サステナビリティホテルの先駆けであるフライブルグ市のホテルヴィクトリア。64室ほどの小さなホテルですが、これまで環境に関する数々の賞を受賞しています。同ホテルの環境配慮について取材しました。
エネルギーと資源の有効活用
創業1870年の老舗「ホテルヴィクトリア」はフライブルク市内の抜群のロケーションにあります。中央駅から徒歩5分ほど、フライブルグ大聖堂がある旧市街の入口にあり、目の前にはブドウ畑を擁する公園があります。
同ホテルは1939年よりシュペート(Späth)家の経営でしたが、1985年、同家のアストリッド&ベルトラム・シュペート夫妻が経営を引き継いだことをきっかけに、環境重視の方針を導入しました。つまり、もう40年も環境配慮を続けていることになります。

ホテル入口の壁にはずらりと認証や受賞の盾が飾られています。2005年にバーデン=ヴュルテンベルク州で初めてEUの環境規制であるEMAS(環境管理監査制度)認証を取得 しています。

再エネの活用
まずはホテルヴィクトリアの象徴とも言える屋上テラス。ここには、200㎡の太陽光パネルがと、2基の小型風力タービンが設置されています。また、少量ですが水力も利用しています。これらの再エネ設備により、年間約20,000kWhの電力を自家発電しているのです。


2009年に建物の一部をパッシブハウス(自然エネルギーを最大限に活用して快適な住環境を実現する住宅)基準で改築し、24cmの断熱材、三重ガラス窓などを設置しエネルギー効率のいい建物になっています。
ペレット暖房システム
地下室では、木質ペレットによる暖房システムがあります。木質ペレットボイラーによる暖房と温水供給を行っているのです。地下24mから汲み上げた地下水を利用した冷房システムも稼働しています。つまり、暖房にはペレットを、冷房には水を利用されているのです。ただし、全てをペレットだけで賄っているわけではなく電気を併用しているとのこと。
「再エネ利用は少しづつの積み重ねが大事です」とサビーネさんは語ります。

客室での取り組み
客室を入るとグリーンウォールが目に入ります。これは、レセプションにあるものと同じもので、室内の水分を自然な形で調整しているのだそうです。水やりなどはせず、空気中から水分を得て育っているそうです。

ほとんどの客室で、リサイクルペーパーのトイレットペーパーを使用しています。シャワーの備品やタオルについても同様の配慮をしています。

また、客室には詰め替え可能なソープディスペンサーを設置したり、清掃には高濃度の洗剤を使用し、再利用可能な容器で供給しています。
サービスで炭酸水を置いていますが、ペットボトルは使用せず、びんのもの。そのため、必ず部屋には栓抜きが置かれています。

地産地消と廃棄物削減へのこだわり
朝食の会場も案内いただきました。食材は地産地消を旨として、ほとんどの食材は地元のものを使っています。


廃棄物を減らす工夫をされているそうですね。あまり多くの廃棄物が出ないように心がけています。朝食では、地元の食材をできるだけ使う
ようにしています。そして、例えば、個包装のものは極力避けています。

廃棄物は、分別しています。通常のゴミ、プラスチック、紙、ガラスといった具合に分別しています。コーヒーかすなども分別しています。
例えばチーズなどはプラスチック容器に入って納品されますが、お客様に提供する際には、多くのホテルであるようなバターの個包装などはしていません。ジャムも同様です。大きな容器からスライスしたり、ガラス瓶に入ったジャムを提供したりしています。


バターが残った場合はどうするのかを聞くと、 朝食時間が終わった後、残ったものはスタッフが利用したり、調理に使ったりするとのこと。
モビリティと地域連携
サービスとして宿泊者に無料の公共交通機関チケット(トラムカード)を提供し、レンタル自転車や電動自転車の貸し出しサービスを提供しています。

「車で来なくても、電車で来て、街の中ではこのチケットで移動できます。これは当ホテルのサービスに含まれています。どこへ行きたいか教えていただければ、チケットをお渡ししますので、ご自身の車を使う必要がありません」とサビーネさんは語ります。またEV車のレンタルも用意しています。

まとめ
最近は日本においてもサステナビリティを意識するホテルが増えていますが、40年前からこれらの取り組みを行っていたというのは驚きです。特に印象的だったのは、館内ではプラスティックを一切見なかったこと。ビュッフェでは調味料、ジャム・バター類の小分けの工夫が見られ、客室内に栓抜きが常備しているのも特徴的でした。
「プラを使わない」ポリシーは、見た目も、内容も、ホテルの質を上げていることに間違いはありません。