まるで新品?のような中古ブティック
フィンランドでは「中古品を買う」という文化が根付いてますが、中でも衣料品のリサイクルは盛んに行われています。ファッションストリートを歩けば、新品ブティックに加えてリサイクル衣料店の数が多いことに気づきます。まるで新品を売るブティックと見分けがつかない外観の店もありますし、ショッピングセンターの最も良い場所に位置していたり、中古衣料店にカフェが併設されている店などは、日本ではあまり見かけない光景です。
不要になった服を集める仕組み
「仕組み化がうまい」と言われているフィンランド。日常生活の中で、誰でも手軽に不要になった衣料をリサイクルできる仕組みが確立しています。バス停の脇やスーパーマーケットの駐車場内などの身近な場所に衣類専用の回収箱が置かれているのです。
これは、フィンランドで全国展開する非営利のリサイクル衣料チェーン「UFF」の回収システムで、利用者は不要になった衣料、鞄、靴などを袋に入れ、最寄りの回収ボックスに入れて寄付をします。UFF(U-landshjälp från Folk until Folk i Finland sr) は、気候と世界の持続可能な開発のために活動する非営利財団で、中古衣料を集めて仕分けを行い、国内に24ある店舗で販売しています。首都圏(ヘルシンキ市、エスポー市)にはUFFの店舗が特に集中しています。
店舗によって品揃えは違いますが、ファッション街であるKampiの店では、カジュアルを中心に、メンズ・レディースを扱っていて、商品価格はワンピースで30ユーロ前後。最も価格が高いのは、人気国産ブランド「マリメッコ」のもので、特別コーナーがあり、価格もコットン製帽子が13ユーロ、デニムジャケットが60ユーロなど新品の1/3〜1/2ほど。客層は若い男女(年齢20代〜30代)で、女性が7〜8割、といった感じでした。
UFFは、2022年には約1,230万kgの古着を回収、これは国民1人当たり平均2.3kgに相当する量とのこと。販売によって集めた資金は、アンゴラ、インド、モザンビークなどでの開発プロジェクト支援に使用され、2022年の支援額は約210万ユーロ(約3億2000万円)。UFFは「リサイクルコットンTシャツ1枚で約2800リットルの水、7kgのCO2排出量、500gの農薬を節約できる」とうたっており、UFFで服を購入することで、「持続可能な開発、環境活動、雇用だけでなく、アフリカ、アジアでの世界的な開発活動もサポートすることができる」と消費者に訴えています。
中古衣料の個人販売の仕組み
寄付ではなく、古着を換金したい場合には、営利団体のリサイクル衣料ショップでオンライン展開する「Emmy(エミー)」がよく利用されています。エミーはCEのビジネスモデルの一つであるシェアリングエコノミーの事例として、CEの推進団体「SITRA」のホームページにも紹介されているスタートアップ企業です。CEOのPetra Luntialaは、エミーは6年間で、二酸化炭素排出量を664トン削減し、13億リットル以上のきれいな真水を節約することに貢献しています。この排出量は、約600人のフィンランド人が購入する消費財の年間二酸化炭素排出量に相当します」と語っています。
エミーは委託販売方式で、服を販売したいユーザーは不要の衣料を郵送またはデパート・ショッピングモール等に設置されている専用の回収ボックスに入れます。集めた衣料は検品され、オンラインショップに掲載されますが、その際ユーザーは1ユーロの掲載料を支払います。掲載された商品が売れれば、販売額に応じて商品代が支払われます。
料率は販売額に応じて変わりますが、300ユーロの売上げで約75%が現金で支払われ、エミー内で使える商品券での支払いを選択すればさらにその20%が上乗せされるなど、販売者に十分な利益があることが人気の理由です。
ただし、どんな古着でも受け入れるわけではなく、ファストファッションの商品は扱わず、商品のクオリティを重視しています。SITRAによるインタビューで、Petra Luntialaはこのように語っています。
「ファストファッション、つまり、すぐに着古してしまうような手頃な価格の衣服は、当初からEmmyの選考から除外してきました。私たちは、長持ちし、再販価値のある商品を選びたいのです。サーキュラー・エコノミーと共に再販が一般的になれば、消費者は、長持ちし再販可能な服を作ることをメーカーに求めるようになると思います。」
Sitraホームページより
ちなみに、選考から除外された衣類に関しては、適正な場所に寄付し、役立てる仕組みとなっています。
環境へのインパクトの見える化も
フィンランドの中古衣料事情をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。フィンランドでは衣料品だけでなく、家具、日用品などでもリサイクルを行いやすい環境にあり、価格も安すぎず市場が成立しています。「古いものをリユースする」という文化は、サーキュラーエコノミーが採択される以前からのこの国の文化であることは明らかです。このようなリサイクル文化が基盤にあるため、フィンランドはサーキュラーエコノミーの政策との親和性が高い国であると言えるかもしれません。
また、中古に関わる事業者が、単に中古品を販売するだけでなく、CO2の削減実績や、持続可能性、CEへの貢献などの社会的意義を積極的に発信し、数値を見える化している点は、フィンランドに限らずサーキュラーエコノミーを掲げる国では常識となっています。このあたりの良い点は、日本でもどんどん真似していきたいところですね。