欧州ではEU規則により、あらゆる種類の電池・バッテリーは回収・リサイクルされる必要があります。電池・バッテリーの分別回収を推進するために、国内の家庭で出る乾電池からEV車のバッテリーまであらゆるバッテリーを回収・選別しているのが、ベルギーに拠点を置く「Bebat(ビーバット)社」です。
そこで今回は、独自の回収システムを用いてベルギーを回収率欧州ナンバーワンに導いたBebat社CEOのPeter Coonen氏と、マーケティング・オペレーションマネージャーのNele Peeters氏へのインタビューを、2回に分けてお届けします。
EUバッテリーリサイクルの厳しい規制から生まれた企業
―Bebatの設立背景について教えてください。
Bebatは、EUの新規制に適合するため、DuracellやVarta、Panasonicなどの企業連合によって1995年に設立しました。バッテリーの製造・販売企業は、これまでの製造・販売における基本的な経済活動のみならず、使用済みバッテリーの回収にも責任が伴うことが規則に定められたことが背景にあります。
規制には回収率の目標値が設定されており、過去3年間の製造量に対して45%回収することを求められています。今日ではバッテリーの製造・販売業者だけでなく、自動車製造企業や蓄電池製造企業、小売業者も加わり、4,800社を超える賛同企業がいます。具体的には、TOYOTA、Panasonic、DAIKIN、 Hewlett-Packard(HP)、Amazon、スーパーなど、ベルギー国内で企業活動を行う企業です。
―Bebatはどのような活動を行っていますか?
私たちは、ベルギーの基準に準拠し、バッテリーの回収とその選別をメインに行っており、より多く回収し、より質の高いリサイクルを行うことをモットーにしています。
また企業に代わり、廃棄計画など政府関係機関に提出する報告書も作成しています。規制自体はEUで設けられていますが、廃棄物の取り扱いは各国に委ねられており、国境を超えることはありません。
ただし、ベルギーでは3つの自治政府(フランデレン地域、ブリュッセル地域、ワロン地域)があり、それぞれに対して報告書を提出しなければなりません。その業務の複雑さがゆえに、Bebatを頼りにしていただいています。
―バッテリーの回収・選別をされているとのことですが、どの種類が対象となりますか?
回収対象のバッテリーはあらゆる種類が対象です。例えば、家庭用のアルカリ電池、電動自転車のEVバッテリー、電化製品のバッテリーのみならず、800kgを超える産業用バッテリーなども対象です。
各種バッテリーでリサイクル方法が異なるため、今では欧州各地の協力業者と連携していますが、2016年頃に回収活動を始めた当初は、家庭用アルカリ電池の回収のみを行っていました。
高い回収率を実現する自動センサー搭載回収ボックス
―ベルギーは欧州一の回収率だとお聞きしましたが、バッテリーをどのように回収しているのですか?
弊社の回収率が高い要因は、利便性・わかりやすさを追求した回収の仕組みにあります。欧州連合の目標を達成するために、私たちは大規模な回収ネットワークを構築しました。 ベルギー全国に25,000か所以上の回収ポイントがあり、回収ボックスを設置しています。
小売店のみならず、教育機関や自治体の廃棄物センターにも回収ポイントを置き、500世帯に対し回収ポイントが1か所あるという、欧州で最も高密度の回収ネットワークが構築されています。
―回収ボックスにも費用が発生すると思いますが、どのように運用されていますか?
回収ボックス自体は小売店や企業、教育機関、自治体などへ無償で提供しており、費用はバッテリー製造・販売企業に負担していただいています。
費用の支払いに関しては、製造会社が販売する際に将来の回収・リサイクルコストとして生産量に対する一定額を支払っており、それらから賄っています。
―回収ボックスの種類や仕組みについて教えてください。
回収ボックスは教育機関用、小売店用、そして廃棄物センター・産業用の計3種類ありますが、基本機能はすべて同じです。
ボックス内の充填度を自動測定できるセンサーとアラーム機能を備え、付属のモバイルユニットを通し、情報が自動的に情報集約センターに送信されます。回収ボックスがほぼ満杯になったら、自動的に回収業者にも情報が行き、設置場所の管理者からの連絡なしに回収できる仕組みになっています。
この仕組みにより、わざわざ人が充填度合いを確認する手間が省け、回収コストを削減できます。
我々としても情報が自動で集まるので、各回収ポイントの充填度の速さを予測でき、効率的に対応できます。
また、発火対策としてボックス内の温度を常に観測する機能を持ち、一定温度を超えたらアラームが鳴り、情報集約センターにも自動的に情報が届く仕組みになっています。
―回収ボックスの基本的な仕組みは理解しました。それぞれ特徴的な部分はありますか?
小売店への設置を中心とした一般施設用回収ボックスは金属製ドラム缶で、それ自体リサイクルも可能です。プラスチック製だと、発火した場合溶けてしまい安全性に問題があります。
教育機関向けの回収ボックスは小型で、家庭用乾電池などの小型バッテリーを対象に回収しています。
廃棄物センター・産業用ボックスは、大型で非常に頑丈なため輸送にも使用でき、現在、カナダやオーストラリア、フィンランド、オランダやスウェーデンなどでも利用されています。
ベーシックな機能は小型・中型の回収ボックスと同じですが、この機能が非常にユニークで、特許も取得済みです。Bebat内の別ブランドであるbebatPROが開発・販売しています。
リチウムイオンバッテリーを安全に回収・輸送するために開発されたこれらのボックスは、耐炎性は9時間あるため、使用済みバッテリーが発火・爆発した場合でも、煙のみがボックス外に出て、炎自体はボックス内に留まります。そのため、消防車が到着するまで十分な時間を確保できます。
家庭で発生する火災の原因の一つに、電気バイクのバッテリーからの発火があり、昨今、消防署ともテストを行っています。具体的には、破損したバッテリーを我々の大型回収ボックスに入れ、安全に搬送することを行っています。また、電気バイクなどの製造業者へも回収ボックスの販売を行っており、バッテリー交換などの際に利用されています。
学校や家庭に紙製の回収ボックスを配布
―高い回収率を達成するために、そのほかにどのようなことに取り組んでいるのですか?
昨年度はバッテリー回収率60.3%を達成しました。回収率を上げるために、先に述べたアクセスしやすい場所に回収ボックスを設置することも必要ですが、人々に対する啓蒙活動も大切です。
―ベルギーの人々のバッテリーリサイクルへの関心はいかがですか?
ベルギー市場でのBebatの認知度は25〜30%あります。今日では、76%のベルギー人はBebatシステムに参加しており、16%のベルギー人は使用済みバッテリーの分別はするが、回収ボックスに返却していないというデータがあります。8%のベルギー人は環境配慮をしていない人々ということになり、プラスチックのリサイクルなどにも興味を示してない人々の割合と同様の数値となっています。
あらゆる手段を使って啓蒙活動を行っているものの、まだ一般的に使用済みバッテリーに関するリスクが理解されていないため、私たちは技術アドバイザーのチームを設けています。
回収ポイントの窓口となるのが彼らで、時にアドバイスを行い、安全にバッテリーを回収できるようにしています。
―どれくらいのバッテリーが家庭から廃棄されるのでしょうか?
ベルギーの一般家庭では1世帯あたり平均131個のバッテリーがあり、うち30個は使用済みバッテリーです。消費者は年間2〜3回、22個のバッテリーをごみ回収に出します。一般家庭ごみ100kgのうち、1個のバッテリーがごみに出される計算です。
欧州連合の目標値である45%という数値は、過去3年間の製造量に対する回収率を指します。
ただし、想像してわかる通りバッテリーの平均寿命は7〜8年ですし、家庭用PCやスマートフォンなどのバッテリーは3年以上使用され、新しい製品を購入したとしても古い製品の多くはすぐ廃棄・リサイクルせず、ある人は20年近く家庭で保管している場合もあります。
45%という目標値がいかに高い水準で、ほぼ不可能であることが理解できると思います。だからこそ、私たちは家庭内で利用されているバッテリーをターゲットに設定しています。
後編につづく
取材協力:Bebat社
https://www.bebat.be/en