2025年5月29日、ESGサミットを前に香港市内で開催されたFHKI(Federation of Hong Kong Industries)の環境セミナーイベントにおいて、ある新興ワイナリーが「オーガニック」だけに頼らない循環型ビジネスの可能性を提示しました。
中国・新疆ウイグル自治区。この内陸の広大な地において、都市から遠く離れた砂漠地帯が、今、国際市場に向けたワインづくりの新たな拠点として注目を集めています。中でも特に注目されているのは、ワイナリー「Pu-Chang(プーチャン)」による有機ワイン事業です。

特殊な自然環境を活かした栽培哲学
新疆は、年間降水量が極端に少なく、昼夜の寒暖差が非常に大きいという、ワイン栽培にとっては一見過酷とも思える自然条件を持つが、この厳しさこそが、同地域をオーガニック栽培の理想郷にしているとのことです。
病害虫の発生リスクが低く、農薬を使わずに済むため、土壌本来の力を活かした栽培が可能となり。さらに、乾燥地であるがゆえに灌漑には伝統的な地下水路「カレーズ」の技術が活用されており、持続可能な水利用の仕組みが今も現役で機能しています。
こうした地の利を最大限に活かしながら、Pu-Changは「土にやさしく、体にもやさしいワインづくり」を目指しているようです。
5年をかけた国際オーガニック認証の取得
登壇者によれば、ワイナリーとしての信頼性を世界に示すためには「国際的に認められたオーガニック認証の取得が不可欠だった」とのこと。Pu-Changではフランスのエコサート(ECOCERT)を選び、ブドウ畑の管理、発酵プロセス、瓶詰めに至るまでの全工程で厳格な監査を5年かけてクリアしました。
この認証取得は、単なる品質証明にとどまらず、香港、日本、ヨーロッパ市場での流通に向けた足がかりとなっており、今では中国国内だけでなくアジアの成熟市場への輸出も本格化しており、特に香港ではワイン専門店やホテルのリストに名を連ねるまでに成長しているようです。

地元品種と国際品種の共存による多様性の追求
Pu-Changの魅力は、「単にオーガニックなだけでなく、地域性を反映した味わいを持っている」点にもあります。栽培されているのは、世界的に知られるカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールだけではなく、新疆に固有のブドウ「ペトロン」、ジョージア由来の「サペラヴィ」といった個性的な品種も用いられ、それぞれが異なるアロマや味の構造を形成しているそうです。
「例えば、ペトロンは乾燥地でも生命力が強く、酸味とミネラル感のバランスに優れている。これをステンレスタンクと木樽で半分ずつ発酵・熟成することで、複雑な香りと滑らかな口当たりが実現できる」と、醸造責任者は語ります。

ストーリーで差別化する中国ワインの戦略
「中国ワイン」と聞いて、多くの人がまだ具体的なイメージを持たないかもしれないが。その中でPu-Changは、価格をあえて中価格帯に設定し、「一度試して終わり」ではなく、継続的に飲まれるブランドづくりを目指しています。
イベントの参加者の間では、「フランスやイタリア産のワインに比べて話題性に欠ける」「土産物にしても相手が認識してくれるかわからない」といった課題感も共有されたが、Pu-Changのような地域と連動したストーリー性のあるブランドは、むしろ“語れるワイン”としての魅力があるようです。
実際、「新疆という土地の名前を聞くだけで、話が盛り上がる」といった声や、「初めての中国ワインとして勧めやすい」との評価もあり、認知拡大とともに“第一印象”を変えるフェーズに入ってきていることが感じられるような演説をしていただきました。

地方から国際へ——中国農業の新たな輸出モデル
新疆のワインづくりが注目されるもう一つの理由は、それが「中国農業のブランド化」の一端を担っている点にあります。従来の中国農業は、大量生産・低価格というイメージが先行していたが、近年では「品質」や「物語性」を重視する動きが加速しているようです。
Pu-Changのような事例は、農業と国際マーケティング、観光、文化産業を結びつけるモデルとして、中国国内でも注目を集めております。
登壇者は「今後はワイナリーツアーやサステナブル観光との連携も視野に入れている」と語り、新疆を起点にした新たな地域経済の展開に期待が寄せられていることが強く伝わってきました。

Pu-Chang(プーチャン)ワイン Official site :https://www.puchangwine.com/