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2月4日、竹中工務店東京本店(江東区新砂)にて「サーキュラーデザインビルドEXPO」が開催されました。この展示会は、昨今需要が高まる環境に配慮したサーキュラーな建材を一堂に集めた社員向けの展示会で、建材メーカー21社が参加しました。

独自の評価基準ラベルを採用

同社経営企画室 サステナビリティ推進部の福井 彰一氏は「環境素材のニーズが高まる一方で、社員が個々のサーキュラーな建材にアクセスできる機会は限られています。そこで、ひとつに集めてサーキュラー建材への理解を深める場を作りました」と企画の経緯について語ります。昨年、第一回目を大阪本店で開催し、今回の東京開催は二回目の開催になります。

展示会では、竹中工務店独自の評価基準である「サーキュラー建材評価ラベル」が使われています。「原材料」「リユース」「水平リサイクル」「リユースと水平リサイクルのしやすさ」「その他のリサイクルの方法」という5つの評価項目を設け、各メーカーにどの部分が環境に配慮しているのかを0から4までのポイント表示してもらうものです。これにより、異なる企業の建材を同じ尺度で比較することが可能となり、サーキュラー性能の可視化が可能になります。

すべての製品の横にサーキュラー建材評価ラベルが示されている。

ここ最近の傾向として「購入側の意識にも変化が見られています」と語るのは、フランスの循環カーペットTarkett(後述)を扱う出展者 「CIPSアドバンス株式会社」髙𥔎 侑子氏。「以前はリサイクル材を使用しているにもかかわらずバージン材より価格が高いことに疑問の声が上がっていましたが、最近では環境配慮型製品にはある程度のコストがかかることへの理解が広まってきています。特に昨年3月頃から、価格に関する指摘が減少し、環境への配慮を評価する声が増えているのを感じます」と語ってくれました。

「環境素材に対してのお客様の反応が変わってきました」と語る髙𥔎氏

会場では、展示各社がそれぞれにこだわった環境素材を提案していました。その中からいくつかご紹介いたします。

廃棄される化粧品の再利用「SminkArt」

ピンクに統一した展示で注目を集めていたのは株式会社モーンガータ。廃棄される化粧品を再利用し、絵具のみならず印刷インキ、樹脂、建材、塗料、紙再生ボードなどの多様な色材へとアップサイクルする技術を他社と共同開発し、「SminkArt」のブランドで展開しています。

大手化粧品メーカーと協力し、不要となった化粧品の提供を受け、資源の循環活用を推進しています。さらに、廃棄化粧品を印刷用インキ「ecosme ink®」※として活用し、独特の加飾表現が可能なプロモーションツールの開発も行っています。特に化粧品の色を活かした「ピンクのコンクリート」等はインパクトが強く、様々なシーンでの活用の可能性があると関心を集めています。

※ TOPPAN株式会社の商標登録品。アイシャドウやファンデーションなどのパウダー化粧品原料を再利用した印刷用インキおよび顔料

株式会社モーンガータ取締役 田中麻由里氏

大阪・関西万博にも使用される舗装材「revia(レビア)」

廃プラスチックと木材を混合したLIXIL社の「revia(レビア)」は、使用済みプラスチックと木材を混合した新しい材料。舗装材やデッキ材として使用されています。2025年の大阪万博のパビリオンの「EARTH MART」(プロデューサー:小山薫堂氏)では、「いのちをつむぐ」というテーマに沿って、「レビアベイブ」が採用されています。

実装事例も豊富なLIXIL「revia(レビア)」

何度でも循環する欧州製カーペット「Tarkett」

フランスの床材メーカーTarkettは使用済み製品を回収し、繊維やバッキング材を分離して再資源化する技術を持っています。これにより、何度でも同じ製品にリサイクルすることが可能になっています。特に、タイルカーペットの分野では、使用済み製品を回収して同じタイルカーペットに戻す取り組みを行っている唯一のメーカーとして知られています。

部分的なアップサイクルではなく、同じ製品への循環を行うTarkett

石膏ボードの水平リサイクル「チヨダサーキュラーせっこうボード」

近年注目を集める石膏ボードリサイクル。チヨダウーテ社では、石膏ボードのリサイクル技術が紹介されました。世界で初めて、建築現場(新築・解体)から回収した廃石膏ボードを100%原料にした石膏ボードの製造を実現しました。この技術では、不純物の除去や結晶構造の改善が行われ、品質を維持しながらリサイクルを実現しています。

チヨダサーキュラーせっこうボードのサンプルハウス

他にも、木材、グラスウール、アルミなどの資材のアップサイクルや水平リサイクルなど、メーカーの技術の高さを示すサーキュラー建材が多数展示されていました。

今回の出展企業は、福井氏が様々なメーカーとの協力関係構築を作るため、ヒアリングや工場訪問を重ねる中で、既に一定レベルのサーキュラーな取り組みを行っているメーカーに声をかけたとのこと。従来のリサイクル活動の延長線上にある取り組みも、サーキュラーという観点から再評価したそうです。

環境負荷が高い建築業界の課題を踏まえ、新しい建物を建てても環境への影響を最小限に抑えられるような取り組みを推進していきたいと話す福井氏。

環境への意識の高まりとともに、今後もサーキュラーなマテリアルや建材が新たに生まれてくるのではないでしょうか。

※3月10日、竹中工務店福井氏をゲストに建築業界の事例解説セミナーを行います。ぜひご参加ください。