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「第4回サーキュラー・エコノミーEXPO」が2025年2月19日(水)~21日(金)東京ビッグサイトにて開催されました。(主催:RX Japan株式会社)

その中から、今回は、英国を拠点にサーキュラーエコノミーの推進を目的として立ち上げられたエレンマッカーサー財団による基調・特別講演「エレンマッカーサー財団が語る循環経済の現在地と展望とは」の内容をお届けいたします。近年、資源の有効活用や環境負荷低減を目指す「サーキュラーエコノミー」への注目が高まっています。この潮流の中で、取り組みが進む英国や欧州ではどのような取り組みを進めているのでしょうか。

基調講演の様子 

パネリスト
・エレンマッカーサー財団 Executive Network Lead Joe Murphy氏
・エレンマッカーサー財団 Senior Manager Ariel Bramble氏(進行)
・(公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域 プログラムマネージャー 林 美穂氏

グローバルな視点から見る循環経済の現状と課題

(エレンマッカーサー財団 Joe Murphy氏の講演より)

循環経済の最終目標は、高パフォーマンスで成長する経済、質の高い雇用、競争力のある企業を実現することです。そして、その結果として資源の抽出や環境への悪影響を経済成長から切り離すことができるのです。


しかし、現状では資源の抽出は年間2-3%ずつ増加し続けており、循環経済の理念が広まっているにもかかわらず、具体的な成果はまだ十分ではありません。75カ国が循環経済のロードマップを戦略に組み込み、55%の企業が循環経済の目標を掲げていますが、実際の解決策はまだ規模に達していません。

循環経済の現状と課題について、グローバルな視点から解説するエレンマッカーサー財団 Joe Murphy氏

では、どうすれば循環経済を実現できるのか。

エネルギー転換では、社会的な合意、政策支援、イノベーション、大規模な投資、企業間の協力、消費者の行動変容など、様々な条件が整っています。循環経済でも同様の条件整備が必要です。

特に、企業は循環経済を単なるコストや評判のためではなく、成長の機会として捉えることが重要です。フィリップスやIKEAなど、循環経済を長期的な事業価値や成長の観点から統合している企業を参考にすべきです。

日本における循環経済の取り組みと事例

((公財)地球環境戦略研究機関 林美穂氏の講演より)

日本では、J-FORCE(ジャパン・プラットフォーム・フォー・サーキュラー・エコノミー)という取り組みが2021年に環境省、経産省、経団連の3団体によって立ち上げられました。現在210の企業・団体が参加しており、循環経済に関する情報提供や、企業の取り組みの国内外への発信を行っています。

具体的な日本企業の取り組みも出てきており、いずれも企業間連携や、デジタル技術の活用が重要なポイントです。また、消費者の行動変容を促すインセンティブの設計も注目されています。

1. 花王、ライオンなどの企業連携による詰め替えパックの回収・再生利用
2. 三菱電機、ビックカメラなどによる小型家電(炊飯器)のリサイクル実証実験
3. ヤクルト本社とメルカリの連携による不用品回収・リユース促進

一方で、日本特有の課題として、日本では循環経済に関する具体的な規制がまだ少なく、企業の自主的な取り組みに任されている部分が大きいです。そのため、企業間で様子見の状態が続いており、社会全体の盛り上がりに欠ける面があります。

NGOや非営利団体の役割と今後の展望

エレンマッカーサー財団 Senior Manager Ariel Bramble氏

Murphy氏は、循環経済の実現において、NGOや非営利団体、シンクタンクの役割は非常に重要であると語りました。

「NGOの役割は変化しています。以前は企業の監視役が中心でしたが、今後は仲介者やファシリテーターとしての役割が期待されています。具体的には、企業間の協力や公共セクターとの連携を促進し、市場の失敗に対処するための共同投資を支援するなど、より積極的な役割が求められています。NGOが間に入ることで、企業だけでは実現が難しい取り組みが可能になります」と強調しました。

林氏も同様の見解を示し、「J-FORCEのような取り組みを通じて、企業の声を政府に届け、政策形成につなげていくことが重要です。来年度はより具体的なプロジェクト形成をサポートしていきたい」と今後の展望を語りました。

循環経済の実現に向けて

J-FORCEブースにて、終日日本企業との情報交換が行われた

講演を通じて、循環経済の実現には企業、政府、NGO、消費者など、あらゆるステークホルダーの協力が不可欠であることが明らかになりました。

Murphy氏は、「利益を生む循環型ビジネスモデルは既に存在します。それらを積極的に推進し、同時に市場の失敗に対処するための協力を進めていく必要があります」と締めくくりました。

林氏も「規制の整備や、具体的な指標の策定など、循環経済を推進するための枠組み作りが今後重要になっていきます」と語り、両氏とも、NGOや非営利団体が果たす役割の重要性を強調し、セクターを超えた協力の必要性を訴えました。

循環経済は単なる環境保護の取り組みではなく、新たな経済成長の機会をもたらす可能性を秘めていいます。その実現に向けた具体的なアプローチと、各ステークホルダーの役割が明確になり、日本においても循環経済の取り組みがさらに加速することが期待される講演でした。