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オランダのアムステルダムに拠点を置くInstockMarketは、食品ロス削減に取り組む企業。元々は2014年、アルバートハインという大手スーパーチェーンの社内ビジネスコンテストから生まれました。当初は廃棄予定の食材を活用したレストラン「Instock」として注目を集め、アムステルダムを中心に3店舗まで拡大しました。

画像引用:https://instockmarket.nl/blog/blogs-instockmarket/een-food-rescue-center-wat-is-dat.html

しかし、新型コロナウイルスの影響で2022年にはすべてのレストランを閉店。これを機に、InstockMarketとして事業を完全に転換しました。この決断により、より大規模に食品廃棄物の削減に取り組めるようになったのです。

※本記事は2023年2月に現地で実施したインタビューを編集したものです。

規格外野菜を救う、独自のビジネスモデル

InstockMarketの核となるのは、農家や食品メーカーから規格外の食材を集め、それをレストランやケータリング業者に提供するマッチングシステムです。担当のルーカス氏は次のように説明します。

「私たちが扱う食材は、サイズが大きすぎたり小さすぎたり、形が変わっていたりと、通常の流通でははじかれてしまうものです。しかし、味や栄養価はまったく問題ありません。これらの食材を300以上のレストランやケータリング業者に提供しています」

また、ビジネスとして特徴的なのは、食材を買い取るのではなく、マッチングが成立した時点で取引が発生する仕組みです。これにより、リスクを最小限に抑えながら、食品ロス削減に貢献しています。

「農家さんにとっては、通常なら廃棄コストがかかる食材を私たちを通じて販売できるメリットがあります。一方、レストラン側は市場価格より30%安く食材を仕入れられます。win-winの関係を作ることで、持続可能なビジネスモデルを構築しています。これらはレストラン事業撤退の経験から学んだものです」

旧InstockMarket 倉庫内の様子。規格外野菜だけでなく肉や飲料も保管している

データ駆動型の効率的な物流システム

このビジネスモデルの成功の鍵は、効率的な物流システムにあります。彼らは過去のデータを分析し、需要を予測しながら食材の調達と配送を行っています。

「私たちは常に過去のデータを参照しています。例えば、先週どれくらいの量が売れたかを見て、今週の調達量を決めています。これにより、無駄な在庫を抱えるリスクを最小限に抑えています」

物流面では、アムステルダム市内と国内全体をカバーする2つの配送パートナーと提携しています。小型の電気自動車や通常のバンを使用し、環境に配慮しながら効率的な配送を実現しています。

「24時間以内に農家から食材を集荷し、翌日にはレストランに届けるシステムを構築しています。鮮度を保ちながら、迅速な配送を行うことで、お客様満足度の向上にも繋がっています」

案内をしてくれたルーカス氏。

廃棄食材を活用した商品開発

さらにInstockMarketは、単に食材のマッチングだけでなく、独自の商品開発にも力を入れています。例えば、ビール製造時に出る麦芽かすを使用したシリアルや、ジャガイモの皮を使ったビールなど、ユニークな商品を生み出しています。

「私たちは常に新しい可能性を探っています。廃棄されるはずだった食材から、おいしくて持続可能な商品を作り出すことで、消費者の意識改革にも貢献したいと考えています」

また、トマトのペーストやその他の加工品など、他社が開発した廃棄食材活用商品の販売も行っています。これにより、顧客に多様な選択肢を提供し、食品ロス削減の輪を広げています。

課題と将来の展望

InstockMarketは急速に成長を遂げており、2023年、アムステルダム市内南東のディーメンに約1,700平米の「フードレスキューセンター」を新設しました。この拠点の新設により、前年比で約2倍もの食材をレスキューすることに成功しています。

フードレスキューセンター 画像引用:https://instockmarket.nl/blog/blogs-instockmarket/een-food-rescue-center-wat-is-dat.html

しかし課題もあります。その一つが、安定的な供給と需要のバランスを保つことです。

「シェフたちに定期的に私たちの食材を使ってもらうことが重要です。一度きりの大きなイベントよりも、週に何回か定期的に利用してもらうことで、より大きなインパクトを生み出せます」

InstockMarketの目標は、1,000日以内に1,000の顧客を獲得することです。しかし、最終的な目標はもっと大きなものがあります。

「私たちの究極の目標は、自分たちの存在が必要なくなることです。すべての食材が適切に利用され、食品ロスがゼロになる社会を目指しています。そのために、消費者教育や生産者との協力も進めています」

彼らの挑戦は、単なるビジネスの成功を超えて、社会全体の持続可能性を高める大きな可能性を秘めています。彼らの取り組みが、オランダを超えて世界中に広がり、食品ロス削減の新たな標準となることが期待されます。


この取材は、2023年2月5日に安居昭博氏主催のアムステルダムツアー時に行われました。