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SDGsやESG意識の浸透で、多くの場面で、「廃棄から循環へ」そして「所有から利用へ」を実践する社会になりつつあります。その変化は、オフィスのあり方にも少なからず影響を及ぼしています。

そうした変化に対応し、オフィスの構築支援を通して企業のSDGsを後押ししようとするスタートアップ企業が現れました。日本初ともいわれる家具の本格的なサブスクリプションサービスを展開し、「捨てないオフィス」を増やしている「ソーシャルインテリア」(東京・渋谷区)の取り組みに注目してみましょう。

※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。

よいものが循環する社会に変える

「よいものが循環する社会に変える」をビジョンに掲げるソーシャルインテリアは、2016年、「サブスクライフ」の社名で創業、2018年に家具のサブスクリプションサービスを始めました。当初は自社製造の家具を販売していたので、ラインアップが少なく、ほとんど手応えを感じられなかったそうです。

2019年、家具を仕入れる形に切り替えると、その頃から始まったサブスクリプションブームの波に乗って、使いたいという会社が少しずつ登場。法人ユーザーは、従業員数百人規模の中堅企業を中心に1000社を超えています。メーカーの遊休在庫の流動化と廃棄削減、企業のSDGs対応の機運を受けて、家具の世界にも、「よいものが循環するサステナブルな仕組みづくり」が欲しいとの要望が高まってきました。

サブスクリプションにとどまらず、よいものと社会をつなぐ、家具の循環型社会づくりがミッションとなり、同社は2022年3月、現社名の「ソーシャルインテリア」に変更。サブスクリプションサービスに加えて、リユースとオフプライスのマーケットにも進出しています。

コロナ禍も追い風に

ソーシャルインテリアは、現在、法人向け事業、個人向け事業、オフプライスマーケットの3事業を展開しています。コロナ禍でテレワークが広がると、自宅のテレワーク環境を整えたい個人をはじめ、キャッシュフローを軽減したい大手企業や、縮小移転・フリーアドレス化に伴って必要なオフィス家具が変わった企業からの問い合わせが急増しました。

サブスクリプションサービスでは、短期から長期まで金利の負担なく新品を利用でき、気に入れば購入も可能。借り放題のプランはなく、選んだアイテムの毎月の利用料金を支払う仕組みです。最大で2年契約、定価を超えない課金体系も好評のようで、中小企業にとっては、初期費用を抑えられる魅力があるのです。

発注ごとにメーカーから家具を発送するので、倉庫や在庫を持つ必要はありません。大手家具メーカーでも、廃棄物を減らし良質のものを長く使ってもらいたいと考える企業が増えて、家具のラインアップがぐんと広がりました。3事業の中で最も好調なのは法人向け事業のようです。

10万点を超える多彩なアイテム

同社の特徴は、大手の家具ブランドをはじめバルミューダなど人気家電ブランドなど、あわせて600ブランド、10万点を超える多彩なアイテムを取りそろえているところです。家具のサブスクリプションサービスには、無印良品など大手も参入していますが、「大小あらゆる企業のニーズに応えられるのが強み」と町野健社長は胸を張ります。

近年は、海洋プラスチック再生樹脂を採用したオフィスチェアや、リサイクルダウンとカポックの繊維をブレンドした新素材インテリアなど、サステナブルなアイテムも増えつつあります。

資金調達の秘訣

サブスクリプションサービスを展開するには、まず一定量のアイテムを仕入れる必要があります。定価販売とは異なり、サブスクリプションで毎月回収できる金額は低いので、資金力が乏しい企業は参入が難しい。単価が高い家具となれば、なおさらです。

ソーシャルインテリアが他社を圧倒する10万点以上のアイテムをそろえることができたのは、資金調達の仕組みに秘訣がありそうです。

町野社長は、前職の事業立ち上げやマーケティング分野で実績があります。大学院修了後、日本ヒューレット・パッカードでコンサルタント、リサーチのマクロミルで海外事業を立ち上げ、2012年にはキュレーションマガジン「Antenna」を設立、3年間で500万ダウンロードを達成しました。

ソーシャルインテリアでは、注文が入った時に金融機関から費用を借り受ける独自の仕組みを構築できたことで、豊富な種類のアイテムをそろえることができたようです。2022年3月には、株主のサイバーエージェント・キャピタルやJICベンチャー・グロース・インベストメントなどを引受先として22億円の資金調達に成功しています。

内装から処分までワンストップで対応

サブスクリプションサービスといっても、同社では、内装から処分まで、プロのコーディネーターが再生材を積極的に利用した家具の提案や「捨てない」ことを目指したオフィスづくりに向けてアドバイスするなど、ワンストップで対応する点もポイントです。

ソーシャルインテリアが手掛けるサステナブルオフィスの取り組みをいくつかご紹介しましょう。

サブスクリプションサービスの導入による「循環型オフィス」づくりの試みは、2021年、岡山放送が「イオンモール岡山」に開設した報道制作拠点のスタジオや、東急電鉄が武蔵小杉駅などの旧定期券売り場跡地活用で新設したシェアオフィスなどから広がりました。ワークスペースのニーズが刻々と変化し、機能のアップデートが求められる一方で、オフィスリニューアル時に発生する廃棄物削減という課題に注目が集まりました。

家具の廃棄削減を目指す「サステナブルオフィス」の本格的な取り組みは、2022年3月、中央日本土地建物(東京・千代田区)とのコラボで始まりました。その第一弾が、時代の先駆けとなるイノベーターの交流や協業を支援するオープンイノベーションオフィス「SENQ(センク)京橋」(東京・中央区)。コワーキングスペースや吹き抜けのラウンジをリニューアル。銀座・築地に近い立地を活かし、料理関係者の利用を考えて共用のシェアキッチンも設置されました。

さらに、2023年6月、オフィス移転の流れやデザインで印象がどう変わるかを、訪れた人に実際に見て体験してもらおうと、東京・外苑前の自社の一部空間を「ライブ型オフィス」として開放しています(要予約)。ヴィンテージ家具、廃材を利用したサステナブルなデスク、天然木とレザーのチェア、グリーンやアートなど、トータルでのこだわりが伝わってきます。

収益を家具メーカーとシェア

ソーシャルインテリアでは、家具や家電がお得に買える販売サイト「サブスクライフ オフプライス」の企画・運営も行っています。

そのサイトでは、法人会員が使用していた家具を回収、最大80%オフで購入できます。出品できるのは国内外の有名メーカーに限られてはいますが、売れた場合、販売価格の1割程度がメーカーにも還元される仕組み。同社では、収益をシェアするサステナブルな「連帯貢献金制度」と呼んでおり、家具メーカーと共に、よいものを長く使う社会づくりを目指しています。圧倒的な数の品ぞろえと便利なワンストップ対応を武器に、「捨てないオフィス」は各地に広がっていきそうな予感がします。

参考文献
株式会社ソーシャルインテリア|よいものが、循環する社会へ (socialinterior.com)
サブスクリプションが流行した理由・背景を消費者意識から解説 (price-hack.com)
【月額定額サービス】対象商品・料金(家具・収納) | 無印良品 (muji.com)
ソーシャルインテリア、海洋プラスチック再生樹脂採用のオフィスチェア取扱開始〜ESG対応でサステナブルなオフィスづくりに取り組む法人向けに〜|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
ダウンつくりからサステナビリティを追求する「表参道布団店。」サブスクライフで取扱いを開始〜厳しい基準をクリアした、環境にもクリーンなダウンを使用〜|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
ソーシャルインテリア(旧社名subsclife)、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ他より約22億円の資金調達を実施|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
岡山放送、家具廃棄削減を目指したオフィスへ!家具のサブスクsubsclifeを採用|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
東急電鉄、旧定期券うりばのシェアオフィス化で、家具のサブスクsubsclifeを採用〜武蔵小杉・長津田駅の空きスペース活用をサブスクで、7/12より〜|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
subsclifeと中央日本土地建物、家具廃棄削減を目指す「サステナブルオフィス」の取組みを開始〜オープンイノベーションオフィス SENQ京橋より開始〜|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
家具のサブスクリプションサービスを提供する「ソーシャルインテリア」 新しいライブ型オフィスが外苑前に誕生|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)
subsclife SHARE、取扱商品点数が1万点に〜業界初!収益をメーカーとシェアする家具のオフプライスシェアマーケット〜|株式会社ソーシャルインテリアのプレスリリース (prtimes.jp)