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これまで50以上のリサイクル・資源循環の現場を取材してきました。そこではごみや資源を取り巻く社会問題の解決に真摯に向き合う人々の様子が伺えましたが、一方でその現場の力だけではどうにもならない無力感も取材を通して感じます。

その中で共通して叫ばれたのはごみ・資源についてより「知ってもらいたい」「誤解を解きたい」という声です。それは私達が本Webメディアを始めた理由でもあり、その現場の想いに共感し今も多くの取材を行っています。

今回取材を行った株式会社湘南貿易はそんな、プラスチック関連機器を主とした商社で、リサイクルの現場を支えているプラスチック再生機械も取り扱っています。同時に、地元神奈川県を中心に小型プラスチック再生機を活用した出張授業や企業とコラボレーションしたイベントの実施(「湘南エコプロジェクト」)を行っています。

静脈産業のリサイクラーを支えるプラスチック再生機市場について、「湘南エコプロジェクト」について、株式会社湘南貿易 代表取締役 橋本則夫さん、土井菜穂子さんにお話を伺いました。

※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。

日本のリサイクラーを支える湘南貿易とEREMA社の技術力

―まずは事業内容について教えていただけますでしょうか。

橋本氏 はい、私たちはプラスチック関連機械の専門商社として発足し、現在は湘南貿易と兄妹会社のエレマ・ジャパンの二社の形態をとっています。今回話題の中心にもなるエレマ・ジャパンは、プラスチック再生機械メーカーEREMA社の製品販売を手がける日本法人です。

株式会社湘南貿易 代表取締役社長  橋本則夫/大学卒業後、総合商社に就職しプラスチック関連機器を担当。1997年に株式会社 湘南貿易を設立し、世界の軟包材関連機械・最新技術を日本に紹介するとともに、2000年にはプラスチック再生機の専門メーカーであるオーストリアのEREMA社の日本代理店も設立。現在ではエコロジー事業部、ビバレッジ事業部も加わり、事業を拡大している。趣味はマラソン、ゴルフ。

―EREMA社という企業についても詳しく教えていただけますでしょうか。

橋本氏 プラスチックのマテリアルリサイクルにおいて、パッケージなど、廃プラスチックをペレットという米粒状のものに戻す、その過程の機械(ペレタイザー)が強いオーストリアの会社です。手前味噌ですが、今日本のマーケットで流通している廃PETボトル用ペレタイザーでは、弊社のやってるEREMA社の機械が90%以上のマーケットシェアを占めております。
 
今一番ニーズがあるのは、使用済みのPETボトルを再度PETボトルに戻すボトルtoボトルリサイクル(水平リサイクル)ですが、それだけでなくカーペット(繊維)や卵の容器(シート)などマテリアルリサイクルとして様々な馴染みのあるモノへ生まれ変わっています。

その他、行政主体で行われている容器包装プラスチック(容リプラ)のリサイクル用途でも、マーケットの半分くらいはEREMA社の機械が使われていますが、それらの販売や技術支援も弊社の重要な事業内容です。

―具体的にはどの様なところが他企業の機械との違いですか。

橋本 例えば中国や台湾の機械が売れている現状がありますが、それらはEREMA社の初期のタイプと似ています。連続運転中の温度コントロールが難しく、溶けきらないプラスチックが詰まってしまったり稼働にノウハウが必要です。

それから容リプラのリサイクルでは、量も多いし色んな樹脂が混じってくるので使用状況が過酷じゃないですか。どうしても塩ビ(塩化ビニル)などが入ってくると金属の腐食で機械が傷んでしまう。その点EREMA社は長年の経験に基づく効率的でしっかりした装置の作りと熱劣化を最小限に抑えてペレットの品質を向上させていますので、うち(EREMA社製)に戻ってきていただいてるお客様も多いですね。

あとは、容リプラですと臭いの問題もあるので、それを取る技術もEREMA社では「ReFresher」という技術開発も行っています。用済み品をリサイクルするとペレットにも臭いが残ってしまいます。これがリサイクルの幅を狭めてしまっている1つの問題だと思うのですが、その臭いを取り除く機能を持った装置をEREMAでは開発し、欧州では導入がすすんでいると聞いています。

―今後これらのプラスチック再生械はどの様に進化していくのでしょうか?

橋本氏 特に廃PETボトルのような出口がはっきりしている素材だと、米粒のペレットにするという工程を省略する「FtoP(フレークtoプリフォーム:破砕した廃PETボトルから直接PETボトルの原型であるプリフォームに加工する技術)」という新技術を飲料メーカーが主導で導入しています。プリフォームは、PETボトルとして膨らませる前段階の製品です。プリフォームにしたうえで、飲料メーカーに輸送され、様々なデザインの金型で膨らませてPETボトルを成形します。

他、PETボトルから直接PETシートにするとか、これが水平リサイクルの主流になるかもしれません。最終的な出口が分かっている素材をいかに効率的且つ低エネルギーで製造出来るか

が肝です。

EREMA公式ホームページより
EREMA公式ホームページより

リサイクル体験で正しい知識の普及と浸透を目指す

―「湘南エコプロジェクト」について教えていただけますでしょうか。

橋本氏 これは元々は、Sense Of Wonderっていう音楽フェスでごみの分別を手伝ったのがきっかけで、そのあと湘南国際マラソンでも参加者や応援来てる人にエコ教育をしたことを通じて、単に機械を売るだけでなく生活者にリサイクルを知ってもらうというのをミッションにしよう、というのが湘南エコプロジェクトです。

土井氏 神奈川エリアの小学校にて、リサイクルに関する授業を実施しています。また、イベントで弊社の小型インジェクション装置で作成した製品を配布してプラスチックのリサイクルを考えてもらったり、そういった地域での取り組みを実施しています。

―小型インジェクション装置というものはどの様なものでしょうか。

土井氏 基本的にはEREMA社の機械と同じでプラスチックの樹脂を加熱して溶かします。小型のインジェクション装置はそのまま型に流し込み冷却し固めて成形する装置です。小型で持ち運べる点を活かして、例えば野外イベントにてPETボトルキャップをお持ち頂いた方に、その場で溶かし型に流し込みオリジナルグッズを作成しお渡しすることでアップサイクルの価値を体験してもらいます。どなたでも利用出来る簡単な手順も特徴です。その為貸し出しも行っています。

―これまで行ってきた「湘南エコプロジェクト」の事例を教えていただけますでしょうか。

土井氏 地元のJリーグチームの横浜FCさんとはスポンサー関係ですが、継続してイベント実施を行っています。

サポーターのみなさんからPETボトルキャップをお持ち頂き、それらから再生した選手の背番号入りキーホルダーをお渡ししたり、本年もチームカラーにちなんだ青色のベンチを作り、横浜FCさんの練習場「横浜FC・LEOCトレーニングセンター」に設置し、練習を見に来て頂いた際に座っていただけるようにした活動を行っています。

パートナーシップで生み出す、工夫されたアップサイクル体験

―実際にその目の前でアップサイクル体験された方々ってどういう反応をされますか??

土井氏 やはりリサイクルってわかっているようで、その工程って学校で勉強していても覚えていなかったりすると思うんです。しかし、目の前で簡単に形が変わるので、リサイクルされるから分別しなきゃいけないんだというのを本当に理解していただけたり。あとは子供たちは単純に出来上がってくるものを喜んでくれるのは嬉しいですね。

橋本氏 アップサイクルはやはりブランドが大事だなと思います。横浜FCさんだったら(カズ選手の)11番をみんな欲しがるし(笑)。ゴルフの大会だったら、そのブランドのマークが付いてるだけで全然違いますね。ブランドオーナーさんがそういうことに取り組むと非常に強いんだなと思います。

―実際にイベントで出展されてる現場に行きましたが、持ち込まれたキャップをその場で加工するわけではないんですね。

土井氏 はい、あらかじめ洗浄して、ある程度色分別したものを準備しています。その場で集まったものでもできることにはできるのですが、なるべくもらったものが綺麗だったり、最初の体験として良く見せる部分も必要かなと思っています。

キャップでなく容リプラを再生してごみ袋等を作ると、結構臭いが残るんですよ、色も緑で。これが本当の生のリサイクルのやつだよねと私達は思えても、そういうところまで生活者に理解してもらうにはまだ距離があるので、なるべく綺麗に見せようとやってるところはあります。

―確かに容リプラというのは独特な臭いがします。

橋本氏 400度くらいまで熱して気体にしたり、そこから冷やして油に戻すケミカルリサイクルならそういうのも問題にならなくなるのですが、今色んな技術が出てきて暗中模索してるとこがあるんじゃないですかね。

我々がやってるマテリアルリサイクルの課題は、マテリアリルリサイクルの技術と生活者の人たちとのその距離感です。今は違うかもしれないんですが、昔はドイツだとごみ袋はわざと外装にリサイクル材を使って汚く見せると、その方がエコだよねって高く買ってくれるんだそうです。でも日本だと、バージン材の製品よりリサイクル製品の方が安くてあたりまえという概念や、見た目が綺麗なものに値段が高くついてしまう部分がどう変わっていくかってところなんでしょうね。

―今後はこの活動をどのように展開していきたいとお考えですか?

土井氏 そうですね、分別であるとかリサイクルの意味というのを伝えていくための活動をしながら、共感される企業さんを増やしていくのも重要だと思っています。そういう意味では、ちゃんとイベントであってもお金が流れるような仕組みを構築していくこともやっていきたいなと。

あとはまさにアップサイクルによってリサイクル製品の価値をどんどん上げていくっていう取り組みもできればなと思いますし、今はゴルフとか子供向けのイベントとかがメインですけども、それをもっともっと広げていくようなことができればなと思っています。

―これから更に多くのイベント実施や出店となりそうですね。インタビューご協力ありがとうございました。

2023.1.24
取材協力:株式会社湘南貿易
https://www.shonantrading.com/index.html