専門用語集

「バタフライダイアグラム」とは

バタフライダイアグラムとは、サーキュラーエコノミーにおける資源の循環を示す図であり、生物的循環と技術的循環の二つのループを可視化したものです。

バタフライダイアグラム(Butterfly Diagram)は、サーキュラーエコノミーを提唱するエレン・マッカーサー財団が作成した概念図で、資源の流れを「生物的循環」と「技術的循環」の二つのループで表現しています。蝶が羽を広げたような形状をしていることから、この名称が付けられています。バタフライダイアグラムの中心には、サーキュラーエコノミーの原則である「廃棄物ゼロ」「製品・資源の長寿命化」「再生可能な資源の活用」などが据えられており、資源の持続可能な利用の枠組みを示しています。左側の生物的循環は、自然に還ることが可能な有機資源の流れを示し、右側の技術的循環は、工業製品などの長期的な活用や再製造、リサイクルを表しています。この二つのループが相互に関係しながら機能することで、従来の直線型経済(リニアエコノミー)とは異なり、資源を可能な限り無駄にせず、持続可能な社会の実現を目指すことが可能になります。

エレンマッカーサー財団ホームページより引用

バタフライダイアグラムの目的は、資源を最大限に活用し、廃棄物を最小限に抑えることにあります。

従来のリニアエコノミーでは、資源を採掘し、製品を生産し、消費した後に廃棄するという一方向の流れが一般的でした。しかし、バタフライダイアグラムは、この流れを循環型に転換し、資源を可能な限り長く活用することを目的としています。左側の生物的循環では、食品廃棄物や木材などの有機資源が堆肥化やバイオガス化によって土壌やエネルギーに変換され、再び自然界に戻るプロセスが描かれています。一方、右側の技術的循環では、製品の寿命を延ばすための修理・再利用・再製造・リサイクルといった手法が示されており、資源が廃棄されることなく経済の中で何度も循環する仕組みが表現されています。このように、バタフライダイアグラムは、単なるリサイクルを超えて、製品の設計段階から耐久性や修理のしやすさを考慮し、資源の持続的な活用を促す戦略として機能します。さらに、企業や政策立案者にとっても、この概念を取り入れることで、より持続可能なビジネスモデルや制度設計を行うための指針となります。

バタフライダイアグラムの活用は、サーキュラーエコノミーの実現に向けた具体的な戦略を示します。

バタフライダイアグラムは、単なる理論的な概念ではなく、実際のビジネスや政策において具体的な指針として活用されています。たとえば、ファッション業界では、衣類の長寿命化を目的とした修理サービスや、中古品の再販売、リサイクル繊維の活用といった取り組みが進んでおり、これは技術的循環の概念と合致します。また、食品業界では、食品ロス削減のための余剰食品の再配分や、バイオガス発電の導入が進められており、これは生物的循環の具体例となります。さらに、製造業においても、モジュール化設計やリマニュファクチャリング(再製造)によって、製品の耐久性向上やリユースが促進されており、これもバタフライダイアグラムが示す技術的循環の考え方に基づいたものです。このように、バタフライダイアグラムは、あらゆる産業分野での資源活用の最適化を支援し、持続可能な社会の実現に向けた具体的なロードマップとして活用されています。今後、企業や自治体がこの概念をより深く理解し、実践することで、資源循環型社会への移行が加速していくことが期待されています。