循環型社会の実現が試される今、私たちが忌避しがちな「ゴミ」や「うんち」という概念から、分解や循環という視点で環境や社会のあり方を問う一冊をご紹介します。
竹村眞一著『ゴミうんち:循環する文明のための未来思考』(グラフィック社)は、自然界の循環システムから最新技術まで、幅広い視点で未来の文明のあり方を探る本です。この本は、21_21 DESIGN SIGHT企画展「ゴミうんち展」(会期2024年9月27日〜2025年2月16日)のコンセプトブックですが、その内容は広く深く、循環を学ぶ教科書としてもおすすめできます。

ゴミもうんちも存在しない? 自然界の循環の仕組み
自然界にはゴミもうんちも存在しない。すべては有用な資源として循環してゆく。「忌避」や「忘却」の対象として"ゴミ"や"うんち"という概念が存在すること自体に、社会デザインの失敗があるのではないか? 排出されたものを循環させる自然の仕組み、人類の社会と文化、そして最新の技術を紹介し、「人類の社会OS」を更新する方法を探ります。



忌避から循環へ:社会デザインを見直す
ゴミうんちから見た日本の歴史と文化は、私たちの社会がどのように循環の概念を失ってきたかを物語っています。かつては、人間の排泄物も農業の肥料として活用されるなど、循環型の生活が営まれていました。しかし、近代化とともに、ゴミやうんちは「忌避」や「忘却」の対象となり、社会から切り離されてしまいました。
この変化は、単なる生活様式の変化ではなく、社会デザインの失敗を示しているのかもしれません。自然界では全てが循環しているにもかかわらず、人間社会では「ゴミ」や「うんち」という概念を作り出し、それらを排除しようとしています。この考え方自体を見直す必要があるのではないでしょうか。

地球の循環OSをアップデート:未来文明への提言
最終章の「地球の循環OSアップデート」では、サーキュラーエコノミーの具体的事例も取り上げられており、最新の技術と自然の知恵を融合させた斬新なアイデアが次々と提示され、循環の未来を教えてくれます。
著者の竹村眞一氏は、人類学的な視点から地球環境に関する研究・啓発活動を行ってきた京都芸術大学教授であり、環境教育デジタル地球儀「触れる地球 / SPHERE」の開発者でもあります。その豊富な知見と独自の視点が、本書の随所に活かされています。
なお、CE.Tでは、「ゴミうんち展」のもう1人の展覧会ディレクターである佐藤卓氏へのインタビューを行いました。記事はまもなく公開予定です。お楽しみに。