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2023年11月28日から12月2日まで、幕張メッセで開催された「国際プラスチックフェア(IPF Japan 2023)」。プラスチックやゴムを中心とした日本最大級のプラスチック製品製造の専門展「IPF Japan」は、原材料からリサイクルまでプラスチックやゴムの全てのプロセスに関わる業界関係者が、日本全国はもちろん、アジアを中心に世界中から一堂に会する3年に一度の展示会です。

昨今、プラスチック業界は、サーキュラーエコノミー実現の為、有用性の見直しや他業界とのコラボレーションが求められています。今回の展示会は、業界の立ち位置や各社の取組みの動向を網羅出来る展示会でした。

※旧サイト(環境と人)からの転載記事です。

6年ぶりのオフライン開催となったIPF Japan 2023

本展示会は、2017年ぶりのオフライン開催。5日間で約38,000名の来場者が訪れました。出展企業は700社以上、プラスチックに関する原材料や添加剤、成型機や成形関連機器、成形加工技術、その他リサイクル機器のメーカーなど、国内だけでなく海外からも多種多様な出展がありました。

参加者は企業経営者や営業職だけでなく技術者や現場オペレーターなど、会場の至る所でプラスチック産業に関わる様々な声が聞こえる活気あふれた雰囲気。国内でのビジネスマッチングやアジア全体のマーケットの情報収集が主たる目的のようでした。

海外からの出展の中でも広いスペースを占めていた中国パビリオン

業界全体が環境貢献への舵を切った展示内容

6年ぶりのオフライン開催の本展示会では、各社の展示内容にも変化が見られました。これまでのプラスチックに関する技術や製品の展示に比べて、今回は「環境負荷削減」「資源循環」「省エネルギー」がメイントレンドとなり、近年のプラスチック産業の環境貢献への移行がはっきりと分かる展示ばかり。来場者もこの数年の変化の視察を目的とした方も多く、新しい技術への期待を寄せています。

広い展示会場の中心には「サーキュラーエコノミー企画展」。バイオプラスチック素材や生分解性素材、その成形機などが並んでおり、国内のサーキュラーエコノミーへの取り組みが展示されていました。

プラスチック産業に関わる多種多様な展示

リサイクル機器や成形関連機器を紹介する機械コーナーには、工場規模や環境配慮のニーズに合わせた様々な機械が並び、実際に稼働する様子がわかるよう、会場内での実演が行われていました。

リサイクル機械は、小型の破砕機や成形機などオンサイトで処理できる設備が注目を集めていました。

国内からも環境貢献素材が多く出展

株式会社シーティージャパンは、不要となった農業用ポリエチレンフィルムを自社で回収・ペレット化、自社のインフレーション機械で農業用マルチやゴミ袋などの最終製品に再生しています。

再生材の袋といえば、バージン材と比較して少しグレーがかった色になり黒点が見られる事、元材によっては匂いがする事が特徴ですが、それらが影響しない「農業用マルチ」というユニークな出口に着目しています。

海外からの出展 新素材の紹介が多数

先日の記事でご紹介した、発泡剤、再生ゴム、バイオ熱可塑性ゴム改質剤および相溶化剤を開発するタイのB.G.S社は、本展示会で新たな製品を紹介していました。

お菓子の袋など、アルミが蒸着した複合フィルムを剥離せずに再生することができる「Therpol」(写真右)。破砕フィルムとTherpolを一緒にペレタイズすると、写真左のようなペレットに再生することができます。

業界内外に向けた新プラットフォームの参入も

株式会社TBMは、2023年11月にローンチした日本発の環境配慮型素材を取り揃えたB2B向けマーケットプレイス「Green Sourcing Hub(グリーン・ソーシング・ハブ)」 のβ版を展示。国内外の環境配慮型素材のB2B取引をオンラインで完結させるマーケットプレイスで、本サービスを通じて素材メーカーがエンドブランドや成形メーカーへ直接的にアプローチすることが出来ます。

展示会場では実際にサービスを体験し、素材の検索方法や販売の流れを体感することが出来ました。

プラスチック産業の進歩と課題

今回、「環境貢献」を主軸とした新素材や、それらに関連する機器の展示が多く、プラスチック産業内の転換を実感するイベントとなりました。取材をする中で新素材の扱いに特別な成形技術を要することや、対応素材の制約など難しさも聞くことが出来ましたが、いずれも進歩の途中です。

3年後に再度開催されるIPF Japanはどの様になっているのでしょうか。「環境貢献」は、トレンドではなく当たり前になっていることも想像できます。これからも業界外からプラスチック・ゴム素材を注視していきます。