サーキュラエコノミーに特化したスタートアップ育成
サーキュラーエコノミー領域に特化したスタートアップ企業の創業を支援するインキュベーションプログラム「サーキュラースタートアップ東京」の成果発表会が、3月7日に虎ノ門ヒルズで行われ、循環型経済の実現を目指す14組が、それぞれの分野でサーキュラーなビジネスモデルや技術を発表しました。
第二期目となる今回のプログラムは、短期間でのスケールアップを目指し、資金調達やIPOを視野に入れている「スケールアップ&資金調達・IPO 準備コース」と、社会課題解決に重きを置き、事業の創業や初期段階において、持続可能な社会インパクトの創出を目指す「社会インパクト創出&事業基盤構築コース」の二つに分かれており、発表もコースごとに行いました。
ピッチの時間は各組7分。内容は、IT、アパレル、農水産業など多岐にわたる分野で、環境負荷を低減しつつ新たな価値を創出する取り組みが紹介されました。AI活用や社会課題に向き合うビジネスも多く見られました。その中からCE.T編集部が気になったプレゼンをいくつかご紹介します。


スケールアップ&資金調達・IPO 準備コース
株式会社Ripplesは、水平リサイクル可能なプラスチック容器を提案。特殊なフィルムを使用することで、洗浄不要で剥がすだけでリサイクルできる画期的な容器です。この技術により、重量比97%のゴミ削減が可能となり、100枚回収ごとに4.2kgのCO2削減効果があるとのことです。既に全国176の大学やテーマパークで導入されており、今後は外食チェーンやコンビニエンスストアへの展開も視野に入れています。

合同会社渋谷肥料は、都市から出る事業系ゴミを肥料に変え、都市型サーキュラーエコノミー商品を開発しています。渋谷から出るゴミの一部を茨城で肥料化し、その肥料で育てたさつまいもを使ったスイーツを開発・販売しています。このサーキュラースイーツ®は、ストーリー性と地域性を兼ね備えた商品として、東京土産市場に新しい価値を提供しています。


社会インパクト創出&事業基盤構築コース
有限会社GMGコーポレーションは、藻類を活用したCO2削減と循環型農業の実現に取り組んでいます。シアノバクテリアという微生物を利用し、CO2を吸収しながら電気を生産し、情報を共有するバス停を提案しています。このバス停は災害対策の拠点としても機能し、5年間で黒字化、11年目には大きな収益が見込めるとのことです。将来的には農業やエネルギー供給にも応用し、循環型社会の実現を目指しています。

株式会社東芝の王振江氏は、AIを活用して粗大ごみのリユースを促進するプラットフォームの構築に取り組みを発表しました。写真を撮るだけで、粗大ごみがリユース可能か判断し、適切な業者とマッチングする仕組みです。これにより、年間約100万点の粗大ごみがリユースされ、12万tの資源削減が期待できます。将来的には家電製品や輸入品にも対象を広げ、デジタル化を通じてサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。

株式会社ペーパーパレードは、廃棄される屋外広告を新たな素材として活用する事業を展開しています。屋外広告の掲出期間は約2週間ですが、素材の耐久年数は10年以上あるという課題に着目しました。知的財産権の問題を解決するため、シークレット地紋技術を開発し、広告を匿名化してリサイクルしています。この技術により、コート、シューズ、バッグなどの様々な製品に転換し、廃棄削減と新たな収入源の確保を実現しています。


静岡県立大学の榎本剛司氏は、再生プラスチックの安全性を確保する測定技術を提供しています。従来のターゲット分析に加え、ノンターゲットで化学物質を定量する方法を確立しました。これにより、規制対象物質だけでなく、匂いや非意図的に生成された化学物質も網羅的に分析できます。自動車産業向けに、2030年までに約18万tの需要が予測されており、この技術を活用してリサイクル材料の安全性を確保することが期待されています。

李哲揆氏は、都市部で発生する食品コンポストを新たな資源として活用するアップサイクル事業を展開。コンポストと生分解性プラスチックを組み合わせた新素材の開発や、教育分野での活用を提案しています。

環境負荷の低減と経済的価値の創出を両立させようとする意欲的な試みの発表が相次いだ本イベント。それぞれの分野でのサーキュラーエコノミーの実現に向けた多様なアプローチが示され、日本のサーキュラーエコノミーのさらなる発展が期待されています。

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