対照的な国同士のバビリオン比較、第2回はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の中東対決です。サウジの首都リヤドは、2030年の万博開催予定地に決定しており、UAEの首都ドバイは前回、2021年の開催地でした。「新旧の万博開催地」という点でも好対照です。特に特徴が現れているのが、最後のコーナーで紹介するお土産品でした。
サウジとUAEの違いは?
まずは両国の地理から見ていきましょう。アラビア半島の大きな部分を占める産油国サウジアラビアとその東側に位置するUAE、国土の広さに大きな違いがあります。首都はサウジがリヤド、UAEがドバイ。ドバイは中東の代表的な国際都市で、2021年の万博、2023年にはCOP28の開催国でもありました。

以下が両国の政治、社会面での違いです。経済面では石油依存のサウジに対して、UAEは多角的な展開をしています。また外国人に開放的で宗教にも寛容なのはUAEのほうです。これらのポイントを頭に入れてパビリオンを訪れると、また違うものが見えてくるかも知れません。
分類 | アラブ首長国連邦(UAE) | サウジアラビア |
---|---|---|
政治体制 | 連邦制・比較的柔軟 | 絶対君主制・保守的 |
経済 | 多角化・観光や金融が発展 | 石油依存・多角化を推進中 |
文化社会 | 多文化的・外国人に開放的 | イスラム色が強く、文化的に保守的 |
宗教寛容度 | 高め(他宗教施設あり) | 低め(イスラム中心) |
外交姿勢 | 実利主義・多極的 | 地政学的リーダーシップを志向 |
今回の万博では、首都リヤドが次回の開催国ということもあり、サウジアラビアがかなり積極的な発信を行っています。バビリオンも日本館の次に大きい規模で、SNSで広告もかけています。ではさっそく、それぞれのバビリオンを項目ごとに見ていきましょう。
外観〜それぞれの国の世界観が伝わる
サウジアラビア
サウジの外観は、数あるパビリオンの中でも「その国らしさ」が強く感じられます。「アラブの伝統的な泥れんが建築を思わせる棟が複数立ち並ぶ『市場』のような造りで、来場者は各棟を巡りながらサウジアラビアの魅力を体験できる」というデザイン意図。トーブ(白い民族衣装)を着た男性スタッフが常に入口に立っていて、一瞬、海外旅行に来た感覚になります。さらに、環境に配慮して各棟の屋上には太陽光パネルを設置したり、雨水を利用しているとのこと。

この写真は、大屋根リングから撮りました。地上だと混んでいて良い写真が撮れませんので、サウジの外観を撮りたいなら、上からがおすすめです。特に夕陽のタイミングだとマッチしますね。
UAE
UAE館の外観は、一見普通のガラスの建物で特徴がないように見えます。しかし内部には、高さ最大16メートルというナツメヤシの柱が90本立ち並ぶ圧巻の空間があり、外壁が総ガラスになっているため木々の林立が外から透けて見えるのです。伝統的な建築様式「アリーシュ」を再解釈したものとのこと。「ナツメヤシの農業廃棄物と日本の匠の木工技術を融合させることで、革新的な建築デザインを実現」しています。この廃棄物利用のポリシーは、後述するお土産品にも反映されています。


全面ガラスのため、館内には陽光がたっぷりと差し込んでいます。入口のナツメヤシには「Earth to Ether」と書かれていますが、これは 「アース・トゥ・イーサー・デザイン・コレクティブ」のことで、今回デザインを行った、UAEと日本のクリエイターによる学際的なネットワークのデザイン集団の名前だそうです。

展示〜建物周遊型VS大ホール型
サウジアラビア
サウジは国の豊かな自然や持続可能性に焦点を当てています。特に印象的だったのが「持続可能な海」のコーナー。白衣を着た研究者による実際の珊瑚礁のデモンストレーションコーナーで海の自然を体感できます。



最後のパートは、未来に向けてのメッセージ。サウジでは、「NEOM(ネオム)」という総額5,000億ドル(約70兆円)を超える国家主導の超巨大開発が進行中です。石油依存から脱却し、自然と共生しながら100%再生可能エネルギー(太陽光・風力・グリーン水素)による運営を行う未来都市で、世界最大級の水素輸出国を目指しています。
NEOMに関する映像が最後に流れますが、その規模感と未来感に圧倒されました。次回の開催予定地ですので、ぜひこの映像は通り過ぎず、最後まで見ることをおすすめします。

UAE
テーマ別で建物が分かれているサウジとは打って変わって、UAE館はナツメヤシの巨大柱が林立するひとつのホールです。随所に展示が置いてあり、自由観覧のスタイル。内容は伝統工芸などもありますが、中東のビジネス拠点とあって、国内産業や企業をユニークなスタイルで展示、紹介していました。



同じ商品でも見せ方が違う!ショップ&レストラン
お楽しみのショップ&レストラン。これまた対照的で、特にお土産品は、方や高級路線、方やエシカルと、それぞれのカラーが出ていました。
サウジアラビア
サウジは中庭に雰囲気のよいアラビアコーヒーのスタンドがあり、挽き立てのアラビアコーヒーが飲めるとあって大人気。左の男性は、カルダモンなどのコーヒーに入れるスパイスを挽いています。







UAE
UAEは出口のところにアラブの伝統料理「エミラティ料理」が食べられるカフェレストランがあります。太陽光が降り注ぐ明るい空間です。

高級路線のサウジのショップと異なり、UAEは「エシカル」「サステナブル」がテーマ。商品は廃棄物を使ったアップサイクル商品を中心に置かれています。




今回は中東の二つの国を紹介しましたが、他にもクエートやオマーン、カタールなども出展しています。日本にはなじみがない中東諸国ですが、万博なら回るのも簡単。ぜひ、足を運んでみてください。