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東京都台東区にあるアップサイクルカフェ「Rinne.bar(リンネバー)」は、廃棄される運命だった素材に新たな命を吹きこみ、思い思いの手作り作品として生まれかわる空間です。以前、CE.Tでは東京都の補助事業の採択事業者として、運営する株式会社RINNE 代表の小島幸代さんと山浦あかりさんに取材を行いました。今回は、Rinne.bar(リンネバー)の新たな展開について、山浦あかりさんにお話を伺いました。

株式会社RINNE RINNE 代表 小島幸代さん(左)とアシスタントプロデューサー山浦あかりさん(右)(2024年7月取材時)
一見するとアンティークショップのようなRinne.bar。古い家具や雑貨が所狭しと並び、温かみのある照明が空間を包み込む。

「みんなのリビング」として愛される空間

「Rinne.bar」はどんな場所ですか?という質問に「『みんなのリビング』のような存在です」と明るく答える山浦さん。

「このあたりはワンルームマンションが多い地域なので、広々としたリビングのような空間を求める方もいらっしゃいます。お一人で来られた方同士が大きなテーブルを囲んで、『これ何を作っているんですか?』『可愛いですね』といったコミュニケーションが生まれています」

常連客である小山さんは、近所に住むITエンジニア。元々全く物づくりやアップサイクルに興味がなかったものの、ここがきっかけで物作りを楽しむようになったと言います。

毛糸を使った作品の制作を楽しむ小山さん

「最初は単にドリンクを飲みに来ていただけでした。でも、居心地の良さから少しずつ素材の整理や色の仕分けを手伝うようになって、気がつけば、アップサイクルやサステナブルなことに興味を持つようになっていました。」

小山さんは、リンネバーの空間を「宝箱」と表現します。「可愛らしいものがたくさんあって、幸せを感じます。新しいものじゃなくて、使われてきたものが集まっている。そこに自分が付き添っているような感じがするんです。」

思わず撫でたくなってしまうモコモコの毛糸の小鳥やうさぎたち。

また、リンネバーでは、月に1回「RINNE CLUB」という活動も行っています。これは物づくりを楽しむだけでなく、素材の整理や仕分けなど、裏側の作業も体験できるコミュニティになっています。

「定員が1回5名ほどなので、すごく小規模ではあるんですけど、毎月やっていて、今大体30名くらいのコミュニティになっています。高校生から社会人の方まで、幅広い方が参加してくださっています。」

答えがある世界から答えのない世界へ

そんな山浦さんは、なぜこの仕事をするようになったのでしょうか。出会いについて聞いてみました。

「初めてここに来たのは2021年で、私は福祉系の大学に通っていました。『アップサイクル』という言葉をなんとなく聞いたことがあって、でも、よくわからないなと思っていた時に、雑誌でリンネバーのことを知って、遊びに来たのが最初のきっかけでした」

山浦さんは、障害者の方々が作ったアップサイクル商品の販売や、地域の人々が素材を加工する様子、そして自分で手を動かして作る体験など、様々な人の関わりがある面白い取り組みだと感じたといいます。

「福祉を学んでいた時に、どうしても障害者、高齢者、子ども、と縦割りになってしまうことに違和感があって、もしかしたらアップサイクルという物づくりが、色んな背景のある人をつなげ、ごちゃまぜに混ざれるきっかけになるんじゃないかなと思ったんです。そういう場づくりにすごく興味を持ちました。」

その後、1年間の海外留学を経て、新卒社員として入社を決めた山浦さん。しかし、それまでの「正解がある」世界から一転、新たな挑戦が待っていました。

「これまでは問いを与えられて正解があるから、それに向かって頑張っていたんです。でも、Rinne.barの事業って、これという決まった正解はなく、関わってくださる人たちがみんなどうやったらワクワクするだろう、自分たちもどうしたらワクワクして、社会も地球も人にも優しいような活動ができるかを追い求めているんです。それが面白くもあり、自分の中に全然まだインプットが足りないところもあるので、大変なところでもあります。」

ビールやカクテル、ノンアルドリンクなど、飲み物のチョイスも豊富

クラウドファンディングで見えた支援の輪

RInne Barは、5周年を記念して、クラウドファンディングを実施しました。

「正直なところ、この店舗を私たちだけで続けていくのが難しくなってきていたのですが、これまでの5年間で多くのメディアに取り上げていただき、常連のお客様にも愛していただいていたので、もう少しだけこの5周年をみんなで祝う機会を作りたいと考えたのがクラウドファンディングのきっかけです。

年末年始から始めたため、忙しい時期でタイミングとしてはあまりよくなかったものの、結果は大成功。

「ありがたいことに目標の500万円を大きく超える600万円のご支援をいただき、無事に達成することができました。これにより、当初2月末で閉店予定だった店舗を7月末まで延長することができました。」

今後はどんな展開になるのでしょうか。

「7月末までは今の場所でRinne.barを盛り上げつつ、その後は出張Rinne.barの事業を拡大し、たくさんの方に工夫して創る面白さを伝えていきたいと思っています」と山浦さんは意気込みを語ります。「これまでの5年間で関わってくださった方々と、今まさに色々なアクションの種を蒔いているところです」

次の移転先も決まって、新たなスタートの準備もしているとのこと。

「アップサイクルカフェ」「循環」という他に類を見ないコンセプトの「Rinne.bar」。ここを中心としたコミュニティの広がりは、サーキュラーエコノミーが地域に求められ、溶け込んでいる事例と言えるでしょう。

新天地でのRinne.bar 第二章の展開も楽しみです。

この日はグループ予約が入り、仲間同士で和気藹々と楽しそうにものづくりを楽しむ姿が見られた。

Rinne.bar リンネバー
〒111-0056 東京都台東区小島2丁目21−2
つくばエクスプレス・都営大江戸線「新御徒町駅」A4出口裏通り、徒歩1分
営業時間 水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日 13:00-22:00 ( L.O. 21:00)
https://www.rinne.earth/