無印良品には、シンプルで環境にも配慮した商品が多いというイメージを持たれる方が多いと思います。同社の商品を愛用している人たちのことを表す「ムジラー」という言葉が登場するほど人気のある無印良品ですが、サステナビリティに関して、具体的にどのような取り組みが行われているかという点についてはよく知らないという方がほとんどではないでしょうか?
無印良品を運営する良品計画は、1980年に「無印良品」が誕生して以来、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つの視点で社会や環境に配慮したものづくりを続けています。そして、ESG経営※のトップランナーを目指し、驚くほど多くの取り組みを行っています。
そこでこの記事では、無印良品が行う環境に配慮した多角的な取り組みをご紹介しながら、これからの小売業の在り方や、私たちが目指すべき暮らしついて考えていきたいと思います。
※ESG経営…「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(管理体制)」の3語から成る略語で、環境汚染や社会的規範、コーポレートガバナンス(企業経営において公正な判断・運営がなされるよう、監視・統制する仕組み)の遵守を重視した経営スタイルのこと。
※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。
サステイナブルな原料へのこだわり
無印良品で販売されている商品の原料となる素材は、「地球、動植物、生産者に余計な負荷をなるべくかけない方法で採取、栽培されたもの」という基準で選ばれています。一次原料については可能な限り生産地がトレースできるものを使用し、なかでも主要な原料は実際に生産地を訪れ、採取・栽培場所の状況や生産者のくらしを確認。使う人・作る人・自然に対する向き合い方を徹底的に考えて原材料を調達しています。
買いやすい価格へのこだわりも
無印良品は、原材料にこだわるのはもちろんですが、買いやすい価格にも重点を置いています。品質は変わらないのに見栄えのためだけに捨てられているもの、業務用の素材、世界中から見つけた原材料や、安価で大量に確保できる旬のものなどを活かし、低価格で質の良い商品を提供することを目指しています。
Cafe&Meal MUJIの素材選び
原材料に対する考え方は、無印良品が運営する「Café&Meal MUJI」で使われる素材選びにももちろん反映されています。環境に配慮した農法で採れる食材を積極的に採用しているほか、世界中の産地に担当者が直接足を運び、生産者と交流しながら旬の食材を調達しています。
大きなサイズの買い物袋はデポジット制を採用
無印良品では1980年の創業以来、「包装の簡略化」に取り組んできました。継続的にパッケージや、商品を提供する際のショッピングバッグの見直しを行い、レジ袋有料化に際してはジュート(黄麻)を用いたマイバッグを発売。現在では、用途に合わせた買い物バッグを10種類以上展開しています。
画期的なのは、大きなサイズの商品を購入した際のバッグにデポジット制を取り入れていること。再生ポリプロピレンバッグを150円で販売し、店舗に返却すると返金される仕組みです。このような、所有権を移動しない仕組み作りによって廃棄物を減らす取り組みは、サステイナブルな社会を目指す上でとても重要。
このほか、プラスチックが使われることの多い陳列用フックを再生紙に変更するなど、パッケージだけでなく陳列用資材の素材の見直しも進められています。
「不揃い」の見方を転換しロスを排除
無印良品の「不揃い」お菓子シリーズは、製造過程で出る形の不揃いなものを生かした人気商品。例えば不揃いバウムは、焼きムラが出てしまったり形が崩れてしまう両端の部分を、通常よりも価格を抑えて提供しています。当然ながら美味しさは変わらないし、アレンジレシピなども気負いなく楽しめるとあって幅広い年齢層に人気。
「製造時のロスを減らし、余計な手間を省いて適正な価格で販売する」
無印良品の取り組みは、私たちにサステイナブルな視点で物を選ぶ機会を与えてくれます。
売上金の一部が寄付される絶滅危惧種の動物モチーフTシャツ
愛らしい動物がプリントされた子ども用Tシャツ。実はこれは絶滅危惧種の動物をモチーフにしたもので、売上金の一部がIUCN-J(国際自然保護連合日本委員会)に寄付されています。子どもたちがこのTシャツを着ることが動物の保護活動に繫がると同時に、生きものたちが置かれている状況に興味を抱くきっかけになってくれたらという願いが込められています。
次世代フードも積極的に販売
無印良品では、近い将来の人口増加と食肉需要の急増が予測されていることを踏まえ、環境負荷を抑えた食品の提供にも乗り出しています。2020年から販売を開始したプラントベースミートは6品目を展開。大豆ベースの代替肉は冷蔵タイプや冷凍タイプのものが多いですが、無印良品の大豆ミート商品は常温保存可能なパウチパッケージで販売されています。
ひき肉タイプ、薄切りタイプは封を開ければすぐ調理可能なので常備しておくと便利。味付け済みのハンバーグやミートボールは、そのままでもアレンジしても美味しくいただけます。
大豆ミートの他にも、昆虫食に注目して商品化された「コオロギせんべい」や「コオロギチョコ」は、手軽にタンパク質が摂れる、地球に優しい未来食として話題を集めました。思わず誰かと話したくなる商品は、地球の未来を考えるきっかけづくりにも最適。
「自分で詰める水のボトル」でペットボトルの廃棄を減らす
プラスチックごみの削減を考える時、私たちにできる最も身近なことの一つはペットボトルのリサイクルでしょう。しかし、無印良品ではその一歩先、そもそも空のペットボトルを減らそうという取り組みを行っています。毎日水のボトルを捨てるのではなく、水を詰め替えることで、一日一本でも空のペットボトルを減らそうというのです。
無印良品では「自分で詰める水のボトル」を販売するとともに、店内に給水機を設置し、店舗での無料給水サービスをスタート。この取り組みでは、新しいペットボトルを消費することのない「給水」という行為が日々の習慣になることを目指しています。また、繰り返し水を詰め替えることのできるボトルは、買い替え時や破損してしまった場合、店頭に持参すれば引き取ってもらうことができます。
国産杉を使用したオフィス家具で森林保全に貢献
木製家具の材料をどのように調達するかは、日本が抱える森林問題と直接関わる重要な事項。実は、日本の国土は約67%が森林であるにもかかわらず、木材の消費量に占める国産材の割合が少ないという問題を抱えています。
そこで無印良品は、国産木材を使用したオフィス用品を展開する内田洋行と共同で、国産杉を用いたオフィス家具を開発。
杉材は主に建材として使われ、余り材は割りばしや燃料となります。この余り材を家具として使用可能なパネル状に加工する技術を開発した宮崎県の生産者との取り組みにより、家具製造のラインに取り入れました。構造部にスチールを用いて強度を補強し、オフィスでの使用にも耐えられる造りを実現しています。
この取り組みは、木をまるごと有効に使うことで国産杉の使用用途を拡大するだけでなく、森林保全や林業の活性化にもつながっていく、未来を見据えたプロジェクトと言えるでしょう。
多くの人がサステイナブルな観点でモノを選ぶ社会へ
良品計画は、サステナブル・ブランド ジャパンが実施する生活者のSDGs(持続可能な開発目標)に対する企業ブランド調査『Japan Sustainable Brands Index』において、2年連続で総合第2位、流通(小売り)部門で第1位に選ばれました。
無印良品には、「環境に配慮されているから」とか「サステイナブルだから」という理屈抜きにしても、使いやすく良質で飽きが来ず、買いやすい価格の商品が揃っています。シンプルなデザインはすぐに日常に馴染み、どこか「感じ」が良く、大切に使う気持ちを芽生えさせてくれます。
無印良品が目指す「感じ良いくらしと社会」をつくっていくためには、それがそのような社会なのかという共通のイメージを、作り手や売り手だけでなく、買い手も持てるかどうかが重要だと考えます。商品を手に取った時にそれがどのように生まれたものなのか、環境に配慮されているかに思いを巡らせ、多くの人がサステイナブルな観点で物を選ぶことができれば、持続可能な未来が見えてくるのではないでしょうか。