国内の不用品を買い取り循環させる 株式会社浜屋 インタビュー②
前編では、リユース業界の現実と法律のギャップに触れ、現場に携わる人々がその狭間でどう立ち向かうのかという今の姿について紹介しました。
後編である今回も引き続き株式会社浜屋 経営企画部 部長 小林一平さんへインタビューをします。
今回は、浜屋のリユース・リサイクルに対する姿勢と、循環型社会へと向かう未来のリユースのビジョンについて伺ってみました。
※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。
浜屋の提供する価値とは
-海外での売れ筋は家電ですか。
そうですね、家電全般です。雑貨系にも人気の品はありますが、単価で言えば家電です。やはり電化製品といえば未だに日本製の人気が高いというのは、日々商売していて感じます。
少し前はMADE IN JAPANが人気だったんですけど、今はもうSONYやパナソニックといった企業の製品も大体MADE IN CHINAじゃないですか。でも、同じMADE IN CHINAでも日本の製品と他国の製品で品質が違うみたいで「日本から来た中古」自体に価値があると認知されてます。
「読めないけど日本語が書いてあるから日本で使われてたやつだ!」ってだけで人気がある。いわゆる「USED IN JAPAN」ですね。
もちろん日本の製品とはいえピンキリなので壊れたりするんですけど、日本の製品の特徴として壊れても簡単に直せるらしく、そこが支持されてるようです。
-コンテナ単位で輸出してますが、個々の商品あたりで金額を算出してるんですか?
家電製品は1個いくらで計算しています。雑貨類はキロいくらって感じで交渉してます。それらを積み重ねて計算してコンテナ1本の金額が算出されます。
コンテナにみっちり商品を詰めないと積載効率が悪いし、輸送運賃はバイヤーが負担しますので少しでも多く詰めないとバイヤーが損しちゃいます。あとは輸送時に揺れて破損しないようにとか、荷崩れしないように、ぎっちり詰めた方が得なんです。
その点、我々は30年やってきているノウハウがあるので、テトリスみたいな感じできっちり重ねて隙間を埋める技術を喜んで頂いてます。
-仕入れについてですが、業者間の仕入れ競争は激しい状況なんですか。
激しいですね。お客様からすれば1円でも高く買ってくれるところに持って行きたいのが心情ですので、我々としてはまず高く売る努力をして、適正な利幅をしっかり確保した上で、限界ギリギリの高値で買い取るってことを日々やっています。
逆に、利益を削ってまで価格競争に参加するというのは絶対やりません。確実に利益の幅はしっかり確保する。これで他社に負けているのであれば、それはもうしょうがないというスタンスでやっています。
-お得意様からの信用を得るためにしている事はありますか。
なるべく高く売れるものを高く買うのが浜屋の方針ですが、実際はカテゴリごとにある程度決まった価格で買い取っています。ですが、中には特殊なスペックのパソコンがあったりして、既存のカテゴリで算出すると○円だけど、マイナーなメーカーだったり仕様が違うってときに、試しにヤフオクとかに出品してみるんです。
もし予想外の高値がついた時、我々は買取品の記録をつけているので、次にそのお客さんが来てくれた時にちゃんと余剰分のキャッシュバックするっていう仕組みを作っています。
うちはリピーターのお客様がほとんど業者さんなので、お客様を騙して安く買うみたいな商売は決してしません。その結果「浜屋は高く売れたらちゃんと高く買ってくれるんだ」っていう信用を頂けていると思っています。
-なるほど、中々できることじゃないですね。
逆に、安値で買ったけど高く売れたぜラッキーみたいなこともないんですけどね(笑)
他所と同じように安く買って高く売る、その分広告費をかけて広く集めるみたいなギリギリの競争をしない。うちは全く広告宣伝はしないので、お客様の口コミが大切です。きちんとキャッシュバックして、もちろん適正な利益を得てますし、その結果たくさんモノが集まってきますので、広告費をかけて多く集める業者さんとは方針そのものが違うと胸を張って言えます。
近未来のリユースと、遠い未来のリユースの姿とは
-今後の日本のリユース市場がどうなるか、またそれに対してどう対応するか聞かせて下さい。
まず今のリユース市場全体で言えば、間もなく3兆円の市場規模になろうとしていて、それを牽引しているのがフリマアプリです。結果的にリユース業界全体に刺激を与えてまだまだ伸びています。メルカリの調査によると、家庭に眠っている埋蔵資産・滞留資産は約44兆円と言われていますし、まだまだ伸びていくのではないかなとは思っています。
ただしもっと長期で見ると、リユース品というのは新品市場から何年か遅れて発生するので、例えばバブル期に出回った高級なお酒や貴金属が今になって出てきたりするんですけど、バブル以降は人口が減って日本経済が低成長で来ているので、その中でリユース業界だけが伸びていくってことはまずあり得ません。
メルカリの登場で伸びたように、埋蔵資産をもっと堀り起こす何か画期的なサービスなどが今後生まれれば多少は変わりますが、基本的には停滞あるいは沈んでいくんじゃないかなと私は見てはいます。
-国内がダメなら、日本の中古品を海外に売るビジネスはどうでしょう。
はい。そしてこれはもっと未来の話ですが、そもそもリユース事業というのは、「モノを沢山作って豊かさを享受する社会のなかで溢れくるモノ」で商売しているという、あえて言うと社会の負の側面の下でやってるビジネスなんですが、「たくさんモノを作るのって正義なの?」っていうサーキュラーエコノミーの時代がきちゃうと、リユース業界っていらなくなるかも知れませんよね。
だから、もし大量生産・大量消費社会から循環型社会に移行するなら、その橋渡しとしてリユース業界が活躍すると思うんですけど、本当に循環型社会が実現した場合は「リユースって何?」みたいになってくる可能性すらある。
もちろんリユース市場がゼロにはならず、特にニッチな分野に関しては残り続けると思うんですが、大きな産業としてのリユースっていうのは長期的に見たら、いずれは飯を食っていけなくなるだろうなって考えたりします。
とはいえ、まだまだ無駄に捨てられてるモノがあるので、当面はとにかく廃棄物にしないで今あるものをちゃんと活かすために、出来ることをしようという姿勢です。
-いまリユース業界が好調ですし、SDGsでもリユースは重要だと位置付けられているので未来は明るいのかなと思っていたのですが、かなりシビアに先を見ておられるんですね。
個人的な見解ではありますけどね(笑)
この先5~10年くらいは間違いなく好調ですし、時代の後押しもあると思います。ただ、そうじゃなくなる時代、モノが溢れなくなる可能性もあるかなっていう、意見です。
-リユース品の海外輸出は途上国へのごみの押し付け問題、いらないものを海外に出しちゃえって問題に繋がるように思いますが、そうした批判に対してどうお考えですか。
おっしゃる通り、まれに我々がそこに加担してるんじゃないかと指摘されたりします。例えば実際に寄せられる批判ですけど、国内だと売れないから廃棄物にしちゃうようなモノを途上国に送ったら、送った先で廃棄物になるじゃないか。それは押し付けなんじゃないのかって言われることがよくあるんです。
ですが、それは完全に的外れだと思ってます。本当に捨てるしかないごみを押し付けたら問題ですけど、中古品を何年か使った後ごみになる事に対して「結果的にごみを押し付けている」っていうのは筋違いです。いずれごみになるのは新品も同じじゃないですか。
それを突き詰めると、途上国の人たちは家電を使うなって言うのと同義です。仮に日本からの販売を止めれば彼らは別の国から買いますし、それらはいつかごみになる。だから、ごみ問題に対して一部分だけを切り取って見るのは違うと思います。
ただし、現地でのごみ問題に対して無責任でいいとは思ってません。理想を言えば自国で適正に処理されるべきだとは思っていますので、電子基板を世界中から買い取って日本で金属リサイクルしているのは、そういう意味合いもあります。
現地で不法に焼却して金属を取り出すのでなく、日本に持ち込んで適切に精錬すれば環境負荷の軽減になりますし、有毒ガスによる人体への問題もなくなりますから。
都市鉱山リサイクルのポテンシャル
-都市鉱山リサイクルにポテンシャルを感じているんですね。
はい。リユース事業・ベースメタルリサイクル・都市鉱山リサイクル。この3本柱で我々の事業が成り立ってるんですけども、当面は都市鉱山リサイクルを伸ばしていきます。
都市鉱山リサイクルだけで飯を食っていける規模に育てるのが目標で、粗利益で言うと今期で8億円くらいの見込みですが、更に3倍以上にしていきます。そのためには海外からの電子基板の仕入れルートを拡張するのと、日本もまだまだ開拓できていないので、そこに力を注いでいます。
-その都市鉱山リサイクルについて詳しくお願いします。世界中から電子基板を買い集めて日本に集めていると聞きました。
そうですね。今年の5月に基板リサイクル用の新工場を国内に建設して、主にブラジルの現地法人から輸入した基板を破砕加工しています。ブラジルには日本から出向した社員が現地の代表を務めており、彼が中心となって基板仕入拡大を強化しています。
ブラジルからの輸入がメインですけれども、前はフィリピンでも買い取りをしてたり、ナイジェリアでも少しやってみたり、今はアジアでパートナーを探したりしています。
ただ、ナイジェリアで調査をしたところ、今は中国人がすごい高値で基板を買い漁っているらしく、全然太刀打ちできませんでした。円安である事を差し引いても勝負できないという状況らしく、都市鉱山を巡って世界中で激しい争奪戦が始まっています。
-浜屋さんの工場に運ばれた電子基板はどうなるんですか。
基盤の状態で運ばれてきたものは破砕機にかけ、金属メーカーさんが扱いやすい形にして出荷しています。その先は、金銀パラジウムなどの希少金属となってまた製品となり循環します。
-もう一方のベースメタルリサイクル事業についてですが、これは集めた中でリユースできない商品を金属原料としてリサイクルしているんですか。
必ずしもそうじゃなく、リサイクル前提で持ち込まれるものもあります。例えば、建物の解体業者とか電気工事屋さんが鉄くず・銅線などのベースメタルを持ち込まれる場合もあります。
解体の例で言えば、ゲーム機ですかね。ゲーム機そのものとして需要があるものはリユース買取・販売しているんですが、レトロかつ人気がない機種に関しては、金属スクラップとして買い取ってプラスチック、基板、それ以外に解体するケースがあります。
うちの場合、弊社主体で立ち上げたNPO法人があり、障がい者就労支援施設の職業訓練の一環を兼ねて解体しています。そこで解体・仕分け・分別をして、それぞれ基板やプラなど品目ごとの得意な業者さんに卸していく形になってます。
-障がい者雇用施設も絡めているのですね。以前の取材先で、難民を雇用して電子機器を解体・リサイクルして販売している会社があります。自治体でも電子機器の解体を障がい者に任せている清掃工場がありました
電子機器の場合、リサイクルには必ず解体という作業が必要で、それはどうしても手作業になってしまいます。根気のいる作業ではありますが、障がい者の方々はとても丁寧にやってくれるので、不可欠な要員だと思っています。
そういった雇用面でも、リユース・リサイクルの分野が社会に貢献できる余地はまだまだあるのかなと思っています。
-ありがとうございました。
取材日:2022/09/13
株式会社浜屋
https://www.hamaya-corp.co.jp/