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ワークウェアレンタル事業を核とするフィンランドの老舗 Lindström「リンドストローム社」は、動静脈を巻き込んだサーキュラーエコノミーのパートナーシップを実現し、一般的には売り切り型消費財のワークウェアをサービス化(PaaS)を実現。後編では、地域性やサプライヤー(エコシステム)について伺いました。
※この記事は旧サイト(「環境と人」)からの移行記事です。

サーキュラーエコノミーの地域性

―サプライヤーはどのように選ぶのですか。

私たちは、長期的なパートナーシップを大切にしています。当社はサステナブルな運営を行っています。今日ではC02削減の観点から、遠方のサプライヤーを抱えることはできません。そのため、より身近なところに製造拠点を作る必要があります。

そのため私たちは世界中にサプライヤーを持っています。中国、タイ、インド、北アフリカ、ヨーロッパです。ヨーロッパでは、ある部品はヨーロッパ内から、ある部品は北アフリカから、ある部品はその他の地域から購入しています。そして、サプライヤーは、「品質保証ハンドブック」で定義された品質に関するガイドラインに従うとともに、当社の行動規範にコミットしています。

さらにサステナビリティの観点でいえば、在庫を持たず必要なときに必要な分だけ生産するのが一番効果的です。そのため「オンデマンド生産」も行っています。例えば例えば、 新入社員が入社した際にユニフォームを補充する必要がある場合、1着から生産することができます。これによって、購入して在庫を抱えるのではなく、必要なときに必要な分だけを補充する無駄のない製造が実現しています。

閉ループ」に重要なリサイクラーの存在

―先ほど工場で、使い古されたワークウェアをRester(レスター)に送るためのボックスがありました。レスター社はフィンランドでは著名な繊維のリサイクル会社ですね。

はい、そうです。廃棄物ゼロのループを形成するバリューチェーンにおいて、レスターはヨーロッパにおけるリサイクルパートナーのひとつです。(下図のNo.5)。

リンドストローム社のワークウェアサービスの全体図(出典:リンドストローム社サステナビリティレポート)

私たちはレスター社に投資しているので、私たちもステークホルダーです。私たちは、もう使用できない、つまりライフサイクルが終了した衣料品を同社に送り、 生地をリサイクルしてもらいます。その後、繊維メーカーがその生地を使用し、再びその生地を購入します。これが、循環型経済のループです。そのため、レスターと緊密に連携し、できるだけ多くの繊維を引き取り、私たちがリサイクルを継続できるようにしています。

工場にはレスター社に送るための箱が用意されている。

―フィンランド以外ではどういう状況ですか?

CO2排出削減の観点から、レスター社のようなリサイクルパートナーを、あらゆる場所でグローバルに展開する必要があります。例えば、中国では、今、同様のパートナーが3、4社ありますし、インドでも同じです。私たちの課題はレスターのようなパートナーに目を向けることだと思います。

―サーキュラーのループを作るにはどうしたらいいのでしょうか?

ループを作るには、二次原料(=再生原料)をどのように使うかがポイントになります。もちろん、リサイクルされた繊維がバージン繊維と同じ寿命を持つわけではないことを理解することも重要です。サステナビリティの目標とループを念頭に、レスターのようなリサイクル業者と緊密に連携し、製品の一定割合をリサイクル繊維で作る方向で取り組んでいます 。

WCEF会場ブースで展示されていたレスター社製再生原料を40%使用した生地。

「近くにいること」がイノベーション

―リンドストロームのビジネスにとってどのようなイノベーションがあるかお聞かせください。

私たちの最大のイノベーションのひとつは、「お客さまの近くにいること」だと思います。このビジネスは、毎週お客様のもとへ足を運ばなければなりません。フィンランドは小さな国ですが、それでも北から南まで3500キロメートルあります。ですから、フィンランドの真ん中に大きな施設を持っていて、毎日、さまざまなお客様のところへ行ったり来たりしているとしたら、それは持続可能ではありません。ですから、私たちは通常、ご覧のような小さなモジュラーユニットを作っています。

それぞれのランドリーユニットで最適な回収・配送ルートが構築されている。

―ユニットの範囲はどれくらいの距離ですか?

ユニットは周囲50~100kmのお客様を担当します。つまり、お客様との距離が非常に近いのです。また、中国には7台、インドには現在11台のユニットを保有しています。最終的にネットゼロエミッションを達成するという非常に強い目標を掲げ、日々の物流に対応するために挑戦を続けています。

私たちは小さく、近い存在でありたいと思うんです。毎日何千キロも運転するのは持続可能じゃありません。だからユニットの周辺を開発し、新しい顧客を開拓するには営業活動を展開する必要がありますし、多くの営業マンを雇う必要がありますから、ビジネスにとっても重要です。私たちはすべてのビジネスユニットを独立させています。

―輸送のエネルギーも変わってきていますが、どう対応していますか?

目標を達成するためには、短距離とはいえ、新しい方法を検討し始める必要があります。従来のディーゼルトラックから水素やeTrucks(電動トラック)にどう移行するか、どうすればCO2出量を増やさずに顧客ベースを増やせるか、EVが容易に入手でき、インフラが整ったときにこれらの車両をeVans(電動VAN) にどう移行するか、などなど。私たちは今、物流プロセスを一新しようとしているところです。

街なかでよく見かけるリンドストロームの集配トラックの前で。

サステナビリティは誰もが担うこと

―サステナビリティの目標を達成するための方法について、さまざまな企業で理解を深めるにはどうしたらいいのでしょうか。

サステナビリティは、まだ多くの場合、経営者の頭の中にあるものだけです。でもこれに関しては誰もが役割を担っているということをよく考えていただく必要があります。

購買担当者がテキスタイルを買うとき、サステナビリティを本当に理解しているのか、どんな役割があるのか、どうすればそのテーマを重要視してもらえるのか。ユーザーも、ただ捨てるのではなく、修理に出すことで、この問題に積極的に取り組んでいることになります。サプライヤーは、その繊維がどこから来ているのか、その会社はどれだけの投資をしているのかを評価し、最低価格ではなく、その決断を下しているのであれば、それはサステナビリティを支持していることになります。

―フィンランドはサステナビリティの意識が高い国ですが、他の国はどうでしょうか?

私たちは、もっと多くの企業が理解し始めることを願っていますが、実際そうなってきています。弊社CEOであるJuha Laurioは、数日前に雑誌のインタビューを受け、私たちが2006年に中国を旅行したとき、誰もサステナビリティについて話さなかったと話していました。 しかしこの2月に私たちは中国で新しいユニットを1つオープンするために現地に行きましたが、ジャーナリストはサステナビリティについてだけ取材し、それ以外のことは何も聞きませんでした。これは大きな変化です。

ー中国のそのような変化は私たちにも驚きです。

私たちはビジネスのグローバル化を開始し約30年になります。 30年間で23カ国、ほぼ毎年、1カ国ずつ行っています。もちろん、COVIDのおかげでどこにも行けなかった年もあります。しかし、アジアであれ、ヨーロッパであれ、私たちは常に新しい市場に目を向けています。いつの日か、日本にも進出したいと思っています。

―日本市場には何を期待されてますか。そして私たちに何かできることはありますか。

もし何か期待できることがあれば、私たちからソリューションを得たいと思っている人がいたら、ぜひ私たちに連絡を取ってもらえればと思います。私たちはアジアにかなり大きなチームを持っており、2,000人近くが働いています。誰かが必ず対応することができます。

私たちは多くの日本企業と仕事をしています。インドや中国には、私たちが一緒に仕事をしている日本企業がたくさんあります。もし機会があれば、ぜひ私たちを招待してください。喜んでお伺いします。

―ありがとうございました。今度は日本でお会いできたらうれしいです。

(取材:新井遼一 文:熊坂仁美)

取材協力:Lindström
https://lindstromgroup.com/