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コンポスト(compost)は、家庭などから出る有機性の廃棄物(生ゴミや落ち葉など)を微生物の働きによって分解・発酵させ、堆肥として再利用するエコな仕組みです。今回は、コンポストについて解説します。最後では筆者の実例も紹介しています。

日本のコンポスト利用率は先進国平均の約半分

コンポストは一見、新しい取り組みのように思えますが、行政がごみの収集・処理を行う近代以前の日本では当たり前のように行われていました。

特に江戸時代の日本は「もったいない」の精神と「清潔」にしたいという気持ちで自然と調和した社会を形成していたと考えられています。都市で出た生ごみやし尿、薪を燃やした後に残る灰などの有機物が農村で堆肥として土に還り、再び新鮮な野菜として都市に届けられる経済と環境の好循環を形成していたそうです。

環境省が毎年発表している一般廃棄物の年間処理費は1兆7000億円(令和5年度)。そのうち約38%は生ごみと言われています。しかしながら、日本のコンポスト利用率は19%(環境省や関連団体の調査による)。先進国の平均が34%、従量課金制が導入されている韓国では91%に達していることを考えると決して高い数字とは言えません。

日本が自治体の多くで生ゴミを燃えるゴミとして扱っている焼却大国であることが原因のひとつではありますが、2050年のカーボンゼロ実現に向け、コンポストによる家庭や事業ゴミの削減は重要な柱のひとつになっていくと言われています。

コンポストの3つのメリット

コンポストには大きく3つのメリットがあります。

1. ゴミの削減による環境への貢献

生ゴミを燃えるごみに出さずに済むため、フードロスも含めて家庭や事業者から出るゴミの量を大幅に減らすことができます。焼却処理にかかるエネルギーやCO2の排出も削減できます。

2.土壌の再生に貢献

コンポスターで作られた堆肥は、農作物の生育に必要な栄養分を豊富に含んでいます。化学肥料を使わない安全安心な有機肥料としてプランターや畑に混ぜることで野菜が元気に育つ環境を整えることができます。市販の肥料を利用していた方はコスト削減になります。

3.家庭菜園を始めるきっかけに

当然ながら作った堆肥を使う場所が必要になるのでコンポストの導入を機に家庭菜園を始める人も少なくありません。生ゴミで作った堆肥で野菜を育て、その野菜で作った料理を食べる。そこから出た生ゴミでまた堆肥を作る。「おいしい」が無駄なく循環するシステムを作ることができます。

たくさんある!コンポストの種類

一言でコンポストと言っても、たくさん種類があるのをご存じでしょうか。主なものを紹介します。

●設置型コンポスト
庭などの土の上に埋め込んで設置するタイプです。上部の蓋を開けて中に生ゴミや落ち葉などを入れて堆肥を作ります。

●密閉型コンポスト
密閉した容器に入れたぼかし(米ぬかや発酵促進剤)で生ゴミを堆肥にしていきます。容器を密閉している為、匂いや虫の発生を抑え易く、室内に置いておくこともできます。

●ダンボールコンポスト
ガムテープなどで補強した蓋付きダンボールに入れた土や土壌改良材などに生ゴミを入れてかき混ぜて堆肥を作る方法です。身近にあるもので手軽に始めることができる方法として自治体などでも推奨されています。

●バッグ型コンポスト
ファスナーつきのバッグに基材と生ゴミを入れて混ぜるだけで堆肥ができるコンポストです。持ち運びができるのでベランダなどの小スペースでも取り組むことができます。困りごとの相談などのサポートシステムが整っているところも多く初心者でも気軽に始めることができます。

●電動生ゴミ処理機
温風で生ゴミを乾燥。数時間でパリパリにしてくれる家電製品です。ゴミの量に応じて費用が嵩む従量課金制が導入された韓国を中心に使用が拡大しています。

※それぞれ自治体によっては購入にあたって補助金が出るものもあります。詳細はお住まいの自治体のホームページ等を御覧下さい。

ちなみに、コンポスター(コンポストを作る容器)の種類や入れる生ゴミによってバラつきがありますが、堆肥になるまでの期間は3週間から3ヶ月ぐらいです。

コンポストのデメリット

メリットがある反面、デメリットや、敬遠される理由もあります。

1. においと虫の発生

管理が適切でないと、生ゴミが腐敗し悪臭を放ったり、コバエなどの虫が寄ってきたりすることがあります。特に夏場は注意が必要です。

2. 手間やランニングコストがかかる

コンポストは放っておくだけではなく、適度な水分調整や混ぜ込みなどの管理が必要なものも少なくありません。また、発酵基材を定期的に購入しなればならないものはランニングコストが、電動式のものは数万円の購入費と電気代が掛かります。

3. 処理が難しいものもある

玉葱の皮や生卵の殻、魚を除く骨など、水分を吸収し難いものは分解されずに残るので注意が必要です。

我が家でもコンポストをやってみた

実例として、筆者宅で行っているコンポストを紹介します。始めたきっかけは、プランターの痩せた土を再生する為でした。

 まず、プランターの土に掘った穴に生ゴミ(細かくした野菜くず、茶殻、魚の骨など)を入れます。

その上に消臭効果のあるコーヒーかすを入れます。

最後に土を被せます。

これをプランターの右端、真ん中、左端で1週間おきに繰り返します。数ヶ月後には次の野菜を植える準備が整っている予定です。

プランターを二台用意することで、ひとつは土壌再生に、もうひとつは再生した土壌での野菜栽培という循環を作ることもできます。

古くなった土をゴミとして回収してくれる自治体は少ないため、コンポストにすることで手間と費用の掛かる土の処分から解放されます。また子どもに「生ゴミが土に還る過程」を体験から学ぶ生きた環境教材になればという想いもあります。

気温と微生物の働きという自然の力に頼った仕組みなので、環境の変化に応じてにおいや虫の発生するリスクもありますが、コンポストによって「おいしい」が循環することで得られる幸福感はそれに勝ると感じています。

まとめ

コンポストは、生ゴミを資源に変えるシンプルで持続可能な方法です。ごみの削減や土壌再生といったメリットがある一方、手間やにおいなどの課題もあります。しかし、それらを理解した上でうまく取り入れれば、家庭でも気軽にエコな生活を始めることができます。

環境への配慮が求められる時代、小さな一歩として、家庭でのコンポスト生活を検討してみてはいかがでしょうか?