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今回は、自然環境の変化に真正面から向き合う、対照的な2つのパビリオンを紹介します。

オーストラリアパビリオンの外観
モナコパビリオンの外観

ひとつは、青く深い地中海の恵みを未来へとつなぐモナコ。
もうひとつは、太古の昔から受け継がれてきた森の知恵で未来を守ろうとするオーストラリア。

両国のパビリオンは、いずれも「グローバル・コモン3」エリアに位置しています。
それぞれが「海」と「森」という異なる自然と文化をテーマに掲げ、没入型のアドベンチャー体験を通じて、直面する環境課題に触れることが特徴的です。

地中海の冒険へ-モナコパビリオン

モナコといえば、美しい地中海の海とともに歩んできた小さな公国。
そのモナコが大阪万博で伝えるのは、海の豊かさを未来へ守りつなぐための挑戦です。

フランスとイタリアの間、地中海沿いに位置する世界で2番目に小さな国モナコ

モナコの海洋保護への取り組みは、海洋哺乳類の保護区づくり、プラスチックごみのモニタリング、サンゴ礁の再生支援など、多岐にわたります。
科学技術と国際協力を駆使し、環境への負荷を減らす新しいソリューションを世界に発信していることで注目を集めております。

そんなモナコパビリオンに訪ねてきました。
入り口を抜け中へ進むと、そこはまるで海底世界に迷い込んだかのような空間が広がります。
青く輝く光に包まれながら、訪れた人々はモナコが守ろうとする地中海の未来へと誘われていきます。

展示空間には各所にモニターが設置されており、訪問者は自由に触れながら学びを深めることができます。
例えば、プラスチック汚染の広がりをリアルタイムでモニタリングする仕組みや、フランス・イタリアと連携して設立した海洋哺乳類保護区「ペラゴス海洋保護区」の紹介など、インタラクティブに楽しみながら、モナコが取り組む課題と希望を体感できる設計です。

サンゴ礁の保全について学べるパート

森と大地の冒険へ-オーストラリアパビリオン

オーストラリアパビリオンでは、何万年もの時を超えて受け継がれてきた、先住民アボリジニの自然観と知恵が、現代社会への提案として描かれています。

オーストラリアパビリオンの入り口

入り口をくぐると、訪れる人を迎えるのは、乾いた大地と森の鼓動。
鮮やかな映像や音に包まれながら、アボリジニたちが自然と共に生きてきた物語に触れていきます。

ユーカリの匂いが一面に広がり、鳥や動物の鳴き声が聞こえてきます。

パビリオンの中心テーマは、「Cultural Burning(文化的火管理)」と呼ばれる伝統的な火入れ技術。
森に定期的に小さな火を入れることで、過度な山火事を防ぎ、生態系を守る——自然のサイクルを理解し、共に生きるために生まれた知恵です。
今、世界中で頻発する大規模な山火事に対して、この古代から続く方法が改めて注目されていることも、パビリオン内で丁寧に紹介されています。

各所に設置されたインタラクティブな展示では、火入れによる森の変化や、生態系の再生の過程を体験的に学ぶことができます。
また、気候変動に直面する今、アボリジニの知恵がどのように現代社会に応用できるかという視点にも触れられており、来場者に「技術」だけではない「自然との対話」の重要性を問いかけます。

オーストラリアを代表するグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)

パビリオンの外には、オーストラリアの食文化を味わえる常設店も。
店員さん一押しの「クロコダイルフィレロール(ワニ肉を使ったジューシーなフィレ肉を、ふんわりとしたバンズで包んだ一品)」をいただきました。クセがあるのかと少し構えていたのですが、意外にもクセはほとんどなく、チキンに近いさっぱりとした味わいと、しっかりとした弾力が印象的でした。

メニュー一覧。他にもドリンクメニューがありました。

海と森から得られるヒント

モナコとオーストラリア、それぞれのパビリオンを訪れて強く感じたのは、
自然が好きな人も、環境問題に関心がある人も、そして未来に少し不安を抱えている人も
誰もが一度、この海と森の冒険を体験してみてほしい、ということでした。

モナコでは、最先端テクノロジーの力で海を守ろうとする姿に出会い、
オーストラリアでは、何万年も受け継がれてきた知恵とともに森と生きる道を学びました。

アプローチこそ異なりますが、どちらのパビリオンからも伝わってきたのは、
自然を「支配するもの」ではなく、「ともに生きる存在」として敬意をもって向き合う姿勢。

海に、森に、実際に自ら一歩を踏み入れることで、その想いは空間全体から伝わってきます。