国内の不用品を買い取り循環させる 株式会社浜屋 インタビュー①
メルカリやジモティーなどのマッチングサービスの登場や、コロナ禍による巣ごもり需要によって、日本のリユース市場は拡大の傾向にあります。また、サーキュラーエコノミーの観点からもモノを長く使うリユースが注目されており、欧州などを中心に法制度にも変化を与えてきています。
一方で、昔からリユースを生業としてきた中古品市場、いわゆる「リサイクルショップ」と呼ばれる業態は、どんな事をして、どう変化していくのでしょうか。
今回は、30年以上にわたって国内のリユース品を買い取り海外へ輸出してきたリユース大手、株式会社浜屋へのインタビューを通して、リユース業界の実態と未来について、前後編で考えていきます。
前編である今回は、株式会社浜屋の事業内容と、現場から見た法律と現実の差についてを伺いました。
※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。
なんでも扱う中古屋さん 浜屋の事業
-浜屋さんの事業内容をご紹介ください。
浜屋はご家庭や会社で不要になった家電・生活雑貨・キッチン用品などなど、いわゆる「不要品」になってしまったものを買い取らせて頂いています。
色んな会社の片付けをしている事業者さんや、行政の経由、あとは個人事業主様など様々なルートからリユース品を買い取らせて頂き、それをコンテナに積み込んで、東南アジアや中東・アフリカ・中南米といった発展途上国に輸出して現地民に使っていただくのが浜屋の祖業であるリユース事業です。
付随する形で、金属のリサイクルもしています。ベースメタル(鉄や銅など取扱量の多い金属)リサイクルに加えて、最近特に力を入れてるのが「都市鉱山リサイクル」です。
パソコンや携帯はもちろん、最近の電化製品の多くには電子基板が入ってます。それを集めて破砕して国内の精錬メーカーさんに販売するビジネスで、主にブラジルに基板リサイクル拠点を作って集約、日本へ輸入してリサイクルしています。
-国内と海外の販売比率はどんな感じですか。
リユース事業はほぼ海外輸出、リサイクル事業はほぼ国内販売という形です。販売の比率で言えば半々くらいだったんですが、ここ2年ほど金属の価格がすごく高くなってますので、今はもう6〜7割近くが金属リサイクルの売上かもしれないです。
ただし利益率はリユースの方がいいので、粗利益ベースだとまだリユースの方が比重が大きいですね。
-リユース品で取り扱う商品はなにが多いですか。
大きなくくりで言うと家電製品が最も多いです。冷蔵庫や洗濯機などの白物家電、テレビ、パソコンとオーディオ機器、あとはミシンとかも含まれます。とにかく色んな種類がありますから、「家電」という括りは非常に広いんです。
それ以外はいわゆる「その他雑貨」です。食器・台所用品・インテリア用品とか家具もありますし、子供のおもちゃとか、とにかく多種多様に「なんか使えるな」ってものは大体買い取らせて頂いています。
輸出における法律と現場のギャップ
-買い取った品はその後どう流れていくんですか。
90%以上が海外に輸出されます。具体的な流れは、まず買取品を弊社の倉庫で分類ごとに仕分けして一時的に保管します。
海外のバイヤーと交渉して、これは売るって決まった品を次々とコンテナに積み込んで、そのまま現地まで輸出していきます。基本的には保管したそばからどんどん売れていきますね。
-パソコンの場合だと動く/動かないとか、故障の程度があると思うんですけど、そのあたりはどうしてますか?
弊社は基本的には動作確認せずにそのまま送っています。というのも、お客様である海外のバイヤーがそれを求めていないし、確認しなくていいから売ってくれという感じなんです。多少の故障であれば現地でちょっと直せば動くようになるらしいので。我々も1つ1つ動作確認するのはコストが重いため、そのまま送るようにしています。
実は弊社はかなり特殊なケースでして、どういう事かというと数年前から「バーゼル法」っていう、バーゼル条約(有害廃棄物の国際的な規制に関する国際条約)の絡みの中でできた日本の法律があります。バーゼル法の適切な運用を目的として、中古品判断基準があり、中古品の正常作動性確認がありまして、要はちゃんと動くかどうかチェックしてから送ってくださいっていう内容です。
ですが先述の通り、それは買い手も売り手も求めてないので、法律適用前から環境省などと話し合いをして、代替手段をとることで正常動作性確認の省略を暫定的に定められています。代替手段っていうのは簡単に言うとトレーサビリティを確保するって事ですね。
しっかりと契約を結ぶこと、輸送した品を記録すること、現地でどう扱われるか調査して定期報告すること。あとは万が一何をしても動作しない不良品を送ってしまった際には返品できる取り決めを代替手段として、輸出していいよという事になっています。
バーゼル法が想定しているのはいわゆる「途上国へのごみの押し付け問題」で、ごみ混じりの家電が現地で捨てられたり、すぐにバラして金属を取り出して残りは投棄するような事を防ぐのが目的です。
基本的には経済合理性の観点から、そういった不法行為をせずちゃんと製品を売らないと損するだけなんですが、万が一そういう不法投棄みたいな事がないかをきちんとチェックしています。
回収業者が直面する法律と現場のギャップ
-どういった方が買い取りに持ち込まれるんですか。
個人事業主が多いです。具体的には片付け代行業とか、自身で小規模なリサイクルショップをしている方々、そしてその両方をやってる方が多いと思います。
あと最近増えているのが、遺品整理・生前整理というお仕事の方です。一軒家を丸ごと片付けたり、引っ越しの時に出た家財道具を丸ごと請け負う業者さんたちからの持ち込みとかですね。
我々の扱う商材は一般家財が多いので、そういう片付け関係で出てきたモノが多いです。
-それは、いわゆる不用品回収業者とは違うんですか。
不用品回収の業者さんもいますが、色々と業務内容も変わってきています。それこそ20年ぐらい前は軽トラにスピーカーをつけて「不用品を無料で回収します」って人たちが多かったんですが、皆さん多分そういう回収業者さんを街中でも見なくなってきたんじゃないでしょうか。
-確かに。ああいう業者は法的にグレーだと思うんですが、実際どうなんですか。
まず「無料回収を謳いつつ10万円請求された」みたいな話はグレーというか真っ黒なので、そういう業者は排除されてしかるべきだと思います。
一方、グレーなのはいわゆる廃棄物処理法に絡む領域で、法に詳しくない個人事業主などが知らないうちに法に抵触してしまうパターンです。
例えば、廃棄物処理の許可のない業者が「ウチで処分するので、処分費を払って下さい」とするのは法律違反でNGなんですが、実際の片付け仕事では、敷地内に片付けたモノを並べて「こっちはリユース品として回収できます。こっちは廃棄物なのでウチでは扱えませんから、袋にまとめときます」というケースがあります。
これって立派な役務の提供なので、その対価をもらうのは普通に考えて悪いことじゃないですよね。そこで回収したリユース品・リサイクル品の利益を片付け費用と相殺する形だってあるかもしれないし、実態としてリユース・リサイクルがきちんと法律の範囲内でされてるなら問題ないというのが弊社の認識です。
実際、我々のお客様の中でも法律の知識がなかったせいで悪意なく違反してしまったという事がありましたので、我々としても違法な処分費を取るのはやめて下さいと業者さんへお願いしたりしてます。
加えて、不用品回収業者・片付け業者、特に個人事業主で小さくやられてる方々のための団体の代表理事をしていまして、正しい知識を身に着けてもらうセミナーなんかも定期開催しています。
-その業界団体は教育というか、啓蒙活動をしているんですか。
はい。あとは、一時期は行政から不用品回収業者はみんな違法っていうレッテル貼られてた時期もあったんですけど、それは違うだろうと行政と話し合ったりして公示された文言を直して頂いたりもあります。
個人事業主がみんな違法業者っていうレッテルを貼られてしまうのは心苦しいなと思っていますし、もちろん業界内で違反をなくすことも大事なので、内外ともに正しい知識の普及に努めています。
-古紙業界も似た所があって、古紙の市況が悪い際は有価買取ではなく回収費用を頂いたりしていて、法的に特例があるんですが厳密に言うとグレーな領域があります。
法律だけでは実情に即していない部分があるので、実務をしている我々がしっかりと見解を持って総合判断を迫られるケースは多いですよね。
法律と現場のギャップを埋めるためには
-リユース市場が広がっていくのは社会課題の解決に繋がると思いますが、現場と法律との間でギャップがありますね。その中で、浜屋としてどう社会にコミットしていきますか。
自社だけで出来る事は限られていますので、色々なパートナーさんと提携・連携しながら、どうやったら社会課題の解決と利益の両立ができるかを模索しているところです。
もっと長期スパンの話で言うと、私はサーキュラーエコノミーに関心があるので、循環型社会の実現に向けて、リユースに携わる我々がどういう価値を提供できるかを考えていきたいので、コミュニティ等に参加して勉強しております。
-浜屋さんと親交の深い徳田さんとの対談でも、リユースはSDGsと隣合わせなのに、業界が全然そこに気づいてないから、リユースの存在価値をもう1回考え直す必要があるという話がありました。
そうですね。今ようやくリユース業界の中でもそういう機運が起こり、もしかして自分たちは社会の流れのど真ん中にいるんじゃないかって気付きが、この1年ぐらいでようやく芽生えてきたように感じます。
-日本は欧米と違って静脈産業に携わる会社が小規模なものが多いからこそ、特に。
はい。必ずしも欧米のようにメガリサイクルコーポになる必要はないと思うんですけど、連携っていうのは絶対に必要ですよね。
そのあたりは、一般廃棄物/産業廃棄物とか、個別リサイクル法/リサイクル事業財政法があって、家電リサイクル法があって…みたいな法律の枠組みが妨げになっているかもしれませんね。家電リサイクル法と自動車リサイクル法で領域が違うけど、その結果出てくる鉄スクラップは全部一緒じゃないですか。
法律の壁がある限りは全体最適になっていかないし、むしろ部分最適にもなっていないのが、事業者として歯がゆいですね。
-でも多分、行政は変わらないと思うんです。そういう動きもないですし。
それは私も薄々感じてます(笑)
行政の担当者の話を聞いても「分かっちゃいるけど…」みたいな、これは相当難しいなって思います。
だからこそ、現場に立つ事業者がギリギリのラインで新しい事例を作っちゃって「これは、こういうもんだから」って事実ベースで進めていくべきなんでしょうね。
事実を押さえて、世論が追い風になって「それは大問題じゃないか、変えるべきだ」ってなって初めて行政が変わるっていうケースが日本では有効な気がします。
-ありがとうございました。
リユース市場の現場では、実態と法律の狭間でなんとか折り合いをつけていました。では、浜屋さんの考えるリユース・リサイクル業界の未来とはどのようなものなのか。後編ではこれについて触れていきます。
取材日:2022/09/13
株式会社浜屋
https://www.hamaya-corp.co.jp/