです。再生可能な熱と電力を供給し、グリーン燃料にもなります。
バイオガス製造プロセスの副産物には、さまざまな用途があります。バイオCO2はさまざまな産業で再利用でき、消化槽に残された栄養豊富な物質は有機農業に最適で、化学合成肥料の代わりとなり、土壌の健康に貢献します。

https://www.youtube.com/watch?v=oXtdnbeyPJE

バイオガスによるCO2排出抑制の3つの効果

バイオガスとCO2削減の関連性について気になるところですが、EBAによれば、バイオガスにはCO2の排出抑制にも3つの点で効果があるといいます。

一つ目は、食品などの有機物の残渣は、分解(腐敗)によってCO2を排出しますが、バイオガス工場に運ばれることによって、有機物の分解で発生するCO2が大気中に放出されるのを防ぐことができます。

二つ目は、バイオガスやバイオメタンはエネルギー源として化石燃料を代替します。バイオガスは、EU排出権取引制度(EU ETS)では非排出ガスと見なされています。

三つ目は、 バイオガス生産過程で得られる副産物である消化液を、バイオ肥料として使用することができます。これによって有機炭素を土壌に戻し、鉱物肥料による炭素集約型生産の需要を減らすことができます。

事例:北欧のバイオガス大手「GASUM」

欧州での事例をひとつご紹介しましょう。フィンランドを中心として北欧にバイオガス工場を展開するバイオガス大手「GASUM(ガスム)」は、100%のフィンランド国有企業です。バイオガスだけでなくそれを精製したバイオメタンを生産し、グリーンな自動車燃料として、廃棄物収集車の燃料として利用したり、消化液を地域の農業で有機肥料として活用するなど、発電事業にとどまらない多様な活用を行っています。

GASUM社のバイオガス工場の様子。上:廃棄物受け入れ 下:コントロールルーム

同社の目標は2027年までに7テラワット/時の再生可能ガスを供給することで、目標に向けて新工場の建設を進めています。同社生産責任者のアリ・スオランミ氏は自社ホームページでのコラム「循環型経済はバイオガス革命で加速する」で次のように語っています。

廃棄物をバイオガスやバイオ肥料に転換することが循環型経済の中核であり、ガスムは有機廃棄物をバイオガスに変換し、再生可能エネルギーとバイオ肥料を生産します。このプロセスは廃棄物を最小限に抑え、資源効率を最大化します。特にヨーロッパではバイオガス分野で大きな進展が期待されています。

https://www.gasum.com/en/news-and-customer-stories/articles/2023/the-circular-economy-gears-up-with-the-biogas-revolution/
2023年WCEFの視察ツアーでバイオガス生産プロセスの解説をするアリ・スオランミ氏(筆者撮影)

GASUM社ホームページ https://www.gasum.com/en/

日本のバイオガス戦略「バイオマス産業都市」

では、日本ではバイオガスはどのように展開されているのでしょうか。
日本では7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)によるバイオマス産業都市の戦略を発表しています。令和6年4月の農水省の最新資料「バイオマスの活用をめぐる状況」の中で、国内103市町村のバイオガス産業都市の一覧がまとめられています(バイオマスは生物由来の資源を意味し、バイオガスはバイオマスからつくられる可燃性のガスを指す)。

CETでもバイオガスには注目し、これまで取材を行ってきました。最後に、過去記事から、バイオガス関連の記事をご紹介します。