今回の万博では、「循環」「サーキュラーエコノミー」をテーマにする国が多くあります。今回はそのひとつ、「サーキュラー・バイ・デザイン(循環のデザイン)」をテーマに掲げるルクセンブルク大公国のパビリオンをご紹介します。
再利用先が決定している循環型パビリオン
半年先には全面撤去しなければならない万博の建物。それらを建築廃棄物にしないためには二次利用先を決めなければなりませんが、ルクセンブルグパビリオンは早期の段階で決めているパビリオンのひとつです。建物の中でも最も重量がある基礎コンクリートブロック(約542トン・最大226個)を、万博終了後に移動距離が少ないテーマパークである「ネスタリゾート神戸」(兵庫県三木市)にて再利用することが決定しています。


建物は白い大きな膜屋根を持つ鉄骨構造で、循環型経済の理念に基づき設計されたものになっています。

国民一人当たりのGDP、ミシェラン星の数も世界一の豊かな国
ルクセンブルクは、ドイツ、フランス、ベルギーの3国に囲まれたヨーロッパの中心部に位置する小さな国家です。国土は神奈川県ほどの広さながら、EU創設メンバーの一つであり、金融やICT、環境分野における先進的な取り組みでも知られています。国民一人当たりのGDPが世界一位、また、国⺠⼀⼈当たりのミシュラン星の数も世界⼀の美⾷の都でもあり、豊かな国としても知られています。
また、多くの市民が周辺国に通勤する「越境労働」が一般的で、フランス語・ドイツ語・ルクセンブルク語の3言語が公用語として日常的に使われている多言語社会でもあります。

子どもたちの“ドキドキ”が知性を育てる-未来教室「ワールドラボ」
パビリオン内を進むと、来場者が未来の教育や共創の可能性を体験できる空間として、「ワールドラボ」と呼ばれる特別な展示エリアが設けられています。
この部屋では、大きな球体「Magritte(マグリッド)」と呼ばれるアプリケーションを用いたインタラクティブなアクティビティを体験してきました。

言葉を使わずに操作できる設計がされており、子どもたちの空間認識力や数学的思考力を自然に育むことができるよう工夫されています。ゲーム感覚で楽しく学べるこの体験は、年齢や言語の壁を越え、多様な背景を持つ来場者に新たな発見をもたらします。
この展示には、「We can create world better together(私たちは共に、よりよい世界をつくることができる)」というメッセージが込められており、持続可能な社会の実現に向けた教育と創造性の可能性を体感できる場となっています。

天空に広がる没入型スクリーンで旅するルクセンブルク
ルクセンブルクパビリオンの中でも、ひときわ注目を集めているのが、360度の映像体験が楽しめる「自然体感ルーム」。メディアでも紹介され話題を呼んでいるこの空間では、ルクセンブルクの自然と都市が織りなす風景を、まるで全身で“感じる”ように体験できます。
部屋に足を踏み入れると、ぐるりと取り囲む椅子、そして中央にはネット状の床。スタッフに「ネットの上に座ってください」と促され、最大10名ほどが横並びに腰を下ろします。このシンプルな構造が、体験の始まりにふさわしい高揚感を生み出します。
やがて映像がスタートすると、視界の前方だけでなく、足元のネットの下にも映像が映し出され、空間全体がまるで“天空に広がる没入型スクリーン”へと変貌。浮遊しているかのような不思議な感覚に包まれながら、ルクセンブルクの田園、深い森、のどかな村の風景が目の前に広がります。やがて画面は切り替わり、近代的な都市風景へ。美しく設計された首都の建築群が、国の多面性を鮮やかに映し出します。
この小さな国が持つ豊かな自然と洗練された都市のコントラスト。それを五感で受け取るこの部屋は、まさに“ルクセンブルクの心”を映す一幕。多くの来場者が「これが見たかった」と口をそろえるのも納得の、忘れられない体験がここにあります。


まとめ
ルクセンブルクパビリオンでは、感動的な体験に加えて、循環デザインの建物に注目です。設計段階からモジュール化や簡易解体を想定していたからこそ実現できた再利用のプロジェクトは、万博のサブテーマ「いのちをつなぐ」の体現でもあります。“Doki Doki”をテーマに掲げたパビリオンのときめきは、建材という形を変えて、日本で新たな物語を紡ぎ続けます。
