株式会社LIXIL(本社:東京都品川区)は、環境基準の厳しい欧州で高い断熱性とリサイクル性を兼ね備えたアルミサッシなどを提供しているSchueco International KG(ドイツ)とのビジネスパートナーシップを強化。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、建築物の生涯を通じたCO2排出量「ホールライフカーボン」の削減に貢献する取り組みを加速することを発表しました。
断熱効果が高いのは小さい窓?それとも大きい窓?
縄文時代の竪穴式住居にはすでに存在していた窓。人は窓に様々なものを求めてきました。換気性。採光性。消音性。眺望の良さ。防犯性。強度。デザイン性。そして近年注目されているのが断熱性。暑い夏も寒い冬も室温の変化を少なくすることでエネルギー効率を上げる省エネ効果の高い窓が気候変動対策のひとつとして推奨されています。
しかし、断熱性能のみを追求した結果、こんな弊害も起きているとLIXIL執行役専務(LIXIL Housing Technology担当)の吉田聡氏は言います。

「日本の住宅は今、窓がどんどん小さくなっている。ヨーロッパでは窓がどんどん大きくなっているのに。それが残念だった」(吉田氏)
確かに近年増えているZEHやZEBといった省エネ住宅は熱負荷を低減する為に窓の小さい仕様が常識となっています。それは理論上正しいことではあるのですが、採光性が失われることで日中でも照明をつけていなければならないという本末転倒なことも起きているという声も。
「窓を大きく取り、冬は積極的に太陽の光を取り入れることで暖房のエネルギー量を減らすといった活用が日本ではあまりされていない」(吉田氏)
また、断熱性が高いのはアルミサッシよりも熱伝導率の低い樹脂サッシというのが日本の建築業界における常識にもなっています。しかし、樹脂はアルミに比べてリサイクル率が低く、使用済みの樹脂サッシの多くが埋め立て処分されているという現実もあります。
そんな日本の建築業界で他社との差別化を図りながら「社会課題の解決」と「事業成長」を同時に実現することを目指すのが今回LIXILから発表された業界のフロントランナーとしてのビジョンであり、それを実現するのが環境先進国であるドイツの先進企業Schuecoとの提携強化なのです。
環境先進企業Schuecoの"ゆりかごからゆりかごまで"の設計理念
Schueco Internationalは75年の歴史を持つドイツの建築資材メーカー。約7000人の従業員を抱え、世界80カ国で事業を展開しています。
断熱性や気密性、意匠性などに優れたブランド製品は「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」の設計理念に基づき、資源の循環利用に注力して開発されてきたものばかり。
省エネ基準及び資源の有効活用を推進するドイツの厳しい環境基準下において95の製品が「パッシブハウス認定」や「Cradle to Cradle Certified®」を取得しています。

「わたしたちは資源は無限ではないことを受け止めなくてはならない」(Engelhardt氏)
記者発表に登壇されたSchueco International KG Managing Partner and CEOのAndreas Engelhardt氏はドイツでの自社の取り組みと今回の提携強化をそんな言葉で始めました。
「未来の断熱素材は100%リサイクルが可能な、すなわち無限に使い続けることができるアルミニウムです」(Engelhardt氏)
その思いはアルミ製品において最大100%のリサイクル材を推進、スクラップアルミからの生産によりCO2排出量を大幅に削減したLIXILとの合致点でもありました。
「わたしたちも性能の悪いアルミサッシから始まりました。ドイツ政府によって年々高くなる断熱基準、資源の循環基準に併せて製品を進化させてきたのです」(Engelhardt氏)
樹脂性と同等の断熱性能を持ち、100%リサイクルが可能な高性能アルミ窓「ASE60」を始めとする長い経験によって進化してきた製品がLIXILでも販売されることも提携強化の意義のひとつです。
そんな製品を使った実例として上映されたのがミュンヘンにあるオフィスビルのサーキュラー・イノベーション。43tのアルミと315トンのガラスを回収し95%のリサイクルを達成。45tに及ぶ古い窓を新しい超低炭素アルミ形材にし、欧州標準アルミニウムとの比較では218tのCO2排出量を削減したそうです。
「わたしたちの経験を日本でも活かしたい。同様の取り組みを日本でも進めていきたい」(Engelhardt氏)
それこそが今回の提携強化の最大のポイントである「ホールライフカーボン」の削減への取り組みです。
カーボンニュートラル実現の為に建築業界が取り組むべきは断熱だけではない
それは、株式会社LIXIL 社長兼CEOの瀬戸欣哉氏から日本の建築業界の現状とともに語られました。

「国際エネルギー機関(IEA)によると世界のCO2排出量のうち建設部門は約37%を占めています。2050年のカーボンニュートラルに向けて排出量を削減していくことが我々の大きな課題ですが、日本はまだ断熱でエネルギー効率を上げることだけに囚われている」(瀬戸氏)
建築部門のCO2排出はオペレーションカーボンと呼ばれる建築物の使用に伴う排出だけではありません。それは全体の50%。残りの50%である建設段階や維持管理、解体時に排出されるエンボディドカーボンは見過ごされてきたと瀬戸氏は言います。
「その総量であるホールライフカーボンの削減こそが国内外において脱炭素化への取り組みが加速する中、我々建築業界が取り組んでいくべき課題だと考えている」(瀬戸氏)
日本政府でも現在ホールライフカーボンの算出義務化に向け、2026年通常国会への関連法案提出を検討されているそうです。
「カーボンの排出を商品の誕生から死まで、ヨーロッパで言う"Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)"という取り組みにその先進企業であるSchuecoとのパートナーシップ強化で挑んでいく」(瀬戸氏)
業界のフロントランナーとしてホールライフカーボン削減を率先して推進していくことがLIXILの使命であると瀬戸氏は決意を表明しました。
「日本の窓」の常識を変えていく
実現に向けて発表された製品の数々は、従来断熱効果が高いとされてきた「日本の窓」の常識を大きく覆すものでした。
それが樹脂ではなくアルミを使用したサッシ。断熱性の高い窓といえば樹脂製サッシというのが常識でした。アルミ製は軽くて丈夫ですが、内外の温度差で結露しやすいという欠点があったからです。
そんな常識を覆したのがLIXIL×Schuecoの技術融合が生んだグローバル基準の「高性能アルミ窓」。LIXILが開発した循環型低炭素アルミ「PremiAL」とSchuecoのアルミの高性能化技術により「欧州基準の高い断熱性能」「大開口による日射取得」「眺望性・意匠性」そしてエンボディドカーボンを削減する「リサイクル性の高さ」を実現しています。

2年前、100年目という節目に豊かで快適な暮らしを実現し、環境負荷を低減した地域に最適な窓を「GREEN WINDOW」として展開を始めたLIXIL。「これが未来の窓になっていく」とのビジョンを示しました。
