記事を読む

自転車のサーキュラーエコノミーVol.2【レンタルサービス】【台湾】

New

環境負荷をかけず、維持費もかからず健康にもいい「自転車」は、エコな交通手段として再注目を集めています。前回はオランダの再生自転車のビジネスを取り上げましたが、今回は台湾の自転車レンタルの公共サービスを取り上げます。自治体と、台湾のグローバルな自転車メーカー「GYANT」とのコラボレーション、そして交通カードとの連携によりキャッシュレスが実現しています。

「ラストワンマイル」の交通手段として

台湾を訪れて気づくことは、バイクの数が多いこと。特に台北市ではバイクの利用者が世界有数の規模となっています。その結果、交通渋滞や排気ガスによる大気汚染が深刻な社会問題となっていました。台北市はこれらの問題解決の一環として、自動車やバイクといった個人の交通手段から公共交通機関への転換を促す環境整備が行われました。

台北では、バスや地下鉄(MRT)などの公共交通機関が充実しています。特にバスの本数が多く、旅行者にとってはあまりに路線が多すぎて間違ってしまうなど、ハードルが高いと言われています。

300本もの路線があると言われる台北のバス

そして、それらの公共交通機関を補完する手段として「YouBike(ユーバイク)」が導入されました。

GIANT社の自転車を使用

YouBikeは、2009年に台北市が世界的自転車メーカーのGIANT社に委託して始めたコミュニティサイクルサービスです。24時間365日利用可能で、2016年時点で台北市内に222カ所のレンタル・ステーション、7,264台の自転車が配備されています。

YouBike2.0の簡単な利用方法

全国展開と利用拡大

YouBikeの利用は台北市にとどまらず、台湾全域に広がっています。

YouBikeの台湾全土での展開状況(公式サイトより)

台北市では1,516カ所、新北市では1,394カ所、台中市では1,523カ所、高雄市では1,396カ所のステーションが設置されています。これにより、台湾の主要都市間でもYouBikeを利用した移動が可能となり、全国的な自転車共有ネットワークが形成されています。

公共交通機関との連携

YouBikeの大きな特徴は、公共交通機関との密接な連携です。特に、バス停や地下鉄(MRT)駅の近くにレンタル・ステーションを設置することで、「ラストワンマイル」問題の解決を図っています。

さらに、YouBikeはアイパス(iPASS)などの交通系ICカードと連携しています。これにより、利用者はバスやMRTと同じカードでYouBikeを利用できます。

交通カードのひとつ、iPassのサイトから

このシームレスな連携により、YouBikeは公共交通の一部として活用が進み、利用者の利便性を高めています。例えば、MRTで主要駅まで移動し、そこからYouBikeで最終目的地まで行くといった使い方が一般的になっています。

YouBikeの利用は年々増加しています。2014年には年間2,265万回以上の利用があり、1台あたりの1日の平均利用回数(回転率)は9.69回に達し、ロンドンのCycle Hire(3.25回/台)やニューヨークのCitiBike(5.95回/台)を大きく上回っています。

また、YouBikeは観光客も簡単に利用できるシステムになっており、台北の街並みを自転車で巡ることができるようになっています。

自転車のPaaSモデル「BaaS」

サーキュラーエコノミーの観点からも、YouBikeは重要な意味を持っています。まず、自転車を購入せず、共有するサーキュラーなビジネス「PaaS(モノのサービス化)」モデルになっていることです。Bike As A Serviceの「BaaS」モデルとも呼ばれることもあります。

また、自治体、地元である台湾の自転車メーカー、交通カード会社が連携し、エコシステムを形成しているのも注目に値します。

このモデルは、フィンランドなどヨーロッパでよく見かけるサービスで、日本でも今後広まっていくことが予想されます。

フィンランドの公共自転車サービス。スーパーマーケットが出資をし、各自転車に広告が貼られている。