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「ギフトカタログ」をトイレットペーパーにリサイクル。大丸・松坂屋×コアレックス信栄が取り組む紙の循環

2025年5月31日(土)、JR御徒町駅前の御徒町南口駅前広場(おかちまちパンダ広場)で開催された「第 3 回 循環生活コトハジメ」(株式会社 大丸松坂屋百貨店、台東区、ローカルフードサイクリング株式会社による共催)。あいにくの雨模様にもかかわらず、多くの人々が訪れていました。イベントでは、株式会社 大丸松坂屋百貨店とコアレックス信栄株式会社が共同で紙パックの回収ブースを出店していました。両社は、2021年より、不要になった夏の贈り物、冬の贈り物ギフトカタログを大丸・松坂屋の店内でお客様から回収し、トイレットペーパーへとリサイクルする循環型プロジェクトに取り組んでいます。この取り組みについて、両社の担当者にお話を伺いました。

(左から)株式会社大丸松坂屋百貨店 池本氏、小林氏

百貨店から生まれる「循環」の輪

—まず、ギフトカタログリサイクル活動の概要について教えてください。

大丸松坂屋百貨店 池本氏:この取り組みを始めたのは2021年のことです。お中元やお歳暮を選ぶ際に使用したカタログをお持ちいただき、店内のリサイクル用のボックスに入れていただきます。回収されたカタログは、コアレックス信栄の本社工場でトイレットペーパーに生まれ変わります。回収にご協力いただいたお客様には、前のシーズンに回収したカタログからリサイクルされたトイレットペーパーをお渡しすることで、資源循環を実現させています。

不要になったギフトカタログが、資源として有効活用されて実用的なトイレットぺーパーとして生まれ変わっていることをお客様に発信することで、リサイクルの重要性を直接肌で感じていただけるという点で、この取り組みには意義があると考えています。


使用済み食用油をSAF(持続可能な航空燃料)へリサイクルするプロジェクト「Fry To Fly Project」のブースを運営する大丸松坂屋百貨店 担当者と東京メトロ 担当者(左から3名)

技術の進化が生んだ革新的リサイクル

コアレックスの技術について詳しく教えてください。

コアレックス信栄株式会社 栄羽氏:私たちの最大の強みは、難再生古紙と呼ばれる、通常はリサイクルが難しいとされる紙もリサイクルできる点です。1日に2万トンもの富士山の地下水を使用する洗浄技術によって、カタログに付着した異物も除去しながら、あらゆる紙を再生することができます。

コアレックス信栄株式会社 杠氏:家庭での洗濯と同じで、水量が多ければ多いほど洗浄効果が高まります。

古紙を洗浄し、リサイクルするコアレックス信栄株式会社 本社工場

お客様の協力が鍵を握る

この取り組みの成果はいかがでしょうか?

大丸松坂屋百貨店 小林氏:2024年の冬の贈り物では、約10,000セット(約8,000kg)のカタログを店内で回収しました。回収量をトイレットペーパーに換算すると、33,000ロール相当にリサイクルできる量です。2021年の開始以来、累計約53,000kgのカタログを回収しています。お客様のご協力なくしては成り立たない資源循環の取り組みですので、取り組みの認知を図るためにギフトセンターに取り組み紹介のポスターやPOPを設置しています。

今後の展望についてお聞かせください。

大丸・松坂屋のギフトセンターに設置される取り組みを紹介するPOP

コアレックス信栄株式会社 栄羽氏:私たちの技術は、ギフトカタログに限らず、様々な紙製品に応用可能です。例えば、最近増えている紙パック飲料や食用油の紙容器なども、私たちの技術でリサイクルできます。今後はより多くの企業や自治体と連携し、リサイクルの輪を広げていきたいと考えています。

大丸松坂屋百貨店 池本氏:ギフトカタログリサイクル活動を通じて、お客様とともに環境課題の解決の一助になれたら嬉しく思います。当社は「Think GREEN」というコミュニケーションワードを用いた活動に注力しており、これからも来店されるお客様とともに環境課題の解決に貢献して参ります。また、事業活動で発生する廃棄物の削減にも、発生抑制とリサイクルの両輪で取り組んでいきます。

(左から)コアレックス信栄株式会社 栄羽氏、杠氏

「紙は資源」という認識を広げたい

循環型社会の実現に向けて、企業の取り組みはますます重要になっています。単なる企業活動を超えて、社会全体の循環型システムを構築する両社の挑戦は、その先駆けとなる素晴らしい例と言えるでしょう。「紙は『ゴミ』ではなく『資源』であるという認識を広めていくことが、私たちの使命だと考えています」と、両社の担当者は口を揃えます。私たち一人一人が、日常生活の中でこうした取り組みに参加することで、持続可能な社会づくりに貢献できるのです。

取材中にも大丸松坂屋百貨店とコアレックスの紙パック回収ブースには、牛乳パックを持参する人がたびたび訪れ、笑顔でトイレットペーパーを受け取っていました。気軽に取り組みやすく、資源循環をその場で実感できる今回のプロジェクトによって、多くの人々がリサイクルの重要性を再認識したことでしょう。

循環生活コトハジメでは、台東区内で資源循環を実践するショップが集結したマルシェやコンポストについて学ぶワークショップ、こどもによるフリーマーケットなど多彩なプログラムが用意されていました。フリーマーケットでは、子どもたちが販売する個性的な商品に思わず足を止める来場者の姿が印象的でした。出店者の皆さんもとても楽しそうで、カメラを向けると満面の笑みを見せてくれました。サーキュラーエコノミーを固く考えず、自ら楽しんで参加することが大切なのだと感じました。