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資源循環の解説セミナーを実施

CE.Tでは、2025年5月13日、セミナー「サーキュラーエコノミー事例解説セミナー Vol.4 地域の資源循環」をオンラインで開催しました。

国際情勢の不安定化や物価高騰が続く中、エネルギーや原材料といった資源の確保が世界的に課題となっています。こうした背景を受け、地域内で人・モノ・エネルギー・情報といった資源を循環させる「地域資源循環」の重要性が再認識されています。地域の中で資源を生かし、廃棄を減らし、持続可能な形で再利用・再資源化していくアプローチは、まさにサーキュラーエコノミーの本質でもあります。

セミナーの前半では、編集長熊坂仁美が、資源循環が注目される理由をデータで示し、さらに資源循環を4つの類型に分け、それぞれについて具体的事例をもとに解説を行いました。

後半では、株式会社GYXUSの代表取締役社長・平田富太郎氏をゲストにお迎えし、建設業界において大量生産・大量廃棄が課題となっている「石膏ボード」の「地産地消モデル」の事業について、その具体的なスキームや課題、今後の展望について詳細に解説して頂きました。

石膏ボードリサイクルの社会的意義

株式会社GYXUSは、石膏ボードの水平リサイクルに特化したスタートアップです。建設現場から排出される廃石膏ボードを回収し、独自の再生技術によって新たな石膏ボード製品を生産しています。50キロ圏内での地産地消モデルを構築し、輸送コストの削減と環境負荷の低減を実現。現在12の都道府県と連携し、全国展開を目指しています。品質を維持しながら、既存の石膏ボードと同等の価格帯での提供を可能にし、サーキュラーエコノミーの推進に貢献しています。

石膏ボードは建築現場で広く使用される建材ですが、その廃棄量の増加が大きな課題となっています。

2037年以降、年間約350万トンの石膏ボードが廃棄されると予測されています。このままでは20年程度で埋立処分場が満杯になってしまう恐れがあります。さらに、石膏ボードは焼却処理が困難で、埋立時に硫黄酸化物など有害物質が発生するリスクもあります。(平田氏)

また、石膏ボードの原料調達にも課題があると平田氏は指摘します。

現在、日本の石膏ボード原料の97%をタイ、オマーン、メキシコからの輸入に依存しています。世界的な需要増加や脱炭素化の流れで、原料のうち天然資源石膏の需要も高まる為、安定供給に不安があります。これらの課題を解決するため、石膏ボードのリサイクルは環境面だけでなく、経済面からも重要性を増しているのです。(平田氏)

GYXUS社の革新的リサイクル技術

同社では、使用済み石膏ボードから大型結晶化のプロセスを経ずに、そのまま砕いたものを原料にできる技術を活用し、従来のリサイクル手法とは異なるアプローチで石膏ボードの水平リサイクルを実現しました。

従来の技術では、廃石膏ボードを原料に戻す過程で化石燃料を使用し、コストがかかっていました。私たちの「GYXUS CORETECH」は、廃石膏ボードを直接石膏ボードに再生する技術です。これにより、プロセスを簡略化し、コストを抑えることができました。(平田氏)

さらに、同社は効率的な水平リサイクルを可能にするためコンパクトなリサイクル設備を各地域に分散させていることも大きな特徴です。輸送コストを大幅に削減し、既存の石膏ボードと同等の価格帯で再生品を提供できるビジネスモデルを確立させました。

今後の展望と課題

GYXUSの取り組みは、国内だけにとどまりません。

例えば、ハワイでは現在アメリカ本土から石膏ボードを輸入し、使用後は現地で埋め立てています。私たちの技術を導入すれば、ハワイ内で循環させることが可能になります。同様の取り組みは、シンガポールなどアジア諸国でも展開できると考えています。(平田氏)

一方で課題もあると平田氏は指摘し、現在12箇所でパートナーシップを結んでいますが、今後さらに拡大していく必要があること、また、再生石膏ボードの使用を増やしていくためには建設業界との連携強化が不可欠であると強調しました。

GYXUSの取り組みは、地域の資源循環を実現する新たなモデルとして、各方面から注目されています。最後には専門的な質問も多数寄せられ、今後の展開が期待されるセミナーとなりました。

CE.Tでは、毎月サーキュラーエコノミーのビジネスセミナーを行っており、6月はデジタル技術を使ったビジネスモデルについてのセミナーを行います。

サーキュラーエコノミー事例解説セミナー Vol.5「デジタルサービスとデータ活用」編

今後もぜひ、CE.Tにご注目ください。