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経済産業省が2012年7月に開始した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」により、徐々に国内での設置が増えている太陽光パネル。しかし、太陽光パネルの耐用年数は20〜30年程度といわれており、今後大量に廃棄されることが見込まれています。

そこで、リサイクルが困難とされる太陽光パネルを、リサイクル率約99%で処理する機械を開発し処理を行う、株式会社浜田 O&M技術開発部 技術開発課 係長の内田 嘉幸氏と原田 光貴氏にお話を伺いました。

処理困難な太陽光パネルのリサイクル事業を始めるまで

—事業内容について教えてください

弊社は金属くずを扱うスクラップ業者として昭和48年に創業しました。当初は鉄くずの中間処理を行っていましたが、パレットや梱包材など産業廃棄物のお問い合わせが増えたため、産業廃棄物の処理事業を開始しました。産業廃棄物の中でも、蛍光灯の中間処理や混合廃棄物、混合金属、乾電池、アスベストなどの積替保管、その他、フロン回収など多種品目にわたり受け入れています。その中で、今後大量廃棄が見込まれる太陽光パネルの処理も始めました。

コンセプトはずっと変わらず「ファーストコールカンパニー」を掲げており、廃棄物に困ったときにまずは弊社に相談いただくということを目指しております。

全国各地に工場をお持ちのお客さまは各工場の地域で処理業者を探さなければいけないという課題がありますが、弊社にご連絡をいただければ、全国のネットワークを活かして各地域のパートナー企業を通じて処理しています。

株式会社浜田 O&M技術開発部 技術開発課 係長 内田 嘉幸氏

—どのようなことをきっかけに太陽光パネルの処理を始めたのでしょうか。

2012年にFIT制度*ができたタイミングで、太陽光パネルの寿命が限られている中、将来必ず大量廃棄の時代が来るという点に着目しました。

2015年から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」に参画し、太陽電池製造・検査装置メーカーの株式会社エヌ・ピー・シーさまと協業し、低コストかつ環境負荷を抑えた最適な再資源化の共同研究に着手しました。

*FIT制度:「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度

—すでにリサイクル工場の稼働を始められているとのことですが、どのようなところから排出されるのでしょうか。

現在、工場では1日に480枚ほどの処理ができる体制を整えています。自然災害時や、製造メーカー・設置メーカーさまからまとまった量が排出されていますが、大量廃棄となるのはまだ先だと考えています。

直近の自然災害ですと、一昨年は台風、昨年は雪害で1万枚以上排出されました。大雨や土砂災害で太陽光パネルが流されてしまったり、雪で故障してしまうことがあり、災害時は数万枚という単位で廃棄となります。

自動でアルミフレームを取り外す工程

リサイクル率約99%のホットナイフ技術で貴重な銀や銅、ガラスを取り出す

—貴社のリサイクル技術について教えてください。

太陽光パネルのリサイクル方法には4つあり、リサイクルハンマー、ロール方式、ブラスト方式、そして弊社が採用しているホットナイフという技術です。

業界の割合として多いリサイクルハンマーのリサイクル率が約60%であるのに対して、ホットナイフは圧倒的にリサイクル率が高く、製品の約99%を再生することができます。

リサイクルの工程としては、まずアルミフレーム、ジャンクションボックスを取り外します。そこから発電シートのついたガラス板をホットナイフ装置にて自動で取り外します。この装置では300度に熱した3枚刃で板ガラスと発電シートを綺麗に剥がしています。

ガラスと発電シートを剥がした後の板ガラス

ホットナイフでそれぞれに分離後、セルシートは破砕して粒度選別を行います。銀の高含有物と低含有物を分けて精錬会社に販売し、精錬会社にて銀や銅を抽出し、その他シート部分は道路などの路盤材に再生されています。板ガラスはガラスメーカーにて、建材などに使われるグラスウールとして再利用されます。

ホットナイフの技術は素材別に綺麗に分離することができるため、不純物が混ざらず、その後の積載効率も良い状態でリサイクルメーカーに販売することができます。

現状は板ガラスに封止材が残っているため、今後は板ガラスを単一素材にし、さらに高付加価値化できるような技術開発を検討しています。

破砕、粒度選別した後の発電シート

使用済み太陽光パネルの有効活用を促進する協会・販売プラットフォームを立ち上げ

—今後の大量廃棄に向けて準備されていることについて教えてください。

大量廃棄を見据えて使用済み太陽光パネルの有効活用性を高めるため、一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会(SP2R協会)を立ち上げています。弊社代表の濵田が代表理事を務め、リサイクラーやガラスメーカー、その他発電事業者やEPCなど50社以上に参加いただいています。

今後必要とされる太陽光パネルリサイクルにおける法制度化やリユース促進について、各社がフラットに意見を挙げ、業界最適なルール作りができるような場所にしていき、各省庁のカウンターパートとして、太陽光発電を静脈側から支える協会になりたいと考えています。

使用済み太陽光パネルの中古販売事業について教えてください。

弊社で受け入れた製品のうち、まだ使用できるものについてはリユース品として販売しています。しかし、中国や台湾などの海外製の新品太陽光パネルが非常に安く、リユース品の売り先がないことが最大の課題となっていました。

そこで、丸紅株式会社さまと弊社で共同出資をし、リクシア株式会社を立ち上げ、使用済み太陽光パネルを売りたい方、買いたい方、処分したい方を繋ぐプラットフォームを提供しています。

中古車販売のように、検索すると太陽光パネルの情報が出てくるような仕組みとなっており、さらに保険会社さまと提携し3年間の瑕疵保証もつけています。

弊社で検査を行い、自社の性能基準を超えているもののみ販売しているため、品質の高い中古太陽光パネルをご提供するとともに、安心して使っていただけます。

画像参照:https://rex-ia.com/

今後の展望について教えてください。

やはり、中古太陽光パネルの量が増えてくる中で、出口の部分を強化していくということです。太陽光パネルの新品価格の下落や不適正輸出がある背景を踏まえて、国内での市場形成が必要になってくると考えています。そのために、国内流通と適正な海外出荷ができるようにしていきたいです。

また、大量廃棄の時代を迎えた際に円滑に適正処理を進められるよう、太陽光パネルの各種類に合わせた処理方法の研究や、高度なリサイクルを目指した処理後物に関する研究も併せて進めていきます。協会やリクシアを通じて、各地域の地場の企業で適正に処理できるシステムも併せて整えていきたいと考えています。