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住宅や施設などの空間を作る際、デザイナーにとって必ず必要となる建材サンプル。
メーカーに依頼してサンプルを取り寄せ、施主とともに検討した後は、不要になるためそのまま廃棄されてしまうのが一般的でした。床材、壁材、木材、タイルなど多岐に渡る品目のサンプルは、廃棄するだけでも膨大なコストがかかるため、インテリアデザイン会社にとってなんとかしたい悩みの種のひとつだったといいます。

Material Bank® Japanは、建材サンプルマーケットプレイスの運営をしている企業です。さらに、使い終わった建材サンプルを回収し、リユースに繋げるサーキュラーな取り組みもされていると聞き、Material Bank® Japan マーケティングマネージャーのウォン有実さんに詳しくお話を伺いました。

世界最大規模の建材サンプルマーケットプレイス日本版

―まずはサービス内容から教えてください。

インテリアデザインに関わる方々が、メーカー横断でさまざまな建材の情報にアクセスができ、サンプルの取り寄せまでをワンストップで行えるようにするサービスです。アメリカの建材サンプルマーケットプレイス「Material Bank」の日本版になります。とくに意識しているのは、再利用や循環といったキーワード。建材サンプルを捨てずに済むサービスを設計し、廃棄物として終わらせず循環させるプロセスを構築しました。

―この事業を始められた背景について教えてください。

建築デザイン会社がデザインを手がけるときには、床や壁、天井などさまざまな要素でひとつの空間を作っていきます。その際、施主やプロジェクトメンバーとイメージのすり合わせが必須なので、あらゆる建材サンプルを取り寄せることになります。
このときの建材サンプルを全て保管しておくと、オフィスを占拠してしまいます。1案件でもそれなりの量になるので、何百と案件を取り扱っているデザイン会社だと本当に大量になってしまいます。
さらに、検討が終わればサンプルの役目も終わるので、廃棄しなければなりません。年末などにまとめて処分する場合、運搬に大きなトラックが何台も必要になるほど廃棄物が出る上、処分料も莫大になります。

―あらゆる面で無駄なコストが発生してしまっているということなんですね。

はい。デザイン会社にとっても頭の痛い問題ですし、メーカーも、捨てられるとわかりながら複数のサンプルを送るので、誰にとってもうれしくない流れになってしまっています。

―メーカー側の返品対応はあるのでしょうか。

返品を受け付けているメーカー様はたくさんいらっしゃるのですが、再利用に回されるということはほとんど聞いたことがなく、結局はメーカーさん側での廃棄処分になっているようです。

さまざまなサンプルを一度で取り寄せられる利便性

―そんな中で、御社が行っているサービスが建材サンプルにおける課題解決になっているわけですね。具体的に教えてください。

私たちのサステナブルな取り組みは、大きく分けて3つあります。
1つ目は、複数のメーカーさんの建材サンプルを1つの箱で送ること。10種類の建材サンプルを取り寄せたい場合、普通なら10社から10個の箱がバラバラに届きますが、私たちはメーカーの垣根を超えたサービスなので1つの箱に10種類のサンプルを入れてお届けでき、配送集約が可能です。
2つ目は、サンプル返却時に綺麗な状態であれば、棚に戻して再利用すること。返却時にも着払いでお送りいただけるので、デザイン会社の負担も軽減できます。
そして3つ目は、いろんなサステナブルな建材サンプルをまとめて探すことができること。床材、木材、モルタルなど、さまざまな素材がサステナブルの文脈で揃っているので、デザインをする上で自由に発想を広げていただくことができます。

―お取り扱いの素材は何点ぐらいあるのでしょうか。

現状は5万点ほどで、取引メーカーは大手メーカーから知る人ぞ知るコアなブランドまで、さまざまです。こんな素材を提供しているメーカーがあったんだ! といった発見もでき、いろいろな素材を見比べながら選んでいただけます。

本国のアメリカでは2人に1人のデザイナーさんが使っているようなスタンダードツールで、サンプルを探す際はまずMaterial Bank®で、という流れになっています。
Material Bank®の建材を使用することを提案の要件にしている施主さんもいらっしゃいます。

私たちのサービスは客観的に見てもすごく便利ではあるので、使っているうちにスタンダードになり、実はサステナブルなんだ!という流れになればいいなと思っています。

1万点以上のサステナブル素材を提供

ーサステナブル素材の取り扱いもとても多いと伺いました。

はい。サステナブル素材に関しては、弊社では国内の建材を中心に取り扱いが1万点を超えました。

ーサステナブル素材とは例えばどんなものがありますか。

いくつかご紹介します。

  • 日本エムテクス エッグタイル
    タイル1㎡あたり750個の卵殻を再利用した地球にやさしいタイル。吸放湿性に優れ、お部屋を快適な湿度を保つ力を持っています。
  • 古材日和 ジムフローリング
    バスケットボールやバレーボールなど屋内スポーツが行われた体育館や運動施設から回収されたメープルフローリングです。カラフルなコートラインが空間に散りばめられ、軽快で遊び心のある外観を作り出します。
  • NUNOUS SKINタイプ0.6mm
    捨てられる布数百枚と植物由来成分を含侵させて作った、美しいサステナブルな新素材。薄くスライスした素材は空間装飾や仕上材、表面材として彩りを加えます。※特許第6845551号
  • MAGO MAGO BLOCK_Ghana Plastic
    MAGO BLOCKは、ガーナの環境・貧困問題の解決に直結するプロダクトです。原料に使用されている破砕プラスチックは、ガーナのスラム街に投棄されたE-Waste(電子廃棄物)を、スラム街から雇用した方々に処理いただき生産されたものです。

ロボットの活用で作業の効率化、最短化を実現

―即日配送の対応は、どのように実現されているのでしょうか。

オーダーが入ったら、ピッキングロボット「LocusBots」がずらりと並ぶ建材の中からサンプルを探し出し、ピックアップする役割を果たしています。これによって人の移動距離を最小化し、時間も最短化しています。
採用した理由は2つあり、1つはメーカーや色で棚を整理整頓していないからです。
私たちのビジネスの性質上、売れ筋のものを集めたり前に出しておいたりする必要がないので、返却されたサンプルは仕分けせずにポンポンと棚に戻しているのですね。だからこそピッキングをするのがすごく大変なので、ロボットに任せています。

理由の2つめは、24時までの注文を翌日までに届けるサービスだからです。24時までの注文を1時間以内に箱に詰めて、25時や26時に出荷するということをしているので、梱包作業や出荷作業の迅速化・効率化が市場命題になっています。

同じようなピッキングロボットは他にもたくさんあると思うのですが、私たちが「LocusBots」を採用しているのは、彼らもサステナブルであるからです。「LocusBots」で使用されている部品で廃棄される部分は、10%もないと聞きました。いろいろな部品が循環される仕組みが採用されていて、そのビジョンが私たちともマッチすると考えています。

―サステナブルであることと利便性が両立されているところが素晴らしいですね。

ありがとうございます。誰かの我慢や犠牲の上に成り立っているものは、サステナブル(持続可能)ではないと我々は考えています。Material Bank® Japanを使っていると、自然と環境への負荷を軽減しているというように「使うだけでサステナブル」であるということが重要だと考えています。

―最後に、今後の展望について教えてください。

2023年より建築・空間設計各社が「Material Bank® Japan」の利用により達成した配送削減量や、それに伴うCO2削減量などを可視化したレポートを定期的に各社に送付し、各社の環境への取り組みに活用いただく「Carbon Impact Program」を開始しています。
現在は28社にご賛同いただいておりますが、今後は賛同企業を拡大し、より業界全体での環境へのインパクトを上げていくことが必要だと考えています。

取材協力:Material Bank® Japan
https://www.materialbank.jp/