東京ビッグサイトで12月10日から12日の3日間、環境問題や社会課題の解決を図るための様々な情報を発信する「SDGs Week EXPO」を開催されました。リサイクル率日本一でかつ、世界初の紙おむつの水平リサイクルを実現した自治体や「びっくりドンキー」の驚きのSDGsの取り組みなど、サーキュラーエコノミーを目指す最新の活動をレポします。
ゴミからお宝を見つける!「バラシンピック」がエコプロで開催

「バラシンピック」は、2024年からはじまった合作株式会社と株式会社浜田の共同プロジェクトで「バラシ(解体・分別)」と「オリンピック」を合体させ、資源循環をスポーツのような競技として楽しむ活動です。
今回、子ども達の間でも大人気の環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんの司会で「バラシンピック」が「エコプロ」でも開催されることになりました。しかも、きっかけはCE.Tで取り上げた「バラシンピック」の記事が「エコプロ」の主催者の日経の関係者目に止まったことがきっかけだったそう。
「バラシンピック」では、制限時間10分以内にパソコンをバラして素材を取り出し、価値のある素材を取り出すことを競います。
「バラシンピック」は、分解(バラシ)という作業を通して、静脈産業と動脈産業をつなぐ資源循環を理解する素晴らしい機会です。これまで無造作にしていた捨てるという行為ですが、そのままでは、ただのゴミが、素材の価値を知ることで、宝になるということを目の当たりにすれば「ゴミ」の見方が変わる経験になるでしょう。
次回は3月に大崎町で開催
ちなみに、第二回オフィシャルのバラシンピックは2026年3月1日に鹿児島県大崎町で開催予定です。
また、オフィシャルの大会以外にも「バラシンピック」を運営する合作株式会社と株式会社浜田は、企業・自治体に対しての研修プログラムの提供もしており、企業や自治体のイベントにも活用することができます。ご興味のある方は、「バラシンピック」のサイトをチェックしてみてください。
>>「バラシンピック」についてはこちらから
世界初の紙オムツの水平リサイクル!リサイクル率日本一の大崎町の試み

合作合同会社と伴走する形で成功している大崎町のリサイクル事業も「バラシンピック」のブースにて、同時に展示されていました。
大崎町は、鹿児島県東部、大隅半島の中央、志布志湾に面した人口12,000人ほどの自治体です。1998年、埋立処分場の残余年数が逼迫し、埋立処分場の延命化を目的とし、分別とリサイクルを開始。
現在、ごみの80%以上を再資源化、12年連続を含む16回の資源リサイクル率日本一を達成しています。処分場はあと40年は延命可能とのことです。
素晴らしい結果が出ている取り組みではありますが、分別は28品目と主婦目線の筆者からしても白目をむくほど細かい!それもそのはず、焼却炉のない大崎町では「燃やすゴミ」がなく、全ては「一般ゴミ(埋め立て)」かリサイクルかの二択しかありません。なので、埋立てに回さずに、いかに分別して、資源として再利用できるかが課題となります。
どのようにして28品目の分別を可能にしたのか?
どのようにして、住民の方にこの活動を理解してもらい、実践できる仕組みが出来上がったのか、大崎町SDG推進協議会の担当の方にお話を聞くことができました。
当初は面倒という意見も多かったゴミの分別。はじめからうまく行ったわけではなかったそうです。ただゴミ処理を解決するだけではなく、リサイクルしたゴミが資源となり、その利益を地域に還元できると根気強く説得、活動を続けたそうです。
リサイクルで得た資金を奨学金に活用
実際に、年間1000万円近い利益を生み出すことになり、「大崎町リサイクル未来創生奨学金」の資金となっているそうです。大学などを卒業後、10年以内に本町に戻ってきた子どもの保護者に対して、最大で元金と利子の返済を全額補助する制度などもあります。
「孫の勉強のためになるんだよ」と地元の人に声をかけると「じゃぁ、頑張るしかないな」と積極的に分別をはじめてくれるようになり、それが習慣として根付くことで自然と分別の和が広がっていたったとのことです。
また、大崎町SDG推進協議会では築いてきたノウハウを広めるために視察ツアーを実施。協議会立ち上げからの視察収益は700万円となり、こちらは協議会の活動資金として、サーキュラーヴィレッジ大崎町の実現に向けて使用されているとのことです。
紙オムツのリサイクルを自治体レベルで可能に
それでも、大崎町のリサイクル事業で頭を悩ませていたのが、使用済み紙オムツ(パンツ)の処理だそうです。埋め立てのゴミの三分の一を紙オムツ(パンツ)が占めていたそう。
現在、志布志市、大手のおむつ製造会社のユニ・チャーム、そおリサイクルセンターと共同で、使用済み紙オムツ(パンツ)の再資源化の実証事業を実施。2024年の4月から、紙オムツが「資源ごみ」として分別品目に加わりました。
すでに、30品目近い分別を実施しているため、一つ増えたとしても変わりがないということで、導入はスムーズだったそうです。
紙オムツのリサイクル自体は大崎町を含め、全国でも、20近い自治体が実施していますが、まだ全体の1%ほどでしかありません。
自治体との紙オムツ(パンツ)の水平リサイクルの事業としては、世界初の試みです。まだ、大崎町だけの取り組みですが、技術が確立したのはサーキュラーエコノミーとして、大きな前進になるでしょう。
大崎町SDG推進協議会では視察ツアーも行なっていますので、興味のある個人、企業、自治体の方はぜひ、ウェブサイトをチェックしてみてください。
>>大崎町のリサイクルプロジェクトについてはこちらから
「びっくりドンキー」の驚きのSDGsの取り組み

「びっくりドンキー」がSDGsに貢献している会社であると知っている方はそれほど多くないと思います。かくゆう筆者も、名前は聞いたことがあるけれど、ボリュームのある料理が売りのファミレスというイメージしかありませんでした。今回、「エコプロ」で紹介されていた「びっくりドンキー」のこれまでのイメージが覆る驚きの取り組みを紹介します。
驚きの取り組み1こだわりのお米

まず、驚いたのが「びっくりドンキー」のお米へのこだわりが凄いということ。日本各地の契約生産者し、農薬の使用を省き、最低限の「除草剤1回だけ」で育てたオリジナルのお米を栽培しています。
農薬使用が少ないということは、収穫後の残留農薬の危険性が減るだけでなく、より自然に近い状態で育てることができるということになります。
さらに、「びっくりドンキー」は生産者と一緒に契約水田の「生きもの調査」を実施。自分の田んぼにどんな生き物が生息しているか知ることで、生き物を気にかけるようになり、魚が移動できるようにする魚道の設置など、生物多様性に配慮した持続可能な工夫をする農家の方も増えているとのことです。
驚きの取り組み2 生ごみを堆肥や電気として再利用

「びっくりドンキー」の一部店舗では、お店から出る生ごみを粉砕乾燥処理機「Zero Wonder」で処理。「生ごみ資材」と呼ばれる発酵促進剤にリサイクルしています。できあがった堆肥は、「びっくりドンキー」で使われる大根と一部のお米の産地などに使用されます。
さらに、一部の店舗では、生ごみをリサイクラーにより、メタンガスにし、できたガスで発電し、電気にリサイクルするという取り組みも行なっています。
驚きの取り組み3「もぐチャレ」で 食育&食品ロス対策

また、「びっくりドンキー」では子どもが残さず食られるよう完食応援イベント「もぐチャレ!!」を実施しています。小学生以下のお子さんが対象で、残さず食べることができれば、お店から表彰状をプレゼントされ、2回目はデザートも貰えます。
親が言ってもなかなか食べてくれないことがありますが、周りから応援されると頑張れるお子さんも多いと思いますし、食べ物のことを考える食育としても素晴らしい取り組みだと感じました。
驚きの取り組み4 細かいサイズで食品ロス対策

また、 食べ切るためには、食べ切れる分だけ注文することが大切ということで、ハンバーグは注文時にSS・S・M・Lと多種のサイズが用意されています。ライスも通常の量のほか、小盛り、大盛りと自分の食べたい量に合わせて選ぶことができます。
驚きの取り組み5 お持ち帰りにも対応

海外では一般的なお持ち帰りですが、日本では対応しているお店が少ない中、「びっくりドンキー」では、残ってしまった料理を持って帰ることのできる環境省が推奨する「motteECO」にも賛同しています。事前に「お持ち帰るに関するお約束」を確認し、残った料理を自己責任で持ち帰ることができます。
食品廃棄物の再利用率95%達成!

以上のような様々な取り組みを積み重ねることで、1店あたりの生ごみ排出量が1日50kgから20~30kgに少なくなり、「食品廃棄物の再生利用等実施率」が3年連続95%以上を達成し、外食産業の目標値の50%を大きく上回る結果を出しています。
お肉のガッツリ系で、未就学児のいる我が家には残してしまうかもと行くのを躊躇していた「びっくりドンキー」ですが、SSサイズまである細かい量の設定やお持ち帰りにも対応しているということで、気兼ねなく食事を楽しめそうです。
また、低農薬のお米など素材にもこだわりがあり、小さなお子さんのいる家庭でも安心して食べることができるメニューというのも嬉しいポイントです。
これだけの取り組みを実施しているにも関わらず、顧客に押し付けることなく、人知れずに地道な努力を続けている「びっくりドンキー」の姿勢にとても共感しましたし、より、消費者として応援したくなりました。ぜひ、近々、店舗に行ってみたいと思いました。
>>「びっくりドンキー」のSDGsの取り組みについてはこちらから
>>環境省が推奨する「motteECO」についてはこちらから
取材 Rina Ota