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 三菱地所グループでは、丸の内エリアで「廃棄物再利用率100%」という挑戦的な目標を掲げています。その達成に向けて、地域内の資源循環を促進する「サーキュラーシティ丸の内」、オフィスでの廃棄物削減などの施策を次々に展開しています。同社丸の内運営事業部・管理企画ユニットの依田絃希氏に、具体的な内容についてお話をうかがいました。後編は、本社ビルでの取り組みを中心に、その成果と今後の展開についてご紹介します。

※前後編の後編 

15分別とごみ箱、給湯室のリニューアル

―オフィスでの廃棄物対策は、どのようなことに取り組んでいますか?

前編でも申し上げたとおり、「廃棄物再利用率100%」という目標達成のためには可燃ごみの削減が大きな課題ですので、当社では「15分別」に取り組んでいます。

みなさん「15種類も!」と驚かれますが、

 ・紙類→ミックスペーパー、OA紙、雑誌、新聞紙、ダンボール、マスク
 ・容器系→ビン、缶、ペットボトル、ボトルの蓋

といった具合に細分化した数字ですから、それほど難しくはありません。

とはいえ、単に「分別してください」と呼びかけるだけでは定着しません。「分別しやすい仕組み」を実現するために、什器メーカーと協力してキャビネット型ごみ箱を制作・導入しました。捨てやすさはもちろん、見た目もロッカーに近く、オフィスの景観にも馴染むところがポイントです。

               オフィスに設置されたキャビネット型ごみ箱

また、オフィスでごみが出やすい場所の一つ、給湯室のリニューアルにも取り組みました。分別したくても何をどこに捨てればいいのかわからない、という声が多かったので、ごみ箱の表示をオフィスの執務室内と揃えるなど、理解しやすい表示に変更しました。

特に、「お弁当系のごみ」はまとめて可燃ごみに捨てられてしまうことが多く、専用の分別ポスターを作成して、目立つ場所に掲示しました。

給湯室内の様子

―視覚的に訴えることで理解が進み、分別につながるのですね。

そうですね、ポスターはとても好評でした。また、まだトライアルの段階ですが、当社のオフィス内でゴミの名称変更も開始しました。「可燃ごみ」や「ミックスペーバー」と書かれていても、具体的に何が入るのかはわかりません。そこで、

   ・可燃ごみ →「燃やさざるを得ないごみ」
   ・ミックスペーパー → 「汚れていない紙類」

などと名称を改め、ごみ箱に表示して運用しています。

とにかく、少しでも目に留めて気づいてもらいたいという気持ちで、一瞬でも立ち止まってもらえるような目立つデザインを意識し、周知を図っています。

社内で使用しているポップ

清潔でわかりやすい「塵芥処理室」(ゴミステーション)

―ビル全体のごみが集まる「塵芥処理室」のリニューアルにも取り組んだそうですね。

分別を徹底するためには、ビルのごみが集まる塵芥処理室の環境も大切です。オフィスでしっかり分別しても、それを持ってきた塵芥処理室で誤った場所に置いてしまえば意味がありません

リニューアルのポイントは、塵芥処理室の壁を色で区切って、どこに何のごみを捨てるのかを視覚的にはっきり示した点です。

           塵芥処理室のリニューアルの前後比較

あわせて、空調で悪臭への対策を講じたり、照明も十分に設置して明るさを確保したりと、「(塵芥処理室から)早く出たい」という心理が働かないような環境づくりも行いました。名称も「エコターミナル」と変更するなど、イメージアップに努めています。

その結果、置き間違いが減り分別促進につながりました。こうしたハード面の整備は、費用面でのハードルがありますが、効果も大きいですから、今後も進めていきたいと考えています。

社内の分別を学べる「研修」を仕組み化 

―オフィス内での対策で、社員の方の分別への意識は変わってきましたか?

分別への取り組みは以前より前進していると感じます。ただ、社内で実施したアンケート調査では、「社内の分別を知る機会がない」という声が一定数ありました。確かに、きちんと学べる時間を用意していなかったことに気づきました。

そこで、新たにEラーニング教材を作成し、社内研修として受講してもらう仕組みを構築しました。2024年末から開始し、現在は本社とグループ会社の一部に展開しています。今後はさらに、実施する範囲を拡大していく予定です。

自社からエリア全体へ 目標達成を見据えた次のステップ

―廃棄物排出量の削減目標は既に達成されており、順調に取り組みが進んでいるように見えます。今後の課題などがあれば教えてください。

当社内での取り組みについては、ソフト施策(ごみの名称変更やEラーニング研修など)も含めて実施後に効果測定を行っています。その結果をみると、分別率が上がるなど着実に効果が出ています。

一方で、一時的に数値が上がることと、その行動が定着することは別次元だとも認識しています。今後は定着のための施策も必要になってくると思います。

そして、次の局面として重要なのが、当社以外のテナントやビル所有者の方々に、現在私たちが取り組んでいるオフィスでの取り組みを拡大していくことです。三菱地所のオフィス内での施策は、他のビルへと展開するための「実証実験」的な位置付けで推進しています。今後いかに面的に広げていけるかが課題です。

そこでポイントになるのが、やはり「意識面」だと考えています。これまでの経験から、廃棄物施策を実施する理由、それによって実現したい未来などを共有し、納得・共感してもらうことの重要性を痛感しています。それ無しに、取り組みを拡大していくことは難しいと考えています。

ハード面で解決できることもありますが、人の意識の変革なしに物事を動かすことはできません。誠意と熱意を持って多くの人に訴え、共感の輪を広げていきたいです。