フードロス削減が世界的な課題となる中、日本の食品産業における循環型社会の形成が求められます。今回は、農林水産省大臣官房新事業・食品産業部が主催する「食品リサイクルループ制度」について解説します。
日本のフードロスの現状
フードロスは国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界では毎年約13億トンの食料が廃棄されています。これは、全食料生産量の約3分の1に相当します。
日本はフードロスの多い国で、年間約472万トンを廃棄しています。食品業界から主に排出されるイメージですが、日本の特徴は事業系と家庭系がちょうど半々であるということです。つまり家庭の食品ごみが非常に多いのです。

これは家庭からの食品廃棄量だけを見た世界ワーストランキングです、日本は14位に位置しており、ワースト10からは外れていますが、1人当たりの総量で見ると64キロとなり、トップクラスなのです。

家庭での廃棄が日本のフードロスの課題であることがわかりますが、それについては別の機会に取りあげ、ここでは事業用の食品廃棄物にフォーカスした「食品リサイクル法」について紹介したいと思います。
食品産業における食品リサイクルの現状
2020年度の統計によると、食品産業全体で年間1,624万トンの食品廃棄物等が発生しています。その内訳と割合は以下の通りです。

食品廃棄物の再生利用の方法としては、肥料化(農業)が最も多く、次いで飼料化(畜産業)となっており、その2つで8割を占めます。特に食品製造業では、廃棄物の性質が安定しているため、飼料への再生利用が多く行われています。
食品リサイクル法の位置づけと概要
食品リサイクル法は、循環型社会形成推進基本法の下位法として位置づけられています。2019年7月に公表されたこの法律は、食品の売れ残りや食べ残し、製造過程で生じた残さなどの食品廃棄物等について、発生抑制と再生利用を促進することを目的としています。
食品リサイクル法では、以下の優先順位で取り組むことが求められています。

食品リサイクルループ
食品リサイクルループとは、食品関連事業者から発生する廃棄物から肥料・飼料を生産し、それを用いて生産した農産物等を食品関連事業者が取り扱う循環の仕組みです。この仕組みを推進するため、再生利用事業計画認定制度が設けられています。認定を受けることで、以下のようなメリットがあります。
▶食品関連事業者:CSR活動として認知される、廃棄物処理法の特例を利用できる
▶リサイクル業者:特定肥飼料等の需要先を確保できる
▶農林漁業者:リサイクル飼料・肥料を利用して生産した農畜水産物の販売先を確保できる
食品リサイクルループ企業活用事例
▶肥料化事例:ロイヤルグループ(ロイヤルホスト)による肥料化の取り組み:店舗から排出された食品循環資源を肥料化し、その肥料で生産されたたまねぎを店舗で使用する循環を実現しています。
▶飼料化事例:スターバックスコーヒージャパンによる肥料化の取り組み:コーヒー豆粕を飼料化し、その飼料で育てられた乳牛の牛乳を飲料商品の原料として利用しています。
▶消化液事例:新潟県村上市による液肥活用の取り組み:瀬波温泉での食品残渣や調理残渣をメタン発酵し、液肥を農産物に活用しています。
まとめ
食品リサイクル・ループ制度は、食品産業における循環型社会の形成に向けた重要な取り組みです。発生抑制から再生利用まで、様々な段階で目標が設定され、具体的な施策が実施されています。今後は、さらなる食品ロスの削減と、効率的な食品リサイクルの推進が期待されます。
参考資料:農林水産省「食品リサイクルループ制度について」
https://www.maff.go.jp/kanto/kikaku/midori_syokuryou/attach/pdf/setsumeikai_annai-20_1.pdf