海外の高校生からは、日本のリサイクル産業はどう見えるのか? 3回シリーズでお届けします。
当メディアの運営母体の新井紙材株式会社では、ブリティッシュ・スクール・イン東京(BST)の授業の一環で行われる職業体験研修に協力し、2/3〜2/7の期間でインターン生の受け入れを行いました。
香港出身のJane Yipさんは、サステナビリティ関連の仕事に関心がある高校1年生。廃棄物管理の会社での研修を自ら希望し、香港貿易局経由で当社を見つけたとのこと。当社が用意した5日間の研修プログラムを通して、サーキュラーエコノミーの取り組みや静脈産業の工場を取材していただきました。高校生の視点で、日本の廃棄物管理の現状を、「紙」「繊維」「プラスチック」のマテリアルごとに、3回に渡ってレポートをお届けします。
第一弾は、鶴見製紙株式会社 埼玉工場の工場視察。鶴見製紙は当社の取引先でもあり、視察協力に快く対応していただきました。

Tsurumi Seishi: Japan’s Sustainable Toilet Paper Factory committed to using 100% recycled paper
鶴見製紙:100%リサイクルにコミットする日本のサステナブルなトイレットペーパーメーカー
(原語の英語を翻訳)
トイレットペーパーについて深く考えたことはありますか? おそらく、なくなったときくらいでしょう。しかし、私たちの衛生生活に欠かせないこのアイテムが、環境にどのような影響を与えているかを意識する人はほとんどいません。
日本では、持続可能性がますます重要視される中、100%リサイクルのトイレットペーパーを製造する企業がいくつか存在します。これらのエコフレンドリーな選択肢は、廃棄物を削減し、資源を節約し、循環型経済を促進することで、見過ごされがちな日用品にも大きな影響を与えることを証明しています。
そこで私は、東京の北に位置する埼玉県のトイレットペーパーファクトリー「鶴見製紙」を訪ねました。この工場は、関東地方で100%リサイクルのトイレットペーパーを製造しているわずか2つの工場のうちの1つであり、廃棄された紙を、私たちが日常的に使用する必需品へと生まれ変わらせています。
リサイクルペーパーの旅
リサイクルのプロセスは、毎日180トンの廃紙を処理することから始まります。これらの紙は、東京のオフィスや印刷会社、あるいは新井紙材のような古紙回収業者から直接供給されます。多くの一般的な製紙メーカーとは異なり、鶴見製紙では紙と水だけを使用し、化学薬品は一切使いません。
紙は細かく裁断され、水と混ぜられてパルプ状になります。さらに、金属製のプレートを通すことで、プラスチックの包装材やホチキスの針などの非紙素材を分離します。しかし、すべてを再利用できるわけではなく、この工場では毎月700万円ものコストをかけて、分離された非紙廃棄物を焼却センターで処分しています。


水:工場のライフライン
水は、リサイクルプロセスにおいて極めて重要な役割を果たしています。鶴見製紙では、1日8,000トンもの水を使用しています。
リサイクル紙のインクは巨大な水槽の上部に浮かび、これをすくい取って除去します。残った水は慎重に濾過され、環境への影響を最小限に抑えた上で河川に放出されます。
興味深いことに、この浮遊したインクの残留物さえも無駄にはしません。乾燥させた後、製鉄所へ送り、製造工程で発生する粉塵の抑制に活用されているのです。

パルプから紙へ
パルプが清潔になった後は、ジャンボロールへと加工されます。この工程には1時間以上かかり、毎分850mもの速度で紙が巻き取られていきます。驚くべきことに、このジャンボロール1本で、1人の使用なら400年分にもなる計算です。

ロールが形成された後、エンボス加工が施されます。これにより、紙に模様がつけられ、柔らかさや質感が向上します。複雑なエンボス加工が施されるほど、トイレットペーパーの販売価格も高くなる傾向にあります。最終的にロールはカットされ、包装され、出荷されます。

さらに、鶴見製紙では1枚重ね(一重)と2枚重ね(二重)のトイレットペーパーの両方を製造しています。また、香り付きのバリエーションもあり、香りは紙そのものではなく、芯の部分にしみ込ませることで、包装後も自然に広がるよう工夫されています。
モニターによる機械操作や品質管理
この工場の最も印象的な側面の一つは、工場内の機械を遠隔で管理できる仕組みである点です。オペレーターはモニターから機械の速度と圧力を調整できるため、生産効率と品質管理に重要な役割を果たしています。
トイレットペーパーのビジネス
鶴見製紙は持続可能性への取り組みを続けながらも、業界の変化に対応しなければなりません。特に、機密文書リサイクルの需要が減少していることが大きな課題となっています。これは、デジタル化の進展により、機密文書の廃棄ニーズが減少しているためです。
しかし、大手企業の中には、機密文書を遠方まで運びたくないというセキュリティ上の理由から、静岡まで行かずに地元の鶴見製紙を利用するケースも増えています。
また、この会社は従業員のモチベーションを非常に重視しており、社内の親睦を深めるために、なんと飲み会の費用を会社が負担することもあります。さらに、トラック運転手には無料のトイレットペーパーや飲み物を提供するなど、企業文化と持続可能性を両立させる工夫を凝らしています。
まとめ:トイレットペーパーの見方が変わる体験
今回の鶴見製紙への訪問を経て、私のトイレットペーパーに対する見方は大きく変わりました。
この工場の圧倒的な規模、細部まで考え抜かれたリサイクル工程、持続可能性への真摯な取り組みは、非常に印象的でした。
日常の何気ないアイテムのライフサイクルを意識することは簡単ではありません。しかし、トイレットペーパー1ロールの裏には、効率・環境責任・ビジネス戦略のバランスが取れた管理プロセスが存在し、それがこのユニークな無限の循環システムを生み出しているのです。
次にトイレットペーパーを使うとき、それがどのような旅を経てここにたどり着いたのかを、少しでも思い浮かべてみてはいかがでしょうか。