ネットゼロとは、大気中への温室効果ガスの排出量を、吸収・除去量と均衡させ、実質ゼロにすることを指します。
ネットゼロ(Net Zero)は、気候変動対策において中心的な目標とされる概念であり、人間活動による温室効果ガスの排出量と、それを吸収・除去する量を均衡させることで、地球全体の温室効果ガス濃度を増加させない状態を指します。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃以内に抑えるためには、2050年までに世界全体でネットゼロを達成する必要があると警告しています。ネットゼロは単なる排出削減ではなく、排出される分を吸収・除去する手段を確立し、実質的に気候への影響をゼロにすることを目指します。そのため、エネルギーや産業、輸送、農業など幅広い分野での変革が求められています。具体的には、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー技術の活用、カーボンキャプチャー(CCS)やカーボンリサイクルの技術開発、森林保全・植林といった自然を活用した炭素吸収の強化などが重要な施策となります。

ネットゼロの目的は、気候変動の影響を抑え、持続可能な社会を構築することにあります。
気候変動の影響は、異常気象の増加、海面上昇、生態系の変化など多岐にわたり、経済や社会にも大きな影響を及ぼしています。ネットゼロの達成は、こうした気候変動の悪影響を抑え、持続可能な社会を実現するための鍵となります。多くの国々が「2050年カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)」を宣言し、日本も2020年に政府がこの目標を掲げました。企業や自治体もネットゼロの達成に向けたロードマップを策定し、CO₂排出削減のためのイノベーションを進めています。例えば、製造業では、従来の化石燃料ベースのエネルギー使用から、水素やアンモニアなどのクリーンエネルギーへの転換が進んでいます。また、輸送部門では、電気自動車(EV)の普及や、航空業界での持続可能な航空燃料(SAF)の活用が加速しています。これらの取り組みは、ネットゼロ達成に向けた大きな一歩となるだけでなく、エネルギーの安定供給や新たな雇用創出といった社会的・経済的なメリットももたらします。
ネットゼロの実現には、サーキュラーエコノミーとの連携が不可欠です。
ネットゼロを達成するためには、単にエネルギーの脱炭素化を進めるだけではなく、資源の効率的な利用と循環型経済の推進が必要です。従来の直線型経済(リニアエコノミー)では、資源を採取し、消費し、廃棄するという一方向の流れが主流でしたが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)では、資源の再利用やリサイクル、廃棄物の削減を通じて、環境負荷を最小限に抑えます。例えば、建築業界では、解体された建材をリサイクルし、新たな建設プロジェクトに活用する「循環型建築」の概念が広がっています。また、ファッション業界では、リサイクル素材を用いた衣料品の開発や、製品の耐久性を向上させるデザインが求められています。さらに、食品ロスの削減や、バイオマスエネルギーの活用なども、ネットゼロとサーキュラーエコノミーの交差点にある重要な取り組みです。
このように、ネットゼロは単なる温室効果ガスの削減を超え、経済全体の構造転換を伴う包括的な目標です。今後、政府や企業、市民社会が一体となって取り組みを加速させることが求められており、サーキュラーエコノミーとの連携がその鍵を握るでしょう。