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東京都が進める水素社会の取り組みを、見て・触れて・体験できるイベント「水素がうごかす未来シティ」が、2026年1月31日と2月1日の2日間、TAKANAWA GATEWAY CITYで開催されました。サイエンスショーや水素遊具、ワークショップなどを通して、水素エネルギーを自分ごととして身近に感じてもらうことを目的とした本イベント。この記事では、会場の様子や体験コンテンツを中心にレポートします。

水素を「知る・遊ぶ・味わう」オープニングイベント

水素の分子量「2.01」にちなみ、毎年2月1日は「東京水素の日」とされています。本イベントは、この「東京水素の日」に合わせて開催されたもので、水素社会の実現に向けた東京都の普及啓発イベントです。コンセプトは「知る・遊ぶ・味わう」。子どもから大人まで、楽しみながら水素エネルギーの仕組みや可能性を学べる内容となっていました。

会場は屋内外のスペースを使って展開され、家族連れを中心に大にぎわい。オープニングイベントでは、タレントのゆうちゃみさんや、サイエンスエンターテイナーのチャーリー西村さんが登場。水素にまつわるクイズや、足漕ぎ発電機による水素生成の体験などが行われました。

イベント冒頭では、ゆうちゃみさんが「水素ってほんまに最先端やと思う。授業では習ったことあるけど、こんなに身近なところで使われてるんやってびっくりした」とコメント。続いてMCから、水素エネルギーが“次世代を担うエネルギー”として期待されていることが紹介されると、ゆうちゃみさんは何度も頷きながら、「なるほど」と納得した表情を見せていました。


また、イベント主催者である東京都産業労働局長の田中慎一氏は、水素の取り組みについて次のようにコメント。

「水素は現在、世界では化石燃料に代わるエネルギーとして活用しようとする取り組みが進められており、東京都もその流れに積極的に参加しています。とくに東京都では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いて製造するグリーン水素の製造に取り組んでいます。その拠点が、大田区京浜島にあるグリーン水素製造所で、こちらは見学も可能です。興味を持っていただいた方には、ぜひ足を運んでいただければと思います。また東京都では、水素で走る車両の導入にも力を入れており、バスやタクシー、トラックなどを合わせて300台以上が、すでに都内を走行しています。こうした水素の利用は、今後さらに広がっていくと期待しています。今回のイベントでは、実際に水素を活用した乗り物に乗車できる体験や、水素に関するさまざまなコンテンツを用意しました。本イベントを通じて、水素について楽しく学んでもらえた嬉しく思います。」

各企業・自治体による水素関連展示

会場には、各企業や自治体による水素に関する取り組みの展示が並びました。トヨタ自動車は、水素燃料電池車(FCEV)の内部構造が見える実物大の特別モデルを展示。

電動化技術にいち早く取り組んできたトヨタ。2001年の11代目クラウンにはマイルドハイブリッドシステム(THS-M)が搭載され、2008年の13代目クラウンでは、走行性能と環境性能の両立を図るトヨタハイブリッドシステムII<THS II>へと進化してきたといいます。さらに、2023年に登場した新型クラウンでは、カーボンニュートラルの実現に向けた多様な電動車の選択肢として、HEV(ハイブリッド車)に加え、ゼロエミッションを実現するFCEV(燃料電池車)も設定されているとのことでした。

タツノのブースでは、水素ディスペンサーの模擬充填体験を実施。実際にノズルを手に取り、充填の流れや安全性について学ぶ来場者の姿が多く見られました。

水素はガソリンと異なり、気体の状態で車両に充填されます。タツノでは、高圧充填時に発生する熱を抑えるため、−33℃以下に冷却する「プレクール装置」が用いられており、冷却・制御技術の進展によって、ガソリン車と同程度の時間で充填できるようになっています。

リンナイは、トヨタ自動車と共同開発した水素調理器具を展示。同社は家庭用給湯器において、世界で初めて水素100%燃焼技術の開発に成功しています。2024年には水素グリラー、2025年には業務用水素コンロが一般財団法人 日本ガス機器検査協会(JIA)の認証を取得し、今後も水素利用の選択肢を広げていく方針だということです。

このほかにも、水素アシスト自転車の試乗体験や、牽引式水素発電装置の展示などが行われ、来場者はさまざまな角度から水素エネルギーの活用例に触れることができました。

交通分野に広がる水素エネルギーの活用

田中慎一東京都産業労働局長が紹介していた、水素を活用した車両の展示および試乗体験も行われました。筆者も実際に乗車し、約10分ほど会場周辺を走行しましたが、途中には水素ステーションの姿も確認できました。

運転手によると、「水素タクシーだと知らずに乗ったお客さんが、水素エネルギーに興味を持つきっかけになることも多い」とのこと。東京都では、2030年度までに600台の水素タクシーを普及させる計画を掲げています。

なお、本イベントとは直接の関係はありませんが、会場の高輪ゲートウェイ駅周辺からは水素バスも運行されており、試験的に東京駅まで無料で利用することができます。

日常的に利用する交通手段が水素エネルギーへと切り替わっていくことは、水素社会を身近に感じる大きな一歩といえそうです。

子どもも体験しながら学べる水素コンテンツ

会場内には、子どもたちにも分かりやすく、楽しみながら水素について学べるコンテンツが充実していました。中でも印象的だったのが、足こぎ発電で水素をつくる体験装置です。


この装置では、発電して実際に発生させた水素の量に応じて、おもちゃのにわとりが卵を産む仕組みになっており、卵1個分は水素500ccに相当します。自分でつくった水素を使って遊具を動かせる点が特徴で、ショベルカーのほか、バスや電車なども用意されていました。

また、水素クイズスタンプラリーに参加すると、特典として水素調理器で調理されたフードの提供も。身近な食を通して、調理分野にも応用されていることを実感できる体験となっていました。

「遠い未来」から「身近な選択肢」へ

水素社会という言葉は、どうしても技術や政策の話として捉えられがちです。しかし本イベントでは、遊具や乗り物、調理体験といった身近な切り口を通して、水素エネルギーが暮らしの中でどのように使われていくのかを具体的にイメージできる構成となっていました。

来場者の多くは、見るだけでなく、実際に動かし、乗り、味わう体験を通して、水素は「遠い未来のエネルギー」ではなく、「これからの生活を支える選択肢の一つ」として感じられたのではないでしょうか。今後も、東京都が推進する水素エネルギーの取り組みに注目していきたいところです。

参考:水素がうごかす未来シティ​