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2024年4月、新サイト"Circular Economy.TOKYO(CE.T)"オープン特別企画として、欧州でサーキュラーエコノミーに取り組む企業をシリーズで取り上げます。第一弾は、ベルギーで事業用タイルカーペットのクリーニング事業を行うComposil(コンポジル)社です。コロナ禍をきっかけに、同社はカーペットの再利用とリサイクルの新事業を展開、循環経済への移行に舵を切り、順調に売上を伸ばしています。

95%焼却される廃棄カーペットに着目

画像引用:Composil社ホームページより https://composil.eu/en/

4月15日〜18日にブリュッセルで開催されたWCEF(世界循環経済フォーラム)2024。そのプログラムの一環としてサーキュラーエコノミーに取り組む企業ツアーが行われ、先進事例としてブリュッセル郊外のコンポジル社が訪問先に選ばれました。同社CEO Jean Minne氏が事業内容について行ったプレゼンテーションの内容をまとめました。

自社にてWCEFの視察団に事業説明するCEOのJean Minne氏

創業30年を迎える弊社は、ベルギー、フランス、ルクセンブルグで92店舗を展開し、これまでクリーニングを行った総面積は250万平方メートルになります。今回ご説明するのは、COVIDを経て会社の中のスタートアップの位置づけで開始した「コンポジル・リユース(Composil ReUse)」です。これはカーペットタイルの取り外しサービスと再利用タイルの販売事業です。

事業用のカーペットは、事業所の建て替えなどの際に不要となります。実際はほとんど使えるものであるにもかかわらず、これまでは使えないものと使えるものが一緒くたに捨てられ、95%、つまりほとんどが焼却処分され、リサイクルされていませんでした。

まだまだ利用できるカーペットタイルもこれまではまとめて廃棄、焼却されていた。

その課題解決のため、我々はコンポジル・リユースを作りました。不要になったタイルカーペットを再利用し、再利用ができない場合はリサイクルすることで、オフィス用タイルカーペットを回収する体系的な方法を提供する、ヨーロッパ初の会社です。現場に出向いて再利用できるタイルとそうでないタイルの割合を査定します。解体までのリード時間があまりないため一旦全て剥がしてから再度選別し、再利用できる部分については工場でクリーニングを行い保管しています。再利用可能なタイルはクリーニング後にリユース品として、そして再利用不可能なタイルはリサイクルすることで市場に戻し、持続可能性に配慮したビジネスモデルを構築しているのです。

クリーニング後に再販売する商品のサンプル

タイルカーペット1m²は、石油5kgに相当します。廃棄カーペットを焼却炉に送れば、1,000m²で1トンのCO2に相当するのです。この取り組みにより、カーペットタイルの焼却を防ぎ、CO2排出量を削減し、社会的経済的な利益をもたらすことができます。

私たちのビジョンは、循環経済の原則を実践し、EUの持続可能な開発目標に貢献することです。弊社は、ヨーロッパでのリーダーとしての地位を確立し、国際的な展開を目指しています。

一年で売上一億円超を達成

現在、プロジェクトの大半はコンポジル・グループの事業範囲であるベルギー、ルクセンブルク、フランスで行われていますが、スウェーデンにも顧客がいることでもわかる通り、再利用タイルの市場はヨーロッパ全土です。

現在コンポジル・リユースは、ロジスティクスとオペレーション・プロセスを整備し、32,000m²の在庫(2023年末時点)があり、中級および最高級のカーペットを幅広く取り揃えています。2023年には、解体現場で111,000m²以上のタイルカーペットを焼却処分から救い、25,000m²以上の再利用タイルカーペットを販売することができました。

事業開始から丸1年が経ちましたが、この新しい事業の売上高は、数回ほどマーケティング施策を行っただけで、70万ユーロ(約1億1000万円)に近づいています。1m²当たりで見ると、コンポジル・グループの従来の事業(カーペットクリーニング業)よりも売上高、利益率ともに高いのです。ヨーロッパを市場として、コンポジル・グループのビジネスモデル全体をフランチャイズ化することで、今後はさらにギアを上げていきたいと考えています。

「真の循環型」ビジョンが生まれた経緯

COVIDは弊社に大きなマイナスの影響を与えました。その間、私たちはビジョンとミッションを練り直し、「インパクト/ミッション主導型企業」になることを決断しました。ここから生まれた旗艦プロジェクトが、カーペット再利用プログラム「コンポジル・リユース」です。

持続可能性はすでに弊社の柱のひとつではありましたが、(いま事業者に求められる)エコロジー、経済、社会的インパクトはとてつもなく大きいものです。本業であるクリーニング事業は、カーペットの品質を長期にわたって維持・保存することを目的とし「使用」(製品寿命を延ばすためのカーペットメンテナンス」の部分を担っていましたが、新規事業によって、「再使用」(再生タイルカーペットの販売)-「リサイクル」(カーペット製造パートナーによる材料のアップサイクル、新しいタイルカーペットの製造)が加わり(下図参照)、循環ソリューションが完成し、私たちのビジョンは「ある程度持続可能」なものから、「真の循環型」へ高まったと考えています。

これまでは「使用」(クリーニング)のみだったが、「再使用」と「リサイクル」を加えた新事業でライフサイクル全体をカバーするサーキュラーソリューションが実現した。(画像引用:Composil説明資料)

リサイクルカーペット市場の成熟が追い風に

私たちのサービスは廃棄物ゼロを目指し、顧客の建設会社のCO2排出量の削減や再生素材の利用をサポートしています。再生材市場の需要が高まっており、一度使われたカーペットを再利用するという需要も高まっていると感じます。

我々の提供するカーペットはリサイクルのパートナーとして提携しているTarkett社(本社フランス)が行う「ReStartプログラム(古いカーペットの材料を再利用して新しいカーペットを製造するプログラム)」の材料として活用されています。今日までBEFRALUX地域(ベルギー、フランス、ルクセンブルグ)で焼却処分を免れたタイルカーペットの割合は大幅に増加し、わずか数ヶ月の間に110,000m²以上のカーペットを有価化することができました。

このサービスは、当社の循環型カーペット・リースサービスを通じて提供することもできます。これは、契約期間3~9年間の毎月定額での契約管理を行う「カーペット・アズ・ア・サービス(Carpet-as-a-service )ソリューション」で、循環型経済モデルへの移行に関するEUのグリーンディール政策のアドバイスの一つでもあります。

持続可能性を戦略の中心に据えるという決断に後悔はありません。私たちは、この「インパクト」を最大化するための活動、「インパクト・カンパニー」としてヨーロッパのリーダーでありたいと考えています。

CEOのJean Minne氏(左)、CROのGeoffroy Uyttenhove氏(右)

(取材:久米彩花 文:熊坂仁美)