記事を読む

「フードロス」の次は「エネルギーロス」解決へ。日本一のインパクト企業を目指し蓄電池事業に参入【クラダシ】

フードロス削減事業に取り組む株式会社クラダシは、社会課題解決と経済成長の両立を行う「インパクト企業」として様々な事業を行っています。CE.Tでも昨年12月、同社が行う社会貢献型インターシップ「クラダシチャレンジ」の様子をレポートしました。

そしてこの1月、同社はコーポレートアイデンティティを刷新。フードロス削減から電力ロス削減まで事業の幅を広げながら、さまざまな社会課題を価値へと転換し、社会・環境・経済へ確かなインパクトをもたらす「ソーシャルグロースカンパニー(Social Growth Company)」を目指す姿勢をより明確に示しました。

クラダシの新たなミッション&ビジョンとエネルギー事業について、代表取締役社長の河村晃平氏に伺いました。

社会性と経済性、「二兎を追う」挑戦

—コーポレートアイデンティティのリニューアル、おめでとうございます。その背景を教えて下さい。

ありがとうございます。クラダシは創業以来「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」というミッションと「日本で最もフードロスを削減する会社」というビジョンを掲げ、フードロスを削減するECサイトとして事業を展開し、社会課題の解決に取り組んできました。

新コーポレートアイデンティティを反映してリニューアルしたオフィス

こうした中で、他にもさまざまな社会課題を抱えている分野においても、価値転換をすることで「善いビジネス」ができるのではないか、という思いが生まれました。

そういう思いを、「善いビジネスで未来に実りを。」というミッション、そして「日本一のインパクト企業グループへ。」というビジョンに集約させ、今回のコーポレートアイデンティティの刷新となりました。

もちろん、社会性、環境性、経済性という3つの軸をしっかり成り立たせるビジネスをしていこうという創業以来の姿勢は変わっておりません。

—社会性と経済性の両立は、サーキュラーエコノミー業界に限らず多くの企業にとって難しい課題ですね。

おっしゃる通りです。当社は2023年6月に上場し、社会や環境に配慮した企業の国際認証制度「B Corp」を取得した上での日本初のIPO案件となったのですが、当時、Bloombergの記事で「社会貢献と株主利益の二兎を追う難しさに挑む事例」と評されました。前例を見れば利益追求のために認証を手放す企業も少なくないのですが、私たちはその難題に正面から向き合い、二兎を追うという挑戦を続けていきたいと考えています。

フードロスからエネルギーロスという事業の一貫性

現在参入している「系統用蓄電池事業」について教えて下さい。

ご存じの通り、脱炭素社会の実現には再生可能エネルギー由来の電力を増やしていくことが必要不可欠です。しかし需要に応じて供給できる火力発電や原子力発電と違い、天候や季節など外的環境に左右される太陽光発電や風力発電には余剰電力を捨てざるを得ない「エネルギーロス」が生じてしまいます。

創業以来取り組んできたフードロスもそうなのですが、私たちは「作られたものが使い切らずに捨てられること」に大きな問題意識を持っています。それは食にしてもエネルギーにしても、それがあれば実現した「可能性を捨てていること」とイコールだからです。

これまで捨てていた電力を貯蔵、充電して、需要が多い時間帯に放電できる「系統用蓄電池」の事業は、不安定とされてきた再生可能エネルギーの安定供給に寄与し、脱炭素社会の実現を加速化できることに着目しました。

「栃木小山発電所」1,457㎡の事業用地にリチウムイオン電池を採用した蓄電システム

—いつ頃から新事業の構想をされていたのでしょうか?

具体的に構想し始めたのは1年半から2年くらい前ですが、エネルギー業界が抱える課題についてはそれ以前から動向を追っていました。フードロス事業が2019年10月に施行された「食品ロス対策推進法」が推進力になったように、エネルギーに関しても昨年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」で2040年度の再生可能エネルギー比率を4割から5割に引き上げるといった目標が掲げられました。「国の社会課題はクラダシの社会課題」という思いでここに着目し、取り組みを進めていきました。

さらに、蓄電池に使用されているリチウムイオン電池の価格低下と、需給調整市場が去年の4月に全面開場されて市場整備が整ったことも、事業参入の決め手となりました。

―蓄電池事業は具体的にどのように進めていますか?

去年の9月から、JEPX(日本卸電力取引所)での取引を開始し、12月からは需給調整市場への参入もしています。栃木県小山市の「栃木小山蓄電所」を始め、系統用蓄電所を合計10基展開していく予定です。そのうちのいくつかは辻・本郷スマートアセット株式会社様とのファンドビジネスとして進めています。

「栃木小山発電所」では1.99MW/8.14MWhの電力を供給している

―新事業にどのような展望を持っていますか?

太陽光、風力に次ぐ第三の電源にもなると言われる系統用蓄電池は世界市場でも大きなニーズがある事業です。社会インフラである電力業界は老舗企業の存在感が大きいですが、新しい市場である系統用蓄電池の分野にはフロンティアとしての魅力も感じています。

そういう中で大規模なインフラ構築に注力される大手企業や電力会社とは違う、クラダシ独自の系統用蓄電池事業を展開していきたいと考えています。

具体的には、フードロス事業を通じて築いてきた約2,100社のパートナー企業、60万人のユーザー、そして「クラダシチャレンジ」で連携する30を超える自治体の皆さまとともに、再生可能エネルギーの価値を社会に還元する系統用蓄電池事業を目指しています。
単なる電力インフラとしてではなく、地域や生活者が脱炭素や電力の安定供給を身近に感じられる仕組みをつくることが、クラダシならではの役割だと考えています。フードロス削減で培った社会課題解決の視点を、エネルギー分野でも生かしていきたいと思います。

—エネルギー事業でも、経済性・環境性・社会性という3つの軸でビジネスを展開されるのでしょうか。

その通りです。経済性の面では、企業が事業の脱炭素化を進めていく上でますます需要が大きくなる再エネでしっかりと利益を出し、環境性の面では、エネルギーロスを削減することで脱炭素化を進めていけますし、社会性の面でも、設置自治体で新たな雇用を生み出すことも想定しています。これによって地域の活性化も推進していきたいと思っています。

ビジネスの力で社会課題を解決

—創業以来11年目になるフードロス事業についての今後の展開をお聞かせください。

フードロス事業において私たちが描いているのは「1.5次流通革命」とも呼べるものです。物販中心の2次流通とは異なり、食品は安全性の観点から誰かの手に渡った後は怖いと思われるため2次流通がしにくいという課題がありました。しかし食品業界には特に新商品を投入するときにどうしてもロスが生まれてしまう宿命があります。私たちがそれらのロスを新たな流通網として「1.5次流通」として担えるような状態になりたいと考えています。クラダシがフードロスのセーフティーネットになることで食品業界に安心して新たな挑戦ができる環境を提供できればと思っています。

また、EC事業では、多くのユーザーを集めるために、どのようにパートナー企業と協働できるが重要になりますが、昨年(2025年)8月、日本郵便様と資本業務提携を締結いたしました。全国に約24,000の郵便局ネットワークをお持ちの日本郵便様との連携によって日本一のサステナブルなECサイトを目指して展開していければと思っています。

―フードロス、エネルギーロスという社会課題の解決に挑戦されていますが、それに続くような事業もお考えでしょうか?

今回のコーポレートアイデンティティの刷新と同時に「Kuradashi Labo」という新規事業を集める枠組みで社員からの声を集めていきます。弊社の社員の平均年齢34・3歳で、"社会に善いことはしたいけど、ボランティアでは続かない。でもビジネスとしてなら社会に善いことを続けられるのではないか"という思いでクラダシに入社した課題感のある社員が多いんです。そういう一人一人の考えを取り入れながら、事業として形にしていければと思っています。

—最後に河村社長のビジネスの根幹にある想いをお聞かせ下さい。

私自身は商社を経て2019年にクラダシに入社しました。仕事をしていく中で資本主義の限界のようなものを感じるようになり、経済的なものだけを追い求め続けることに疑問を持っていました。公益性と経済性をしっかり両立できる素晴らしいビジネスモデルとしてクラダシのフードロス削減ビジネスに興味を持ったのがきっかけです。

とはいえ、起点はあくまでビジネス性にあると考えています。ビジネスの力があってこそ社会課題が解決できる。社会課題を解決したいという思いだけが先に立ってしまうと経済性がおざなりになってしまうのではないかと思っています。

前述の通り「社会貢献と株主利益の二兎を追う挑戦」はとても難しいものであるという指摘もあります。しかしそれも踏まえた上で、私たちはこれからもそれをやり遂げたいという気持ちで取り組んでいきます。

ーありがとうございました

サステナビリティPJT広報・IR担当の齋藤花伽氏は社員へのインタビュー企画「YOUは何しにクラダシへ?」も担当