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リユース・リサイクル率100%を目指して、循環型社会の実現に取り組んでいるブックオフが新たな事業を始めています。それが店舗で販売し切れなかったCDやDVDをリペレットとして販売する「CDプラ事業」。そこに至った経緯をブックオフコーポレーション株式会社 R室長の星野雄一氏に伺いました。

リユースされないCD・DVDをどうするか?

―ブックオフがCDやDVDを再資源化する「CDプラ事業」を立ち上げた経緯を教えて下さい。

ブックオフグループでは、お客様からCD・DVDを年間2,500万枚買取しておりますが、買取時にお値段がつかずお客様のご了承の上でお引き取りしたり、買取後に一定期間販売しきれずに処分せざるを得ないモノが年間1,700トンに及びます。

以前は、海外で再生プラスチックにリサイクルされていましたが、海外の廃プラへの輸入規制や2021年のバーゼル法改正で輸出そのものが難しくなりました。

―自国で責任を持って処理しなければならなくなったんですね。

その通りです。しかしながら、産業廃棄物として処分いたしますと費用がかかるほか、何よりも弊社は『リユース・リサイクル率100%を目指す』方針を掲げており、お客様からお預かりしたものを廃棄物としたくないという想いがございました。

―買い取りを控えるという選択肢はなかったんですか?

経済合理性に照らし合わせれば、それもまた選択肢の一つです。しかしながら、私たちはお客様の買い取り希望に応え続ける事が我々の強みであり、伝統的ポリシーでもありますので、買い取りを控えるという選択はありませんでした。こうしたジレンマの中、CDやDVDを再生プラスチック資材として販売し、その利益によりコストを補おうという考えで始まったのが『CDプラ事業』でした。

素材の本質的な価値に気づいた

―スキームはどのように作っていったんですか?

当初の事業構想では、再生資材の販売ではなく、CDやDVDをリサイクルして制作したオリジナル製品を店舗で販売することを検討していました。

―何を作ろうとしていたんですか?

ごみ箱です。「ごみからごみ箱を作る」というアイデアだったのですが、社内外の反応があまり良くなくて試作までには至りませんでした。その後、学生の皆さんと一緒に廃棄物から商品を企画する共創プロジェクト 『すてるデザイン』に参加したことで、CDやDVDから作られる再生プラスチック資材の本質的な価値に気づき、事業を再生樹脂の販売に切り替えることにしました。

―再生資材にしているのはCDやDVDのディスクですか、それともケースですか?

CD、DVDのケースとディスクの両方です、これらを素材別に分別、粉砕、洗浄の各工程を経て、それぞれ異なる樹脂にして販売しています。

―それぞれの樹脂の特徴を教えて下さい。まず、CDケースは?

CDケースはポリスチレンという樹脂から出来ています。色は透明であり、剛性に優れ、電気絶縁性も良く、成型しやすいという特性を持っています。

ポリスチレン(CDケース)

―DVDケースは?

DVDケースはポリプロピレンという樹脂から出来ています。こちらは軽量であり、熱可逆性に優れ、繰り返しの折り曲げに耐える特性を持っています。色は透明のものと、色付きのケースを混ぜたグレーがかったものの2種類があります。

ポリプロピレン(DVDケース)

貴重な技術との出会い

―そしてCDとDVDのディスクは?

CD、DVDのディスクは、ポリカーボネートという樹脂から出来ており、色は透明ですが、単一素材とするために、ディスクの表面に印刷されているアルミ蒸着膜をどう除去するかが課題でした。

ポリカーボネート(CD・DVDディスク)

―課題を克服する技術はどのようなものだったんですか?

薬剤を用いて除去する方法もありますが、環境によくありません。現在依頼しているパートナー企業は、水の力のみを用いてアルミニウム溶着膜を洗い流す、日本でも貴重な技術を有しており、洗浄工程は、そちらにお願いしています。

すべてがCD・DVD由来という単一性とストーリー性

―多くの事業者がCO2排出量を削減すべく再生資材を求めていますが、評判はいかがですか?

ありがたいことにブックオフの取り組みへの関心を寄せてくださる企業様も多く、色々な企業様からサンプルのご依頼をいただいています。

お客様にお持ち込みいただいたCDやDVDから作られているというストーリーやトレーサビリティという価値にも共感や信頼をいただいています。

―そのストーリーと繋がるような企業とのコラボレーションで新たなプロダクトが生まれてくるのも楽しみですね。

私たちも楽しみにしている部分です。再生プラスチックの必要性を感じている企業様に「CDプラ」を知っていただき、コラボレーションしていければと考えています。今は企画の原点に立ち戻って、ブックオフのオリジナル商品を作り、一部店舗で販売を始めているところです。

価値ある素材を周知させるオリジナル商品の展開

—商品のラインナップを教えて下さい。

最初に作った商品は、DVDケース(再生ポリプロピレン)を100%使用した「バケット」「オンバケット」です。本体もフタも100%リサイクルで作り、ペールブルーとペールピンクは、ブックオフのオリジナルカラーとなっています。

BOOKOFF SUPER BAZAAR 409号川崎港町店

—他にはどんな商品があるんですか?

上蓋の天板にCD・DVDディスク(再生ポリカーボネート)を使った「名刺ケース」です。CDプラのディスク特有の輝きが加わったサステナブルな商品になっています。製作会社様と一緒に、今後はこの特性を活かしたアクセサリーなどを製作出来ればと考えています。

また、CDケース(再生ポリスチレン)を使った「スマホスタンド」も作りました。イラストレーターさん3名とのコラボレーションで製作し、ブックオフ公式キャラクター・よむよむ君が描かれた3種の親しみあるデザインとなっています。

お客様に直接手に取って御覧頂けるよう、他にもCDプラを使ったオリジナル商品を、一部の店舗で販売しています。

こうした「CDプラ事業」を広く知っていただくためにCDケース100%素材で作ったノベルティを製作し、お客様やお取引先の皆様などにお配りしています。 

身近なリユース・リサイクルの回収拠点として

—お客様にサーキュラーエコノミーの取り組みを認知して貰うことでさらなる循環を生み出していけそうですね

はい。弊社では以前から取り扱っている商品のリユース・リサイクルに取り組んでいる他、ボックス型不要品回収システム「R-LOOP」というサービスを始めています。こちらは不要になった衣類や雑貨をボックスに入れていただくだけでリユースやリサイクルに繋げられるシステムです。回収後は弊社グループの海外店舗「Jalan Jalan Jalan」で販売される他、リユースできない繊維製品はパートナー企業がリサイクルしています。

社会が持続可能な循環型にシフトしていく中、リユース・リサイクル100%を目指して事業を展開している弊社は、今後も国内外にリユース・リサイクルの事業を拡大していくことで、循環型社会の形成に貢献にしていけたらと考えています。