廃棄野菜を使用したサップサイクル商品として先駆けの「おやさいクレヨン」。2014年に発売され、子ども向け文具としては異例のヒット商品となりました。聞いたことはあるけれど、どんな企業か気になる方も多いはず。ベンチャー企業「mizuiro株式会社」の「おやさいクレヨン」の誕生秘話やCO₂をアップサイクルした新素材の開発について社長の木村尚子さんにお聞きしました。
食べられるクレヨン?!「おやさいクレヨン」ってどんなもの?

ぬかをアップサイクルした米油とライスワックスをベースに、規格外品や端材など市場に流れない野菜や果物を微粉末加工して配合したのが「おやさいクレヨン」です。
小さなお子さんが安心して使えるように、野菜の色を補う顔料は、食品着色と同等成分のものを採用。万が一、口に入ってしまっても安全な素材だけで出来ているのが特徴です。
「おやさいクレヨン」の10色には、「たまねぎ、パプリカ、にんじん、りんご、トマト、きゃべつ、ねぎ、ほうれんそう、むらさきいも、たけすみ」とそのまま使われた野菜の名前が付けられています。
自然の色素なので薄いというイメージがありましたが、実際に使ってみると、想像していたよりもしっかり色が出て、発色の物足りなさは感じませんでした。どちらかというと色鉛筆に近いやわらかな印象で、グラデーションも作りやすく大人も楽しめる画材です。
9ヶ月の超スピード開発、なぜクレヨンだった?

元々、グラフィックデザイナーとしてパッケージデザインなどのお仕事をしていた木村さん。会社勤めをしていましたが、子育てとの両立が難しくなり、フリーランスのデザイナーとして独立することに。
その頃は、まだ起業するという意識はなく、たまたま訪れた藍染の展覧会で美しい藍色を見て、何か自然のものから作った色に関するものを作りたいと思ったことがきっかけだったそう。
「その頃、ネットで画材などの販売も手がけており、何か文房具を作りたいという思いはずっとありました」と木村さん。
藍染展でみた天然由来の色に魅せられて、はじめはインクを作りたいと考えていたそうですが、インクの製造は複雑でその当時、起業するために受けていた補助金の期限である9ヶ月で製品を作り上げないというプレッシャーもあり、作りやすいクレヨンとなったそうです。
「素人だったからこそ、何も分からず文房具の世界に飛び込んで、9ヶ月という短期間でやってみようと思った」と当時のご自身の無謀ぶりを笑いながら話してくれました。
サステナビリティは意識していた?

「開発当初、自然の色を出したいと思いながらも、食べ物を使うことに抵抗はありました」と木村さん。ただ、開発当初から廃棄野菜を使うという発想はなかったそう。
木村さんがクレヨンの色を出す野菜を探すため、農家を訪れたときに大量の廃棄野菜が目にとまりました。
「これだ!」と思ったと木村さん。廃棄野菜を使えば食べられるものを使う課題もクリアでき、材料の価格も抑えることができるということで、開発をしながら廃棄野菜を使うアイディアは生まれたとのことです。
青色がないのも「おやさいクレヨン」の個性
ただ、全ての野菜がクレヨンの色に適している訳ではなく、試行錯誤を繰り返して野菜を選び、粉末状にすることでクレヨンにすることに成功。
また、青色の野菜はないので、野菜からは青色は作ることはできません。でも、それも野菜や自然の色を使った色彩の良さと欠けた色があるのも「おやさいクレヨン」個性ということで、「おやさいクレヨン」シリーズは、あえて青色のないクレヨンになりました。そして、そのない青色を補うために社名が「mizuiro」になったという素敵なエピソードもあります。
地元の青森産の農作物を使うことで地域のサーキュラーエコノミーに還元することができ、アップサイクル商品の先駆けとなる「おやさいクレヨン」が完成することになりました。
文房具業界では異例の大ヒットに!

2014年のギフトショーの小さなブースが「おやさいクレヨン」の初出展となりました。誰も知らない小さなスタートアップの会社ということもあり、木村さんもあまり期待していなく、3日間の開催で300社くらい来ればよしという想定で名刺も最低限しか用意をしていなかったそう。
それが、なんと、1日目の午前中で名刺を配り終えてしまい、1500社以上がブースを訪れ、大反響だったそうです。
「小さなブースに多くの人だかりができていました。多くの契約を頂き、冬野菜を使ったクレヨンを用意していたのですが、足りなくなってしまい、春野菜を使った新シリーズを始めました」とその時の状況を木村さんは話してくれました。
趣味の延長だった小さなビジネスが展示会を通して一気にメディアや企業から注目を浴びることになりました。
これまで、国外合わせて17万セット以上を売り上げ、成熟したマーケットで新しいヒット商品を出すのは難しい文房具の分野では、異例の成功となりました。
もったいないから生まれたさまざまなOEM商品

また、「おやさいクレヨン」の発表以来、多くの企業から声がかかることになり、「mizuiro」では、自社製品だけではなく、環境にやさしいOEM商品の開発にも力を入れています。
「カゴメ株式会社」の「畑うまれのクレヨン」は商品ができる過程で発生した廃棄対象となる素材等を加工して作られています。
「株式会社コメダ」の「コメダ珈琲店クレヨン」は、コメダブレンド抽出後のコーヒー粉を使用した喫茶店らしい「シロノワール」と「クリームソーダ」セットで思わず大人も手に取りたくなる可愛さです。コメダ公式オンラインショップ「コメクション」で購入することができます。
役目を終えたメイク用品で着色したアップサイクルペーパーアイテム

また、クレヨンだけではなく、百貨店とのコラボでは、役目を終えたメイク用品を着色料に活用したペーパーアイテムなども手がけています。
「株式会社髙島屋」が循環型社会の実現を目指して取り組む「 Depart de Loop コスメ再生プロジェクト」の一環で、赤・ピンク系のアイシャドウやチークなどのメイク用品からパウダー部分のみを選別して取り出し、再生紙の原料に着色料として混ぜたアップサイクルぺーパーアイテム。
アップサイクルされたショッピングバッグ、メッセージカード、名刺はメイク用品ならではのラメ感が特徴で、ショッピングバッグは、2025年の10月から髙島屋5店舗の対象売場で税込3,000円以上を購入した方を対象に、先着1万5千名に配布されています。(*なくなり次第終了)。
CO₂をアップサイクル?!あの関西・大阪万博でも採用の新素材の開発も!

また、「mizuiro」は、CO₂と金属を原料とした新素材「metacol™」*の商用化に向けて初めての共同事業として、「metacol™」を配合した紙(環紙〜わし〜)を開発。帽子や、封筒、ギフトバック、ギフトボックスなど全4種類のアイテムを製品化しました。「metacol™」を加えることで強度やUVカット等の機能性を付与できます。
大阪・関西万博「MAIDO MUIC!」に展示された「すみっコねぶた」には「mizuiro」の「環紙〜わし〜」が使われたそうです。
環紙(washi)は「mizuiro」の新プロジェクトで、捨てられてしまう果物や野菜、お花を古紙と配合しアップサイクル紙へと循環させる取り組みです。
これまで、廃棄野菜や果物を活用した商品を展開してきましたが、今回の「metacol™」導入により、食品残渣という自然素材だけでなく、プラスチックや木材など製造由来の副産物も価値ある製品へと再生させることを目指しているとのことです。
*「metacol™」は、住友電気工業株式会社が開発したCO₂を吸収し、資源化するCO2と金属から出来たセラミックス新素材。再生プラスチックと混ぜて新たな製品としてアップサイクルを促進。天然の鉱物としても存在し低環境負荷で環境に優しい優れた素材です。活用することでカーボンニュートラルより進んだカーボンマイナスを実現、脱炭素社会への貢献が期待されています。
これから取り組みたい活動は?
10年前、アップサイクルという言葉がまだなかった頃に開発を始めた「おやさいクレヨン」。多くの人を驚かせた「おやさいクレヨン」ですが、木村さんは、まだ小さなベンチャー企業ということで、聞いたことはあるけれど、見たことや使ったことがないという声もあるので、もっと広めていけたらとも話していました。
「捨てられるものから商品を作るという新しい価値観を生み出した自負はあります。だからこそ、廃棄物をアウトプットできる商品をこれからも開発していきたい」と今後の意気込みを語ってくれました。
今後は、現在も続けている紙の活動や木材で木を使った環境にやさしい取り組みを始めたいということで、今後の更なる活躍が注目な「mizuiro」です。
>>>「おやさいクレヨン」の「mizuiro」についてはこちらから