2022年で設立50年を迎えた「イオン九州」は、現在九州内の全店舗でサステナブルな取り組みに力を入れています。特に「食品」をサステナブルに循環させる取り組みが活発で、小売業界でも先進的な取り組みを行っています。
そこで、イオン九州が掲げる以下のパーパスに込められた想いや、「フードドライブ」「食品油の回収」など具体例な取り組みについて、サステナブル推進責任者 兼 コーポレートコミュニケーション本部長 兼 エリア推進部長 武富恭子氏、 サステナブル協創部 松本勇紀氏にお話を伺いました。
イオン九州が注力する「食品」に関するサステナブルな取り組み
—食品の廃棄物削減に対して取り組むことになった背景を教えてください。
2022年に設立50周年を迎えた節目の年に、改めて私たちの存在意義を考え直し「私たちの『たからもの』九州をもっと—。」というパーパスを策定しました。ここで言う「たからもの」とは、九州の豊かな自然や環境、これまでご一緒してきたお客さま、お取引先さまとのご縁も含まれています。いろいろな方や団体さまとつながって、社会をもっとよくしていきたいという思いが込められています。
策定したパーパスを社内に落とし込んで、イオン九州として行うことと、それぞれの従業員が実現したいマイパーパスを設定して取り組んでいます。
—食品の廃棄物削減に向けた、社内での目標について教えてください。
食品廃棄売変率(売上に対する、食品廃棄金額の割合)があり、毎年目標数値に向かって取り組んでいます。
食品リサイクル率については、直近2026年度は70%にすることを目標にしています。最終的には100%にしたいと考えています。
—その目標を達成するために、どのような取り組みをしていますか?
弊社だけで行っても限界があるため、自社、お客さま、お取引さま、それぞれが協力しながら、食品廃棄物を減らす取り組みを実施しています。
まずお客さまには、イオン九州の店内に陳列された食品を手前から取っていただく啓蒙活動を行っています。さらに、お客さまのご自宅にある消費期限が近く食べきれない食品を店舗に持参していただき、必要とされている方々にお届けするという活動を、九州内の282店舗で実施しています。
お取引さまと取り組んでいることとしては、フードドライブのような活動に賛同していただいた企業や団体さまとタイアップしたイベントなどを実施しています。
総寄付量100トン超え! イオン九州ならではのフードバンク・ドライブの仕組み
—フードバンクの活動について教えてください。
イオン九州の店舗では「イオンルール」というものがあり、それぞれの商品に販売限度日を設定しています。その販売限度日になると商品を販売してはいけないことになっています。その商品を寄付する活動がフードバンクです。店舗の近くにある子ども食堂などに食品を寄付することで、地域に貢献する活動にも寄与しています。
また、各家庭で食べきれない食品を店舗で回収し、フードバンクやこども食堂などにお届けする「フードドライブ」の取り組みも実施しています。
—フードドライブで回収した食品は、どのようなルートで届けていますか?
回収した食品は、各地域のフードバンクを通して、社会福祉施設等にお渡しするようなルートが主流です。しかし、それぞれのフードバンクに個別に郵送すると、配送コストが大きくかかってしまいます。そこで、我々が使っている物流網を利用して基幹店に集めて、そこに取りにきていただく仕組みにしています。
—食品リサイクル率を上げるために、具体的にどのようなことを行っていますか?
地域ごとにあるリサイクル業者の種類や、自治体の方針にも左右されるのですが、できる限り食品をリサイクルする取り組みを行っています。
長崎市では平木工業さまへ委託し、食品廃棄物を家畜用の液体飼料へリサイクルしています。2025年8月からは、熊本市内において永野商店さまが運営するバイオガス発電処理施設への搬入を予定しており、地域のエネルギー源としてリサイクルを進めます。鹿児島県南さつま市の新興エコさまが運営する農場では、弊社の食品廃棄物をリサイクルした堆肥を使用して作物を育て食品加工会社などへ出荷しています。
一般家庭から集めた食品油でトラックや電車を動かす
—環境整備産業との取り組みについても教えてください。
弊社の食品廃棄物を環境整備産業さまに堆肥へリサイクルしていただき、その堆肥を弊社グループ内にあるイオンアグリ農場で活用しています。さらに、その農場で作られた農作物をイオン九州が仕入れるという、サステナブルなループが完成しました。
この取り組みは、大分県では第一号となる農林水産大臣・環境大臣・経済産業大臣から食品循環資源の再利用事業計画の認定をいただきました。
ー地域循環を生み出す仕組みづくりをされており、素晴らしいですね。
他にも家庭用の食品油をリサイクルする取り組みも進めています。一部の店舗ですが、各家庭で不要になった使用済みの食品油をペットボトル等に入れて、イオン九州の店舗に持ってきていただき、燃料等に活用する取組みを行政や企業さまと行っています。
—家庭から出る使用済み食品油の廃棄の現状について教えてください。
現状、家庭から出る使用済み食品油は約20%しかリサイクルされておらず、ほとんどが捨てられています。
イオン九州のある店舗で使用済み食品油の回収を試験的に実施してみたところ、1ヵ月で約400リットルの食品油が集まったのですが、これは福岡市が1年間かけて回収した総量と同じです。そのくらい食品油の処理に困っている家庭が多いということがわかりました。
これからも行政や企業さまと課題解決に向けて取り組みを進めていきます。
—他社との連携も行っているそうですが、どのような取り組みですか?
代表的なものとして、味の素さまと共同での取り組みを行っています。味の素さまの食品工場でアミノ酸を製造する過程で発生する副産物を活用した堆肥で、野菜や果物を作る「九州力作野菜®・果物®」という活動をしています。
「九州力作野菜®・果物®」というブランドが年々育ち、冷凍野菜やお漬物といった加工食品としての商品も増えており、農家さまの収入UPにもつながっています。
マイパーパスとは? イオン九州が「九州をもっと—」パーパスを実現するための工夫
—食品廃棄物のリサイクル以外の活動についても教えてください。
衣料品回収も行っています。不要になった衣料品を糸に戻して、Tシャツを作ってイオン九州の各店舗で販売したり、羽毛布団の回収やマイボトル(水筒)の回収など、食品以外にもいろいろなリサイクルに挑戦しています。
—今後の展望を教えてください。
冒頭でもお話しした通り、イオン九州は「私たちの『たからもの』九州をもっと—。」というパーパスを掲げています。最後が「—」になっているのですが、この部分は、イオン九州の従業員ひとりひとりが「自分ゴト」として考え、行動してほしいという意味を込めています。
最後の「—」の部分には「九州ばもっとよかまちに」「つながりつなげて幸せに」など、それぞれの従業員が「マイパーパス」として掲げて、業務に励んでいます。
今後も従業員一同「九州のために何ができるか?」と考えながら、お客さまのため、九州のため、環境のために、さまざまな取り組みを続けていきます。
取材協力:イオン九州株式会社
https://www.aeon-kyushu.info/