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「捨てない社会をかなえる。」というビジョンの下、不要品の回収・選別・再流通を一貫して行う株式会社ECOMMIT。前編では、循環商社としての事業内容について伺いました。後編ではさらに、事業を通じて実現したい社会の変化やそのために必要な指標、今後の展望についてお伝えします。

回収から販売までのコスト設計

― 回収にかかる費用はどのようにマネタイズしていますか。

まずは回収の効率を上げることが重要です。

大きく3つのKPIがあるのですが、1つ目が「回収コスト(回転効率)」です。
1台のトラックで運搬できる量は法律で決まっているので、その範囲内でどれだけ効率的に積めるのかや、どんなルートで回ったら無駄がないかをシステムの力でコントロールしています。

2つ目は「生産」です。生産とはつまり選別の作業です。この東京事業所では1人あたりの選別量がだいたい1日1トンといわれています。選別の作業もすべてコストですので、それをどこまで効率化できるかが重要です。

最後3つ目が「販売単価」です。これもデータから分析して、どこに売れば最も経済価値が高くて、環境負荷が低くなるのかを出します。

ここが最も重要といっても過言でないのですが、回収したものをさまざまなところに届けてリユース・リサイクルしていくことで、なるべくごみを減らすことが一番の目的です。最終的にごみや廃棄物にしてしまうと、そこにもコストがかかりますから、そうならないように出口をちゃんと見つけていく。

そして販売単価が回収と生産のコストを上回るように、そこをシステムで設計しているのが大きなポイントです。

― 環境負荷というのはどのように測っているのでしょうか?

海外に輸送するとCO2の発生が大きくなってしまいますよね。なので回収したところからなるべく近い範囲で販売する。販売先との距離を縮めることと経済価値とのバランスを取って、販売先を決定しています。

できるだけ小さな循環をさせているのですね。

都市部と地方、両方をとっていくには

― 国内での循環の仕組みづくりにおいて、都市と地方で戦略に違いはありますか?

地域ごとに人口や面積が違うので、都市部で新しい回収の仕組みができたとしても、それを全国のルールにすることはできません。
日本の大量廃棄の現状を変えていくためには、都市部と地方それぞれにあった仕組みで、両サイドを押さえていくことが大切です。

都市部では、すでに顧客との接点を多く持たれている企業と組んでいくことが重要ですし、地方では、インフラになっているのが自治体なので、なるべくそことタッグを組んで回収の仕組みを作っています。

また自治体と手を組むことで、ルール作りをしていきたいという狙いもあります。

もう一つ、都市と地方では回収したものを再販売する際の経済価値が異なる(都市部のほうが高級な服が多く集まる)と思うのですが、どのように対応しているのでしょうか。

たしかにアパレルだけで考えると、1kg当たりの販売単価などの経済価値は、地方の方が低くなります。一方で資源という観点からすると、地方に残っている古いものの方が価値があったりもします。

たとえば、ラジカセ。昔は一家に一台ありましたけど、もう東京では見られないですよね。でも地方に行くとこれが結構まだあったりする。
1980年代頃に普及して、当時の定価が2,980円ほどでした。それが今、ジャンク品としていくらの価値があるかというと、ゼロが一つ増えて29,800円ほどになります。
なぜかというと、二度と新品がつくれないからです。これが国内だけでなく、海外での投資対象になっていたりする理由ですね。

同じことがアパレルでも起き始めるんじゃないかと思っていて。昔のビンテージもの、たとえば和服とかは、いいものはよくて時代が変わっても価値が落ちないじゃないですか。むしろ希少性が上がる。

「リセールバリュー」といって、これがアパレルだけでなく全体でみると、都市よりむしろ地方の方が高いものも結構ある。なのでここもバランスさせながら、都市と地方、両方を攻めていくことには非常に意味があるんです。

「より長く使えること」の価値

― 今あるリユース品は、80年代にいい材料を使って作られた手の込んだもので、服でも家具でも人気が落ちないのはわかります。しかし今後、安い材料を使って量産されたものが増えてくるとリセールが難しいと思うのですが、そこに対してはどうお考えですか?

投資家の方からもよく「ものに価値があるうちはいいが、その価値がなくなっていくと、そのビジネスはシュリンクしていくんではないか?」と指摘をされます。

実は、始めの頃は、僕もそう思っているところがありました。

しかし、冒頭でもお伝えしたように、我々は循環の仕組みを作っていて、大量生産大量消費の仕組み自体をどう変えていけるかということに挑んでいます。

今ある大量生産大量消費のビジネスを見直すためには、その先の経済価値を確実に高めてあげなければいけません。企業もたくさんの社員を抱えていますからね。
ではそこをどうしていくかというと、やはり「回収の仕組み」だと思っているんです。

回収の仕組みがあることによって、メーカーやブランドさんに長く使えるものを作ってもらうというインセンティブが働くと考えています。

具体的にはどういうことでしょうか?

僕らがブランドさんと一緒に製品を回収し、そのうちの何パーセントにリセールバリューがついてきているというのをデータ化し、実際にリセール品が売れた場合にはその利益の一部を作り手に還元する仕組みを考えています。

それができるようになると、ブランドさん側もこれまで販売数だったKPIに「より長く使えること」を加えることができると思うんです。

すごく遠いように見えるけど、もうそこまで来ています。ヨーロッパやアメリカでは「resale as a service」という言葉が生まれるくらい、自分たちが作ったものを自分たちで回収してリセールしようという考えが主流になりつつある。あのアメリカでもですよ!(笑)

それはやはり若い人たちの意識変容、行動変容だと思うんです。
新品と中古の垣根がなくなってきて、顧客からも株主からも評価が上がる。そんな新しい資本主義社会になりつつある。

ただそれには仕組みがない。回収するインフラがない。だから、そこを僕らがやるんです。

循環の仕組みができることで、ものづくりが変わっていく。まさにサーキュラーエコノミーですね。

行動変容をいかに起こしていくか

最後に、今抱えている課題と今後の展望を教えてください。

課題は山積なのでなにからお伝えすればという感じですけれど(笑)

大きな課題としては、行動変容をいかに起こしていくかというところです。
生活の身近なところに、捨てるのと同じくらい手軽に、回収に出せる選択肢を作ることが大切で、そこにはまだまだ工夫が必要だと思っています。

また、回収ができるようになった後も、それをちゃんと使ってくれる先が増えていかないと循環は生まれません。そういう意味では、バリューチェーン全体を巻き込んでいくことも不可欠です。そこを含めた変革は大きなチャレンジになると感じています。

消費者の行動変容となると、動脈側の意識を変えていかないといけませんが、そこは教育が必要なのでしょうか?

我々静脈側から教育といったアプローチをするのは違うかなと思っています。やはりビジネスなので、それがいかに経済価値に繋がるかという視点が必要です。

企業様の単なるCSRの一貫で動かしていく方法だと、会社の業績が変われば影響を受けて突然方針が変わってしまう。実際にそういう経験もしてきましたので。

いかにそれが本業に寄与するのか、あるいは企業価値を高めることに繋がるのか。そこをしっかり我々が見出して、なにがスイートスポットなのかを示せれば、企業はおのずとこちらに向いてくれるはずです。

今後、取り組んでいきたいことは何ですか?

まずは回収拠点を増やすことに力を入れているので、この1〜2年の間にECOMMITあるいはPASSTO(パスト※)というブランドが、皆様の生活の身近なところに広げられているという状態を作っていきたいです。

※PASSTO(パスト)はECOMMITが提供する、不要品の回収・選別・再流通を⼀気通貫で⾏うサービスで、全国の商業施設や郵便局等で導入開始。

それと同時に、新しい舞浜のセンターはおそらく日本初のテクノロジーを掛け合わせた施設になるので、そのセンターをしっかり確立させ、一人でも多くの方に我々の存在を知っていただいて、共感していただける取り組みを続けていきたいです。

今期はちょうど資金調達もできました。もちろんそれはお金が入ったということでもあるんですが、それ以上に意味があると思っているのは「株主が増えた」ということなんですね。

株主は、つまり共感者。すでにバリューチェーンのキーマンたちなので、そんな彼らを巻き込めたというのは大きなポイントです。
同じ船に乗っていただいたので、そこから同じ方向、未来を向いて一緒に進んでいただくのも目標です!

2023.09.06
取材協力:株式会社ECOMMIT
https://www.ecommit.jp/